悩みとは生きている証拠。だれもが大なり小なり抱えているお悩みに、マダム・サルディンヌこと
猫沢エミさんが真摯に、時に愉快にお答えします。
今月の迷えるお悩み
35歳女性です。母との関係に悩んでいます。先日結婚したいと思っている彼を母に紹介したところ、とある理由で大反対。言い合いのすえ、大号泣されてしまいました。非常に保守的な母なので反対する気持ちも理解できるのですが、私自身の考えや思いを伝えても届きませんでした。昔から進学、就職、一人暮らしなどさまざまなタイミングで母から反対に合い、最後の最後で結局母が安心する道を選択してしまい、いまだに自分の人生を生きられていない感があります。正直、今回もか……という気持ちです。沈黙のまま1ヵ月が経とうとしているのですが、寝ても覚めても母から言われた言葉を反芻してしまい、つらいです。母を嫌う気持ちはないのですが、今後お互いに自立していい関係を築いていくにはどうしたらいいでしょうか。
チロ(35歳女性・フルタイム・メーカー勤務・東京都)
「子離れできない」親は増えている
こんにちは。あなたのお悩みの友、マダム・サルディンヌです。
現代の日本でチロさんと同じお悩みを持つかたが、今どれくらいいらっしゃるのかと想像します。そして、子離れできない親御さんの問題は、年々増えている印象を持ちます。
子離れしにくい裏側には、何がある?
お悩み投稿にもある「非常に保守的なお母さま」が、なにかとチロさんの人生に介入して、お母さまの意見を通したがるのは、ひとえにチロさんが苦労しないように、お母さまが安全牌(パイ)だと思う人生のレールを歩んでほしい、というひとつの親心ですよね。また、お母さまがそう思われるということは、お母さまはそれで幸せになられた、という素敵なあかしといえるかもしれません。
しかし、やはりお母さまと娘のチロさんは、
個々の存在であり、子どもは成人すれば、当然、独り立ちもします。自分に全身全霊で甘えていた子どもが巣立っていく寂しさについては、子どものいない私にはお答えできない部分もありますが、もしも
子どもを〝自分とは違う、一個体の存在〟ととらえて、子どもとの意見の違いを「おお! 成長したな」なんてぐあいに喜ばしく思うような尊重があれば、その寂しさには親としてのやり切った感や、新しい人生のステージへ進むような爽快感がついてくるんじゃないかと思うのです。
その、
潔く子どもの手を離さなくてはいけない場面で、離せない親御さんが増えている背景には、やはり日本の社会システムと、親子関係の手前にあるカップルの在り方が問題なのではないかと私は考えています。
「母」というアイデンティティ
ところでお母さまは、ふだん、〝母〟という立場以外のお顔をお持ちでしょうか?
一人の女性として過ごす時間や、お父さまと長年連れ添った恋人どうしとしての姿。こうした
〝結婚して母になっても、一人の人間、女性として、個人が尊重される〟という基本的女性の権利が、日本ではあまりにもおざなりになっている感が否めません。もしもお母さまが〝母〟というアイデンティティしか持っていなかったとしたら、母でありつづけるために子どもが一生必要になってしまいます。
母・娘から、一人の人間どうしとして
では、お母さまから〝母〟以外のアイデンティティを取り上げたものはなにか?
やはりその根底には、人生のパートナーであるお父さまが、お母さまをだれよりも認め、愛情を傾ける時間が少なかったのではないかと想像するのです。
人間はみな、だれかにその存在を認めてもらわねば、自分の存在を肯定することがむずかしい生き物です。私の母は、チロさんのお母さまとは正反対の破天荒な自由人でしたが、父は戦後の高度成長期世代のマッチョ思考で、母がていねいに扱われて、愛されているのを見たことがなく、女性として悲しいことだなと思って育ちました(母のこうした寂しさは、チロさんのお母さまとはまた違った形で噴き出していました)。
まず、そんな
お母さまをもう一度、しっかりと見つめて、認めてあげることが必要です。そのうえで一度、
腹を割ってお母さまとお話ししてみることをおすすめします。ここでは、母と娘というよりも、互いに成人した一人の人間どうしとして、これまでチロさんが考えてこられたことをきちんと話し、その上でお母さまのお話もきちんと聞く、という真の対話です。
「幸せになる覚悟」を持った選択を
おしまいに、チロさんの今後の選択についてです。もしもこれまでお母さまが決めてこられた人生のレールが、きちんと幸せにつながっていたのだとしたら、お母さまが反対された「とある理由」についてもう一度、考えてみてもいいかもしれません。
「いや、私はこの人と生きていく」とお決めになったなら、お母さまと
〝幸せになる覚悟の上での決裂〟をしても私はいいと思います。チロさんはご自分で選ばれた、これからの新しい人生を幸せにしていくのだという気持ちで、ゆくゆくは、その選択で幸せになったチロさんを見せてあげてください。きっとお母さまも、納得されるのではないかと思います。
チロさんのアクションによって、たとえ数年気まずい空気が流れようとも、殻を割らねばヒヨコは生まれません。お母さまとチロさんの間に生まれた新しいヒヨコがすこやかに育つことを祈りつつ、ゴッド・ブレス・ユー♡。
そんなあなたへのマダムの処方箋
心が前向きになる
「いちごとルッコラのデトックスサラダ」
材料(2人分)ルッコラ……50g
いちご……50g
〈ドレッシング〉
バルサミコ酢……大さじ1
オリーブオイル……大さじ1
塩……小さじ1/2
粗びき黒こしょう……適宜
作り方ルッコラはさっと水洗いして、しっかり水けを切る。いちごはへたを取り、大きさを見て、2つ~4つ割りにする。ボールにルッコラといちごを入れ、ドレッシングの材料をすべて加えて、よく混ぜ合わせる(このくらいシンプルなサラダは、わざわざドレッシングを別に作らずに直接混ぜる、でOK!)。
効能:フランスでは〝ロケット〟と呼ばれ、どんなスーパーにも置いてあるポピュラーな野菜、ルッコラ。アブラナ科のルッコラにはごまのような芳香があり、これが
いちごとバルサミコ酢とよく合うのです。
ピリリと感じる辛みの成分は、アリルイソチオシアネートという強力な抗酸化、殺菌作用成分で、体の解毒機能を強化するグルコシノレートも含まれているため、このサラダを食べるとデドックス効果を感じます。
いちごはビタミンCが豊富というのは有名ですが、じつはカルシウムも含まれており、精神安定にも効果あり。
しっかりデトックスで心も前向きに!ルッコラの効能については
こちら(「わかさの秘密」ルッコラより)
いちごの効能については
こちら(フーズリンクより)
猫沢エミ(ねこざわ・えみ)
2002年渡仏。2007年より10年間、フランス文化に特化したフリーペーパー《BONZOUR JAPON》の編集長を務める。超実践型フランス語教室《にゃんフラ》主宰。著書に「ねこしき」(TAC出版)、他多数。最新刊・愛猫イオとの物語「イオビエ〜イオがくれた幸せへの切符」(TAC出版)が昨年12月に発売されたばかり。インスタグラム
@necozawaemi
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