超高齢社会を迎え、「人生100年時代」といわれる現代。だからこそ、考えだしたら不安でたまらない、家族や自分の老後の生活。各分野のスペシャリストが、そんなあなたの不安にそっと寄り添います。 今回のお悩み/介護 親の介護を丸投げされて困っています。 一人暮らしの認知症の母を介護していますが、2人姉妹の姉が介護に協力してくれません。母の家から車で10分くらい離れたところに住んでいる私が、デイケアやヘルパーさんにお願いしながらなんとか乗り切っている状況です。姉は電車で1時間くらいのところに住んでいますが、親を介護し疲弊している私に対し、「施設に入ってもらう?」と上から目線で言い放つ始末……。「子どもがいて、仕事もあるから介護は無理」と言いますが、それは私だって同じ。なんだか自分だけが損をしているような気持ちになってきます。どうすればもっと協力してくれるようになるのでしょうか。(52歳・女性) 安藤優子さんの回答 介護を「やらない日」をつくって、「自分がやらなければ」という気持ちをいったん手放してみましょう。 お悩み回答者 安藤優子さん うちも母の介護中、きょうだい間の衝突はかなりありました。きょうだいというのは、感情がむき出しになるんですよね。きょうだいならではの序列関係や甘えも存在する。他人どうしなら当たり前の「話し合いのルール」というものが通用しないのです。 お姉さまの場合、単純に「妹にまかせておけば大丈夫」と思っている節もありますから、いっそのこと介護を「やらない日」をつくってみるのはどうでしょう? お姉さまに、「私はこの日とこの日は行けないので、代わりにお願いします」と宣言するのです。断られても続けていくうちに、「じゃあこの日なら」と態度が軟化してくるかもしれません。 たとえお姉さまが手伝ってくれなくても、ヘルパーさんやデイケアの助けを借りて、積極的に介護を「やらない日」をつくるようにしてください。介護というのは、物理的な忙しさだけでなく、親が老いていく姿を目の当たりにしなければいけないという精神的な負担も強いられます。責任感が強い人ほど介護疲れ※1が起こりやすいですから、「私がやらなければ」という気持ちはいったん手放し、自分だけの時間を持つことは、とても大切です。 そうやって心の健康を保つようにすると、お姉さまの言い分も少し違って聞こえてくるかもしれませんし、「施設に入ってもらう?」と言われたら、「じゃあ施設探しをお願いします」と、言い返す気力も生まれてくると思いますよ。 ※1 キーワード:介護疲れ 介護により、身体的・精神的・経済的な負担が重なり、心身ともに疲労すること。厚生労働省の調査によると、介護を行う人の半数以上が介護疲れを感じているというデータも。「介護離職」「介護うつ」「介護虐待」などの社会問題を引き起こす大きな要因のひとつになっている。 安藤優子さん キャスター/ジャーナリスト。1958 年生まれ。上智大学外国語学部卒業。「ニュースJAPAN」「FNNスーパーニュース」「直撃LIVE グッディ!」(いずれもフジテレビ系列)のメインキャスターを歴任。社会学者として挑んだ近著は、『自民党の女性認識―「イエ中心主義」の政治指向』(明石書店)。 「老後の4K」のお悩みをすべて見る(『オレンジページ』2023年2月2日号より)