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猫沢エミことマダム・サルディンヌの「おいしい処方箋」

「40歳独身・10年以上恋愛なし。ずっと一人は嫌ですが、行動できません」猫沢エミさんのお悩み相談とレシピ

2024.01.12

悩みとは生きている証拠。だれもが大なり小なり抱えているお悩みに、マダム・サルディンヌこと猫沢エミさんが真摯に、時に愉快にお答えします。

今月の迷えるお悩み

40歳独身。仕事でもそこそこ認められて、つまらなくはない日々。ただ10年近く恋愛してません。30代に婚活もしてみたのですが、デートしてもだんだんめんどくさくなってしまい、相手に「本当に結婚したい気持ちあるの?」ときかれる始末。ただ子育てしながら仕事もがんばる友人を見るとバリキャリでもないし、私は何も生み出してないし中途半端だなとも。一人は楽だけれど、朝起きてふっとこのままずっと一人はやだな、結婚でなくてもいっしょに歩けるパートナーは欲しいかもと思います。そのためには一歩踏み出さなきゃと思いつつ、日々に追われ行動できません。こんな私にアドバイスを(涙)
すだち(40歳女性・フルタイム・メーカー勤務・千葉県)


猫沢エミさんこんにちは。あなたのお悩みの友、マダム・サルディンヌです。

日本の出生率低下は、日本の恋愛率低下と直結しているなというのは、ここ十数年、ひしひしと感じていたことです。
どうぞご安心を。これはすだちさんに限ったことではなく、あなたと同じ40代からさらに上の年代にいたるまで、今では当たり前の現象となっているようです。私の周りにいる日本人女性の友人だけを見ても、独身率の高さは驚くほどです。しかも、仕事もできて、趣味も幅広く、みんな知的好奇心にあふれた女性たちなのに。これに関しては、パリの自宅を訪れる恋人のいない日本人の女友達に会うたび、フランス人の彼も「なぜだ⁉︎  あんなにきれいでユーモアもあるのに、日本人女性は恋愛という人生の特権を早々と捨ててしまっているのか?」と、首をかしげるばかりです。

問題を2つに分けると、見えてくるものは?

この問題は、日本における社会全体のグローバルな背景と、女性の社会的な地位向上という2つの側面から考えていく必要がありそうです。
まず社会全体のグローバルな背景ですが……と、まるで社会学者のような口調で始めてみましたが、ぶっちゃけ、私たちの親世代(70〜80代)の方が、社会も個人も今よりずっと色っぽかったのではないでしょうか。

その背景には、大人と子どもの境界線がほとんどなかったさまざまなテレビ番組の影響もあったでしょう。そして、景気のいい戦後の高度成長期に青春を過ごした親世代の人たちには、ある意味〝恋愛をする意欲と気力〟がみなぎっていたように感じます。また、〝恋愛はして当たり前のもの。その背景には常に結婚を意識する〟という社会通念も今よりずっと強かったと思うのです。

それが、情勢も経済も世界的に不安定な時代に入り、男性の終身雇用神話が崩壊して、女性が社会進出しはじめると、日本だけでなく、世界中の人たちが夢から覚めたかのように、より現実的な思考をするようになりました。女性は常に男性の下で守られなければ生きてはいけない存在、という旧時代の立ち位置も変わり、結婚だけではないという新しい時代の選択肢も増えて、女性はより自由な存在に。ならば、その自由を恋愛という有意義なアクティヴィティに生かせばいいじゃないの!と、なるところなんですが、ここで、日本とフランスを比べてみると、決定的な違いが出てくるんですよね。

日本はある意味、恋愛が結婚と直結しすぎて、純粋に恋愛できていないまま大人になってしまう〝恋愛経験未熟国〟。片やフランス、そもそもカップルの在り方には、《事実婚、カップル婚、結婚》という3つの選択肢があり、結婚はあくまでも互いの財産を守ったり、結婚することで得られるアドヴァンテージを有効活用したりするためという、結婚に対するロマンチックなイメージとはまた別の実務的な意味合いが強いのです。そして、結婚しようが子どもをつくろうが、人間として恋愛をする権利が生涯ありますから、恋をすることと結婚は、彼らの中で日本人ほど直結した像を結ばないというわけです。

恋愛=即結婚を切り離してとらえてみて

ソフィー・マルソーが主演して人気を博したフランス映画「ラ・ブーム」(1980年作品)は、13歳になると男女混合の〝ラ・ブーム〟というホームパーティを催して、親たちはそれとなく子どもたちが恋に目覚めるきっかけを作ってあげる、というとてもフランス的な物語です。そんな親たちも、俗に〝小学校の中学年ごろまでには、クラスの半分の名字が変わる(つまり親が離婚する)〟といわれるほど、互いの愛の有無に正直な選択をする人たちなので、子どもも幼いころから日常でカップルとしての親を自然に眺めて育つことになります。恋愛、それは生涯のパートナーを結婚という社会制度とは違った、人間としてのよりよい在り方を模索する個人の哲学で、フランス人は生涯それを追い求めているように見えます。

それに対して日本の恋愛は、あくまでも幸せな結婚というゴールに向かって、人によってはある程度の条件を掲げた人選……というイメージが強く、今こそ、恋愛を結婚とは切り離した、人生をよりよくするための最も楽しい挑戦ととらえてみるのはいかがでしょう。

