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小山薫堂さん「おいしいものの先には、人生を豊かにしてくれる不思議な縁がありました」

放送作家・脚本家 小山薫堂さん
こやま くんどう/放送作家として「料理の鉄人」(フジテレビ系)など多くの人気テレビ番組を手がける。脚本を務めた映画「おくりびと」(2008年)ではアカデミー賞外国語映画賞、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞。2012年に京都の料亭「下鴨茶寮」の経営を引き継ぎ主人に就任。17年からは京都芸術大学副学長に。25年大阪・関西万博(会期は10月13日まで)では、シグネチャーパビリオン「EARTH MART」のプロデューサーを務めている。
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おいしいものの先には、人生を豊かにしてくれる
不思議な縁と、忘れられない時間がありました
食にまつわる数々のプロジェクトを手がけてきた小山薫堂さん。2025年大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「EARTH MART」も話題を呼んでいますが、ご自身はふだん、食とどのように向き合っているのでしょう。
「僕は食そのものだけでなく、食をきっかけに人とつながることが好きなんです」と、小山さんが話してくれたのは、かつて青森の弘前にあった、洋食店のこと。
「初めてその店に行ったのは夜遅い時間で、すでに看板の明かりは消えていました。でも店内には人がいるようだったので思い切ってドアを開けると、店主のおじいちゃんが常連さんとテレビを見ながらワインを飲んでいた。『ワインが飲みたいんです』と言うと、『いいよ』と、入れてくれました」

常連さんが帰ったあとも、おじいちゃんといっしょにワインを飲みながら語り合ったという小山さん。ふと小腹がすいてきて……。
「ダメもとで『ナポリタンを作ってくれませんか』とお願いしてみたんです。すると『酔ってるときのほうがうまいって常連に言われるんだよ』と作ってくれて、これが掛け値なしにおいしかった。以来、青森に行くたびにその店に通うようになったのですが、おじいちゃん(店主の佐藤政彦さん)が『がんで余命数カ月だから、店を閉める』と聞かされて」

そこで小山さんは、万博のパビリオンのコンテンツのひとつ「味を記憶し、再現できるキッチン」で料理の記録・再生を行う技術「録食®」を活用しようと思い立ちます。
「調理のプロセスを1秒、1℃、1ɡ まで高精度に記録し再生するという、ソニーが研究開発中の技術です。実用化すれば、材料を用意するだけで、その料理を忠実に再現できるようになるという。ならば、佐藤さんのナポリタンこそ『録食』しておきたいと思いました。佐藤さんは、残念ながら万博開幕の少し前に亡くなってしまいましたが、ナポリタンの味は残すことができました」
思い出の味や、遠く離れた場所でしか味わえない料理も体験できる未来がすぐそこに? テクノロジーが食の形をどう変えていくの か、変わらないことは何なのか。万博が終わったあとも、小山さんの食をめぐる旅は続きます。
小山薫堂さんイチオシ!
「百」

すしに合わせたい米焼酎
熊本県産の食用米「森のくまさん」と、球磨川の伏流水、3種の吟醸酵母を使用した全麹吟醸仕込みの原酒を、絶妙な比率でブレンドした究極の米焼酎。「上品でおだやかな味わいが食中酒に最適。とくにすしとの相性がよく、その繊細なうまみを引き立ててくれます」。HAKUTAKE ONLINE SHOPで購入可能(年間約3000本限定)。
これに注目!
「ふくあじ」

J:COMチャンネル、Jテレで放送中
小山薫堂さんからの直筆メッセージ

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撮影/馬場わかな 取材・文/伊藤由起