超高齢社会を迎え、「人生100年時代」といわれる現代。だからこそ、考えだしたら不安でたまらない、家族や自分の老後の生活。各分野のスペシャリストが、そんなあなたの不安にそっと寄り添います。 今回のお悩み/孤独 早すぎる友人の死。ショックから立ち直れません。 学生時代から仲よくしていた同級生の友人を亡くしました。心筋梗塞でした。突然の訃報を聞いたときは、茫然自失。数カ月前に会ったときは、いつもどおりの笑顔で、たわいもない話に花を咲かせていっしょに食事をしたのに……。彼女がいなくなってから、心にぽっかり穴があいてしまったような状態が続いています。たまに彼女との思い出が頭をよぎり、いまだに彼女の死を信じることができません。気持ちの整理をつけるにはどうしたらいいのでしょうか。 (55歳・女性) Tomyさんの回答 無理に気持ちを整理しようと思わないこと。心のあるがままに過ごしてください。 お悩み回答者 Tomyさん 「気持ちの整理」というのは、簡単につくものではありません。大事な人を失ったわけですから、「さあこれで整理できました」というわけにはいかないのです。あわてて気持ちを整理しようとすると、〈揺り戻し〉が起きて、余計につらくなってしまうこともあります。彼女との思い出にひたりたいときは、思いっきりひたればいいし、泣きたいときは泣いてもいい。とにかく、感情を無理に抑え込まないこと。自分の気持ちに正直に、あるがままに過ごしてください。そうしているうちに、寂しさを抱えながらも、温かい思い出とともに〈しかるべきところ〉に納まっていきます。このお悩みを解決する特効薬はありません。時間が必要なのです。私は「遺族外来」※で、同じような境遇のかたを診ることがあるのですが、その場合、アドバイスはせず、話を聞くことに徹します。死の受け入れ方は人それぞれですから、本人が落ち着くまで、「ここなら安心して話すことができる」という場をつくるしかないんです。もうひとつ大切なのは、この出来事は決して人ごとではないということです。あと何十年かしたら、ご自身も(もちろん私も)彼女と同じ場所に行くでしょう。ただ順番が違っただけ。そのタイミングはだれにもわかりませんから、いつ死が訪れても後悔がないように、やりたいことはやっておく。そのことも、彼女の死から受け取る大事なメッセージのひとつだと思います。 ※ 遺族外来 家族との死別は、人生最大のストレスとされ、遺族の心や体にさまざまな影響を与える。そうした遺族に対して、心理的・医療的なケアを行うのが遺族外来。「家族ケア外来」や「グリーフケア外来」という名称で開設されていたり、特別外来や専門外来の一環として診療を行う病院もある。 Tomyさん 精神科医。1978 年生まれ。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医。38.6 万フォロワー突破のX(Twitter)が人気で、各メディアで活躍中。最新刊『精神科医Tomyの 人に振り回されない魔法の言葉』(エムディエヌコーポレーション)をはじめ著書多数。 近藤サトさんの回答を見る「老後の4K」のお悩みをすべて見る(『オレンジページ』2023年11月2日号より)