すだちさんが書かれている《デートしてもだんだんめんどくさくなってしまい、相手に「本当に結婚したい気持ちあるの?」ときかれる始末》を見ても、デートはまだ恋愛域の楽しい挑戦であるにもかかわらず、ここはめんどくさいとなり、それに対するお相手の反応は、いきなり結婚に直結していることがわかります。うまくいこうがいかなかろうが、まずはきちんと恋に落ちるためだけに恋愛をするところから始めてみてもいいと思うんですよね。

恋愛に必要な心のエンジンは「小さなときめき」

そして、具体的な行動ですが、まず「最近、ときめいたことってあったかな?」と自問してみてください。
もしもなかったら、恋愛に必要な心のエンジンが止まってしまっているか、ものすごーくゆっくりになってしまっているサイン。これがどんなにゆっくりでも動いているうちはいいのですが、完全に止まってしまったら、また動かすのに多大なエネルギーが必要になります。

だからまずは、だれでも(好きな俳優など非現実的な相手でも)いいから、その人のチャームポイントを見つけてときめきつづけてください。〝自家発電トキメキ〟をひとまず続けながら、そのあとは、ご自分の理想の恋愛と年をとったときの二人の姿を想像してみること。まずはそこから。そしてご自分の恋愛に対するヴィジョンがはっきりしてきたら、男女の出会いの場ではなく、ご自分が好きな趣味や嗜好の世界の場へ積極的に足を運んでみてください。男性との出会いを意識するよりも、自分自身との新しい出会いを意識して。理想の自分と出会えたとき、理想のパートナーは現れるもの。

ゴッド・ブレス・ユー♡

そんなあなたへのマダムの処方箋
恋愛ホルモンをUP!
「コンテチーズとくるみのグルテンフリー・ケーク・サレ」

材料(パウンドケーキ型1台分 :わが家の型は23×9×高さ7cm)
米粉……160g
ベーキングパウダー……10g
溶き卵……3個分
コンテチーズ(すりおろしたもの・グリュイエールやシュレッドチーズでも)……100g 
くるみ(ロースト・無塩)……30g
A
 オリーブオイル……80ml
 白ワイン……120ml

塩……小さじ1/4
白こしょう……小さじ1/4
ドライオレガノ……小さじ1/2
型用のオリーブオイル……少々

下準備
オーブンは180℃に温めておく。くるみは粗く刻んでおく。型にオリーブオイルを塗っておく。Aは合わせておく。

作り方
(1)ボールに米粉(ふるわなくてもよい)、ベーキングパウダー、塩、白こしょう、ドライオレガノを入れて、溶き卵を加え、泡立て器でよく混ぜる。
(2)Aを4〜5回に分けて生地に加え、泡立て器でさらによく混ぜる。木べらに持ち替え、コンテチーズとくるみを加えてよく混ぜる。
(3)型に生地を流し込んだら、180℃のオーブンの中段で50分焼く。一度箸を生地の中央に刺してみて、生地がついてこなかったら焼き上がり。ついてきたら追加で5〜10分焼く。
効能:今月は、3大恋愛ホルモンといわれている《フェニルエチルアミン、エストロゲン、エンドルフィン》の分泌を促す処方箋を。特に恋愛初期に大量に分泌されるといわれている神経伝達物質・フェニルエチルアミンが多く含まれているチーズの効能は、チーズ大国フランスの恋愛事情を眺めてもうなずけるところ。また、チーズには緊張や不安をやわらげる効果を持つフェニルアラニンも含まれています。そこにアンチエイジング効果の高い食品として注目されているくるみと、強壮作用や疲れを取る効果のオレガノの香りをプラス。フランスの家庭で気軽に作られているケーク・サレ(塩味のケーキ)。

米粉とオリーブオイルのグルテンフリーヴァ―ジョンで安心して食べられるケークは、恋する体も磨きたいあなたの強い味方に。

チーズの効能について(成城心理文化学院・PRTIMESより)
オレガノの効能について(養命酒・ハーブの知識より)
くるみの効能について(有馬芳香堂・驚くべきくるみの効果より)
猫沢エミさん

猫沢エミ(ねこざわ・えみ)

2002年渡仏。2007年より10年間、フランス文化に特化したフリーペーパー《BONZOUR JAPON》の編集長を務める。超実践型フランス語教室《にゃんフラ》主宰。著書に「ねこしき」(TAC出版)、「猫沢組・POSTCARDBOOK〜あなたがいてくれるなら、私は世界一幸せ」(TAC出版)など多数。10月26日、規格外で笑いに満ちたブラックファミリーヒストリー『猫沢家の一族』(集英社)が発売。12月下旬、1960年代のフランスで大ヒットした名料理本の日本語版が待望の出版、『料理は子どもの遊びです』ミシェル・オリヴェ 著/猫沢エミ 訳(河出書房新社)が発売。インスタグラム@necozawaemi

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猫沢エミさんへのメッセージ、質問、悩み相談は随時受付中。小さなものから大きなものまで、ジャンルは問いません。今気になっていることを、お気軽にどうぞ♡



文・料理写真/猫沢エミ イラスト/イナキ ヨシコ プロフィール写真/馬場わかな 関めぐみ

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