『オレンジページ』でおなじみの料理家さんにご登場いただき、これまでに発表したなかでも「われながらこれは傑作!」「これはプライベートでもよく作る」というご自慢のレシピについて語っていただくこの企画。
前回のお話:
【藤井恵さんの傑作レシピ】熱心な居酒屋研究のたまもの!? 『すき焼ききつねコロッケ』
今回は
藤井恵さんにお話をうかがう第3回です。韓国料理好きとして知られる藤井さんに、娘さんたちが小さいころによく作ったというキンパについてお話しいただきました。
今回の傑作レシピ
『キンパ』
ハマったきっかけは近所の韓国料理店
長年韓国に通いつづけ、現地のおいしいものを探求してきた藤井さん。
初めて「韓国料理っておいしい!」と思ったきっかけは、家の近所にあったお店だったそう。
「もう20年以上前のことですが、当時住んでいた家の近くに韓国料理店を見つけたんです。入ってみたら、ちょっとした野菜のお総菜や、ケランチム(ふわふわの卵料理)、プルコギ、鍋など、何を食べてもおいしくて。わあ、韓国の家庭料理ってこんなにおいしいんだ! と思いました」
韓国のコンビニで出会ったキンパを再現!
これがきっかけで、当時小学生だった2人の娘さんも連れて韓国に足を運ぶようになり、どんどん韓国料理にハマっていったと話します。
「初めのころは、屋台やコンビニなどで気になるものを見つけては、買って食べていました。このキンパもコンビニで出会った食べ物の一つです」
具材は
かにかま、たくあん、きゅうりと超シンプル。じつはこれ、韓国にも実在しない(と思われる)藤井さんの“想像レシピ”なのだとか。
「本当はほかにもいろいろなものが入っていたと思うんですが、自分の中では、とにかくこの3つの印象が強かった。そこで、帰国してから具材をこれだけにしぼって作ってみたら、やっぱりおいしくて。作り方も教わったわけではないので、自分のやりやすい方法で試しました」
そして完成したのが前出のレシピ。韓国食材店で材料をそろえなくても、身近にあるものだけで作れるのがいいところです。作り方ももちろん簡単!
「娘たちのお弁当に、本当によく作りました。具材が少ないぶん華やかさには欠けますが、味のバランスはこれがベスト。
これでいいや、ではなく、これがいいんです」
とっておきのエピソードがひとつ。
「娘が小学生時代にこのキンパを持って友達の家に遊びに行ったとき、そこに来ていた男の子が
『これ、何だかよくわからないけど、すっげえおいしいな!』と言ってくれたそうで。今でも覚えているくらい『おお!』と思って、うれしかったです」
より深く、韓国料理の世界へ
こうしてすっかり韓国料理に魅せられた藤井さん。現地に足を運んでは、印象に残った料理を作ってみるようになりました。一方、国内では料理教室にも通いはじめ、より深く韓国料理の世界にのめり込むことに。
「教室には2~3年通ったんですが、いざ習ってみたら、今まで自分の作っていたものがいかに
“想像レシピ”だったかがよくわかりました。向こうで作り方をきいてくるわけではなく、自分なりの方法で再現していたので無理もないことですが。正しい作り方を知ってしまうと省きにくくなって、知らないころのほうが大らかに作っていたなあ、なんて思うこともあります」
たとえば、豚キムチ。キムチの炒め方ひとつにも理由がありました。
「サッと炒めるだけでもおいしくは作れるんですが、
よーーーく炒めることでキムチが柔らかくなるうえ、味が豚肉にしっかりなじんでもっとおいしくなる。ちょっと酸味が出たキムチで作ると、もう最高なんです」
今では、上の娘さんが縁あって韓国で暮らすようになり、遊びに行く楽しみも増えました。
「話すそばから通訳してくれるので、自分が韓国語を話せるようになった気分です(笑)。地元の人がTシャツ短パンでふらりと来るような、でもしみじみおいしいお店に連れていってもらったり、楽しいですね。それに韓国のいいところは、
飲みに行ったら1軒では終わらないところ。
2~3軒のはしごは当たり前なんですよ!」
藤井 恵さん
管理栄養士の資格を持ち、味と栄養のバランスを兼ね備えたレシピが多くの人の支持を集める藤井さん。2人の娘さんの子育て経験を生かした、手軽に作れるおかずやお弁当のレシピも数多く提案しています。