こんにちは。「オレンジページ日本酒部」部員の、ニックネーム・酔い子です。毎日が足早に過ぎていき、ふと立ち止まると12月。今年も日本酒を介してつながったご縁がたくさんありました。もちろんこの連載もその一つ。一回でも読んでくださったみなさまには、心から感謝申し上げます。さて今回は、JR阿佐ヶ谷駅からほど近くにある弊社の店舗「コトラボ」での活動などをご紹介しながら、私の晩酌人生の中でも比較的登場回数が多いお酒をご紹介します。コクがあるのに軽快!「酉与右衛門 山廃純米 無濾過 2020」(岩手県・川村酒造店)日々の仕事にはルーティンなものもあれば、チャレンジに次ぐチャレンジで大きな山を越えることができたり、悩んだ末に新しい景色が見えたりすることがありますよね。そんな仕事の大きな区切りや、心地よい疲れが残った晩に、決まって飲みたくなるのが酉与右衛門(よえもん)です。つい最近も、「ああ、今夜は酉与右衛門がいいなぁ」という日がありました。※「酉与」は「酉與」という文字の略字です。どちらも本来は酉へんの1文字ですが、対応する漢字表記がないため、2文字で表記しています。「酉與(よ)」は、もともと「與右衛門(よえもん)」だった名を、創業者本人が酉へんをつけて改名したのではないかと四代目の川村さん。この文字には、酒がうまいという意味があるのだそう。私の業務の場でもある「コトラボ」は、調理設備が整ったクッキングスタジオで、『オレンジページ』で人気の料理家やプロのシェフ、パティシエを講師にお迎えして、各種講座やイベントを毎日のように実施しています。 講座を企画するのは私たち社員ですが、一人でも多くの日本酒愛好家を増やしたい私にとって、ここはチャンスの場! これまでさまざまな日本酒講座を「コトラボ」で実施してきました。今回ご紹介する川村酒造店の川村さんをはじめ、たくさんの蔵元さんをお招きしてお酒の会をしたり、川崎にある酒販店「坂戸屋」の店長・武笠陽一さんに講師をお願いし、シリーズ講座として日本酒の基礎知識やテイスティング、料理とのペアリングなどをレクチャーしていただくなど、参加してくださるみなさんにもっと日本酒に興味をもっていただくことを、わが使命として続けています(もちろん、かなり趣味も入っています!)。 みなさんには、冷酒、燗酒と温度帯を変えて、日本酒ならではの楽しみ方で味わっていただきますが、先日は燗酒のみの実践講座をやってみました。お酒好きの人には何の不思議もないと思いますが、じつは講座にきてくださるかたでも、まだまだ燗酒のおいしさを深掘りするにはハードルが高いのが現状。でも、「飲みにくい」という先入観を払拭したい! と武笠さんに相談し、思いきって実施してみました。 上の画像がそのときのもの(中央・武笠さん)。武笠さんの講義と燗酒ナビゲーションのあと、各テーブルにIHクッキングヒーターをセットし、湯を沸かした鍋にちろりをチャポンとつけ、温度をチェックしながら各自で燗をつけるという試飲タイムがスタート。始めは静かに燗つけを譲り合っていたみなさんが、つけたての燗酒を味わううちにそのおいしさに感嘆し、次々に「自分好み」の燗をつけては注ぎあい、活発にディスカッションしたりして、中盤から大いに盛り上がっていきました。お酒を楽しく飲んでいる人を見るのが好きなワタシにとっては、まさに感動の光景……!料理家の吉田愛さんの燗酒に合わせた絶品おつまみとのペアリングで、なんと4升のお酒がみるみる空き、燗酒愛に包まれながら終了しました。 帰宅後、うれしい余韻に浸りながら晩酌酒に選んだのが、この酉与右衛門だったいうわけです。さもないことかもしれませんが、お酒がみなさんの心を一つにしてくれた幸せな時間。うれしかったなぁ。……って、余韻に浸るの長すぎですから~。 