「調理室池田」の焼きたてがおいしい『いちごのプディング』

「店のテーブル 家のテーブル」5回目に紹介するのは、季節のフルーツで楽しむ「プディング」。春はいちごで作ります。お店でも人気で、「家でも見よう見まねで作ってみた!」なんてうれしいお話をたびたび聞くこのプディングは、自宅での料理教室でもよく作ったメニューです。特に焼きたてがおいしく、フルーツやバターの香り、ふわふわで温かい果実が魅力的。そんなおいしさを知ってほしく、ランチの食後にタイミングを合わせて焼くこともしばしばです。

今回のレシピのヒント
フルーツの水分をコントロールする。
プディングと聞くとカスタードプリンをイメージされるかと思いますが、もともとは英国の家庭料理。定義は広く、型に入れて蒸したり焼いたりして固めたものをさします。食事として食べるものもあれば、デザートとして食べるものもあります。本国で食べられている代表的なプディングと、私のプディングは少々異なるのですが、でき上がりが英国の「アップルプディング」というお菓子に似ていることから「プディング」と名づけました。でもじつは、アイディアのルーツは、私が好きなタルトの中身。

好きなものを手軽に
季節の果物を焼き込んだタルトの、果汁がアーモンドやバターとしっとり混ざり合い、お酒の香りがふわっと香る感じが大好きで、いつかあれだけをたくさん食べたいと、かねてから思っていたのでした。タルト生地はやすませる時間だったり、下焼きだったりがめんどうに感じていたので、自分で作るなら好きなところだけ焼いたらいいのではないか、と。そうしてでき上がったのがこのデザートです。季節に合わせて好みのフルーツを焼き込んで作る私のプディング。
果汁が比較的少ないものは生のまま焼き込むことができますが、あまり汁けが多いと水っぽい仕上がりに。味がぼやけるのを防ぎ、アパレイユとのバランスをとるため、下ごしらえをして水分と甘さをコントロールしておきます。
いちごは果汁が多いので、さっとソテーすることで余分な水分を出しておき、甘さをまとわせておくといいでしょう。品種は焼いても鮮やかな赤が残る、あまおうがおすすめです。
季節のフルーツで楽しむ

冬から春にかけてはいちご。初夏はアメリカンチェリーやルバーブ。夏はあんずやプラム、桃、ブルーベリーなど、プディングにしたいフルーツがたくさん思い浮かぶ楽しい季節。桃はシロップ漬けにして使います。果実に恵まれる季節ですから、一種類のフルーツはもちろん、数種を組み合わせても、楽しくおいしいものです。それから秋は洋梨。洋梨の場合はキャラメリゼし、苦みをプラスしています。
みなさんも、好きなものを好きなように。オリジナルのプディングを作ってみてくださいね。
次のページでは詳しい作り方を紹介します。
–{あまおうのプディングのレシピ}–
『あまおうのプディング』のレシピ

材料(直径20 ㎝の丸型・底が抜けないタイプ)
〈いちごのソテー〉
いちご(あまおう)……1パック(約 250g)
グラニュー糖……30g
〈アパレイユ〉
卵……310g(6~7 個)
グラニュー糖……75g
レモン汁……1/2個分
フランボワーズリキュール(またはキルシュ)……大さじ1
アーモンドプードル……90g
粉砂糖……75g
バター(食塩不使用)……75g
〈A〉
バター(食塩不使用)、薄力粉……各適宜
下準備
・アパレイユのバターは電子レンジ(600W )で1分~1分30秒加熱し、溶かす。
・オーブンは180℃に予熱する。
・型にAのバターを薄く塗り、Aの薄力粉を薄くまぶして冷蔵庫に入れる。

作り方
(1)いちごをソテーする
いちごはさっと洗って水けを拭き、へたを取る。鍋にいちごとグラニュー糖を入れ、中火にかける。いちごにグラニュー糖をまぶすように、へらでやさしくころがす。砂糖が溶けていちごの表面がかるく煮えたら火を止め、そのままさます。

(2)アパレイユを作る
ボールに卵を溶きほぐし、グラニュー糖、レモン汁、 フランボワーズリキュールを加え、泡立て器で混ぜる。アーモンドプードルと粉砂糖を3~4 回に分けてふるいながら加え、そのつどよく混ぜる。溶かしたバターを加え、さらに混ぜる。

(3)型に入れる
冷蔵庫から型を出し、(2)のアパレイユを流し入れ、(1)のいちごを大きくちぎりながらバランスよく加える。

(4)オーブンで焼く
天板に型をのせ、180℃のオーブンの中段に入れる。170℃に下げ、20分ほど焼く。天板の手前と奥の向きを変え、さらに10~15分焼く。生地が全体にふくらみ、竹串を刺しても何もつかなければ完成。

今回はいちごを1パックを使いきる量で作りましたが、1/2量で作るとこんな感じ。 お菓子屋さんでもらった器に入れ、同じ時間で焼きました 。手土産にもちょうどいい大きさです 。

耐熱で底が抜けなければいいので、グラタン皿でもアルミ製やホーローのバットでも作れますよ。
次回は3/1 (金)更新。ぜいたくに作る『自家製ツナ』を紹介します。
撮影よもやま話

調理室では毎日営業を終えるとコーヒーをいれ、スタッフ皆でひと息つく時間があります。その日の出来事や、家族のことなど、たわいもない話をするだけですが、その時間を私たちはとても大切にしています。 それぞれがコーヒーを飲むときに使 っているのは、イギリスのコロネーションマグ。エリザベスⅡやダイアナなど、皆自分のものを持っています。コロネーションマグにはさまざまな形や絵柄があって、とても楽しいコレクションアイテムです。皆でコーヒーを囲む時間が少しでも豊かになればとの思いから、調理室ではスタッフに専用のマイマグを渡して、卒業するときはそのマグを贈ります。
さて、この連載も5回目を迎えました。店の日々の営業の中だけでは伝えきれないことを、レシピを紹介することで表現できたら、と料理にテキスト、スタイリングに撮影とDIYなスタイルで励んでいます。それが続けていられるのも陰で支えてくれる編集者の小林さんがいてのこと。今日、ようやく彼女にマグを渡すことができました(ジョージ5世のシルバージュビリーを祝ったもの)。調理室に大切なスタッフがまた一人増えたような、そんな気持ちがうれしい撮影となりました。そろったマグは7つ、今日からチーム調理室池田は7人です。(文/池田講平)

2018年12月に川崎市にある中央卸売市場北部市場内に開店。アンティークショップ・アートギャラリーを兼ねた、市場には珍しいスタイルのカフェ。早朝から働く人がコーヒーを片手に手軽に食べられるようにと作った焼き菓子や、ツナサンド、フリットといった市場で仕入れる新鮮な魚介類を使ったランチが人気。
公式HP 公式インスタグラム
神奈川県川崎市宮前区水沢1-1-1 川崎市中央卸売市場北部市場 関連棟 45
営業日/月・火・木・金・土曜
営業時間/7:00~13:30
(ラストオーダーは13:00、土曜日のみ14:00)
ランチタイムは 11:45~ 休みは市場に準ずる(原則、水・日曜と祝日)
※一般のかたの市場への入場は8時から。来店の際は必ず上記HPかインスタグラムを確認してください。

料理・文/池田宏実 撮影・スタイリング/池田講平 編集/小林