2021.04.19
入社25年(つまり四半世紀)以上のベテラン料理編集者3人が「うちごはん」について気ままに、赤裸々に語るリレー連載。個人的好み全開のオリジナルレシピのおまけつき。
スペイン料理の定番メニュー、トルティージャ(スパニッシュオムレツ)。僕が最初に出会ったのは、今から三十年以上前、大学に入った年でした。今でこそ普通に食べていますが、当時はスペイン料理自体がそれほどメジャーではなく、お店も少なかったし、あったとしても、大阪から上京してきたばかりの学生がほいほい行けるような金額でもありませんでした。そんな中、毎年十一月に行われる大学祭で、この料理と出会うことになります。
僕の通っていた大学は外国語を専門に学ぶ学校だったのですが、学祭では毎年、各語科がそれぞれの国の料理店を出すのが決まり。当時はなかなかお目にかかることのできなかったモンゴル料理やミャンマー料理など珍しい料理店がずらりと並び、食べることが大好きな僕にとっては、まさにパラダイス! もちろんスペイン料理店もあり、そこで出会ったのがトルティージャでした。無類の卵好きの僕にとって、極厚に焼かれたそのビジュアルはまさに衝撃。食べたら食べたで、卵はしっとり、中にはじゃがいもがびっしり入っていてほくほく。自分が知ってる「オムレツ」とはまったく別もののそれにすっかり魅了され、毎年の学祭の楽しみのひとつになりました。卒業後、急速にスペイン料理のお店が増えると、あちこち食べ歩いたのは言うまでもありません。
自分では、季節ごとに旬の素材を入れたりして、いろいろなバリエーションで楽しんでいます。ということで今回は、さやつきのものが出始めたそら豆と、こちらも旬のしらす、新じゃがも入れたトルティージャです。何を入れてもたいていおいしくまとめてくれるのは、卵の懐の深さですね。
スペインのバスク地方を旅行したときに買ったお皿。絵柄にひと目ぼれして買ったんですが、じつはトルティージャ用のもので、作るときにも活躍してくれるすぐれもの。裏の高台の部分が鍋のふたの持ち手のような形になっていて、フライパンにかぶせてトルティージャをひっくり返す時にとっても便利。描かれている「Vuelca Tortillas」は「トルティージャをひっくり返せ」って意味みたいです。
トルティージャの唯一の難点は、でき上がりの量が多すぎること。たいてい翌日も同じものを食べることになります。せめても……と、野菜やチーズを合わせてサンドイッチにしたりしますが、厚みがすごすぎて、もはや手で持って食べられないレベルに(笑)。でも、バターの代わりにアイオリ風ソース(作り方参照)を塗り、さらにトマトケチャップを少しプラスすると、違う味わいになっておいしいんです。
オレぺのレシピを世に送り出しつづけているベテラン料理編集者4人が、これまで出会ったレシピの中から好きなもの、忘れられないものを自ら作って、撮って、語ります。
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