ラインナップが豊富な酉与右衛門の中から選んだのは、岩手県・川村酒造店の「山廃純米酒 無濾過 2020 岩手県産亀の尾60%精米」 岩手県花巻市石鳥谷町に蔵を構える川村酒造店は、大正11年(1922年)に創業。創業者の川村酉与右衛門氏は四代目・川村直孝さんの曾祖父で、酒造りの出稼ぎから若くして杜氏になり、全国清酒品評会で壱等賞金牌を受賞するなど酒造りに邁進。南部杜氏の高い技術力をもって蔵を興しました。 平成12年(2000年)に川村直孝さんが立ち上げた銘柄「酉与右衛門」は、当時「人生修行のために全力で酒造りをしたい」と考えていた創業者の意志を継承するために命名したもの。ラインナップも幅広く、多品種少量生産でていねいに仕込まれています。 「山廃純米酒 無濾過 2020」は、上槽したお酒をそのままびん詰めした生原酒。直汲みならではのチリチリッとした微発泡の軽快さを舌に感じると、次にキリッとした酸と熟成されたうまみが口いっぱいに広がってスッときれていく潔さ。計算されたうまみの相乗効果で、心地よいリズムを奏でます。燗にするとさらに舌の奥までうまみが増幅するような飲みごこち。ほっとひと息つけた日の晩酌に、ホントに癒されるんですよね。このお酒は県産米「亀の尾」を使用していますが、ほかにも、「岩手吟ぎんが」「阿波山田錦」「美山錦」など酒米もいろいろ、生酒や火入れ酒など製造法もいろいろあり、個性豊かな味わいを楽しめます。料理を引き立て、心を穏やかにするお酒は最高ですね。 「酉与右衛門 山廃純米 無濾過 2020」データと取り扱い店について〇原材料名:米(国産)、米麹(国産米)〇原料米:岩手県産 亀の尾100%使用〇精米歩合:60%〇アルコール分:15度以上16度未満〇価格:720㎖ 2090円、1.8ℓ 4180円〇取り扱い店:吟の酒きぶね(岩手)/http://www.ginnosakekibune.com/マルセウ本間商店(東京)/ tel. 03-3377-8281横浜君嶋屋(神奈川)/ https://kimijimaya.co.jp/坂戸屋(神奈川)/ https://sakadoya-style.com/■川村酒造店: 岩手県花巻市石鳥谷町好地12-132「酉与右衛門 山廃純米 無濾過 2020」と合わせたのは、熟成ハードチーズ酉与右衛門は、こくのある煮ものや、豚肉のみそ漬け、魚介のフリットなど、素材のうまみがいきた料理と相性抜群。けれど、晩酌でクイッと飲みたいときは、熟成つながりでハードチーズと合わせてもいけちゃいます。ざくっとかち割ってかたまりを味わうことで、うまみを満喫!熟成ハードチーズのバルサミコソースかけ材料(1人分)と作り方(1)パルミジャーノ・レッジャーノ(24カ月熟成~)などのハードタイプの熟成チーズをアーモンドナイフまたはテーブルナイフで大きめの一口大にかち割る。 (2)バルサミコ酢50㎖をステンレスの小鍋に入れ、黒糖小さじ1/2~1を加えてよく混ぜておく。弱火にかけて混ぜながらゆっくりと煮詰め、少しとろりとしてきたら火からおろす。煮詰めすぎるとさめたときに固まってしまうので、注意する。(3)1にバルサミコ酢を適量かけていただく。固まってしまったらバルサミコ酢で希釈して調整する。チーズの風味とこくをお供に、一日の締めくくりを「酉与右衛門」でゆるゆると。2023年もお疲れ様でした。次回は1月14日更新予定です。今回もおつきあいいただき、ありがとうございました。 profileオレぺ日本酒部*酔い子/比留間深雪オレンジページ コトラボ推進部スーパーバイザー。オレぺ日本酒部員、晩酌愛好家。編集部に28年間在籍し、雑誌、ムックを制作するかたわら、日本酒の魅力にひたすらはまり続け、酒蔵との交流が人生の財産となる。現部署では、体験型スタジオ「コトラボ」で料理レッスンを中心とした講座やイベントの企画・運営、企業の研修業務等に携わり、日本酒との接点を模索する日々。全国津々浦々、地域のおつまみ、特産品が大好物。