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「昔は塩麴が大嫌いでした」井上咲楽が発酵食の楽しさに目覚めたきっかけとは……?【新連載記念インタビュー後編】

2024.09.05

バラエティ番組での元気いっぱいの姿が印象的な井上咲楽さん。日々SNSに上げられる手料理が話題となり、今年は初のレシピ本『井上咲楽のおまもりごはん』(主婦の友社)を出版。〈食品衛生責任者〉の資格も取得するなど、その勢いは止まりません。

そしてこのたびオレンジページnetでは、井上さんが愛してやまない発酵食をテーマにした連載「井上咲楽のすこやか発酵ごはん」が決定! 自慢のレシピの紹介や、あこがれの発酵料理研究家に習う発酵ごはんなど、充実の内容にご期待ください。

記念特別インタビューの後編では、料理嫌いだった井上さんが料理好きになるまでを語ってくれた前編に続き、井上さんの発酵食遍歴を深掘り。

発酵にハマった意外なきっかけから得意料理まで、楽しいエピソード満載でお届けします。

発酵は〈特別〉じゃなくて、もっと身近なもの

さまざまな発酵調味料を自作し、日々料理に活用する井上さん
さまざまな発酵調味料を自作し、日々料理に活用する井上さん

――インタビューの前編では、日々の食事によく発酵食品を取り入れているお話がありました。発酵食を意識するようになったのはいつごろからですか?

一人暮らしで自炊を始めて、ぬか床を育てるようになってからです。
母から譲り受けたぬか床で、同じような食材を漬けているのに、実家と味が全然違うことに気づいたんですよ。混ぜる人が違うと味も違うと知って、すごく不思議だしおもしろいと思いました。

じゃあ他にも育ててみようと作ったのが塩麹。でもじつは、昔は塩麹が大嫌いだったんです。


――それは意外です。SNSでもよく塩麹のことを書いていますよね。

まだ実家暮らしだったとき、祖母が塩麹ブームで、作ってくれる煮ものにいつも麹の白いつぶつぶがついていて……。
きょうだい全員、あのつぶつぶが無理でした(笑)。

でも自家製の塩麹で料理を作ったら、劇的においしくなったんです! それから発酵調味料をいろいろ作るようになりました。

今いちばん欠かせない調味料も塩麹。ずっとつぎたして作っています。これさえあればうまみはばっちりっていう信頼感があって、他に使う調味料の数も減るし、なくなると困っちゃう。昔の私からしたら考えられないですよね(笑)。



――塩麹の名誉挽回! よかったです。でも、最初に発酵食品にハマるきっかけが育てるおもしろさだったとは。

ぷくぷく泡が出てきたりするのもいとおしくて。見えない菌が成長したり、働いたりしているのが伝わってきて、楽しくなります。

今もときどき実家に帰り、手料理をふるまうそう。仲良し家族!
今もときどき実家に帰り、手料理をふるまうそう。仲良し家族!

――発酵食品を使った得意料理も気になります。

人に出して喜ばれるのは、塩麹を使ったオムライスです。妹がオムライス好きなので、よく作っていました。
ケチャップライスを作るとき、ご飯と野菜を炒めたら、真ん中に穴をあけてケチャップと塩麹を入れ、少し煮立たせるのがポイント。ちょっと香ばしくしてからご飯と炒め合わせると、鶏ガラスープなどを使わなくてもすごくおいしくなるんです。

自分で食べたくなるのは、自家製の豆板醤とポン酢を混ぜたたれとお刺し身の組み合わせ。自作の豆板醤がめちゃくちゃおいしくて。
餃子もしょうゆをつけずに、豆板醤だけで食べるのがいいんですよ。うちの父は私の豆板醤をつまみにお酒を飲んでいます


――〈食べる豆板醤〉なんですね。レシピはどうされたんですか?

ネットで検索して出てきたレシピです(笑)。
去年初めて作ってハマったので、今年は大きいびんでつくりました。
実家でも豆板醤をつくっているので、母からつくり方を教わったこともあります。塩麹も最初は母からきいたレシピで作って、作りつづけているうちに、だんだん自分の味に変わってきました。

外食しに行った先で気になる発酵調味料があると、まねして作ったりすることも。実家の味に、東京のおいしい店からもらったインスピレーションが加わったのが、私の自家製発酵調味料という感じですね。


話の端々から、食を楽しんでいることが伝わってきます
話の端々から、食を楽しんでいることが伝わってきます

――ロケなどで日本各地に行くと、その地方の発酵調味料も気になってきそうです。

本当にそうなんです。自分で作りはじめてから興味が広がりました。
一度、TBSテレビの「日立 世界ふしぎ発見!」の発酵の回で、ミステリーハンターとしていろいろ回らせていただいて。
岐阜県の山奥に、お肉を白菜といっしょに発酵させて、焼いて食べる地域があったんですよ。


――肉を⁉ 珍しいですね。

雪深い地域で、昔は冬になると食材を調達しに行けなかったから、発酵文化が発達したそうなんです。しかもそれがおいしい! 発酵が、生きるための知恵プラス、おいしく食べるための知恵でもあるのがおもしろいです。

地方のロケでは、ローカルな発酵調味料があると買ってみたり、麹屋さんで麹を買ってみたりして、気に入ったらリピートすることも。けっこう自分で試す派です。

じつは今日も、仕事で三浦半島の船宿に泊まっていたんですけど、そこのぬか漬けがすごくおいしくて。女将さんがぬか床を1kgくらいくださったんですよ!
自分のぬか床といただいたぬか床、それぞれのぬか漬けを食べ比べるのが楽しみです。



――ご自分で作って食べるだけでなく、2019年には「発酵食品ソムリエ」の資格を取得されるなど、知識として発酵を学ばれているのもすてきです。取得後、何か変化はありましたか?

発酵食品によって菌が違うので、いろいろな種類の発酵食品をとるほうがいいと知り実践しています。おみそ汁に塩麹を入れようとか、キムチや納豆を入れちゃおうとか。
勉強することで、見えない菌の働きを知ることができるのがおもしろいです。

初の著書も大好評。SNSでも話題となった「なすぼけ」「ビルマ汁」のレシピも!
初の著書も大好評。SNSでも話題となった「なすぼけ」「ビルマ汁」のレシピも!

――ついにオレンジページnetでの連載「井上咲楽のすこやか発酵ごはん」が始まりますが、挑戦してみたいことなどあればぜひ教えてください!

今までは自分一人で発酵調味料や発酵料理を作ったり、食べたりしている感じだったんですけど、連載では会いたいかたに会って、いっしょに作ってみたいです。
あとは麹そのものを作る体験もしてみたい!

前編でもお話ししたように、私はもともと料理が好きではなかったんです。だんだん料理が好きになったのは、発酵食品を育てる楽しさもきっかけの一つ
私はマメではないし、むしろガサツなんですけど(笑)、だからこそ楽しく料理したいというのがあって。
料理にはいろんな切り口があるというのもお伝えしたいですね。

こだわりが強い人は、そのこだわりゆえなかなか始められないところもあると思うので。「この材料がないと」とか、「こう作らないと」とか……。


――確かに。特に発酵食については、作るとなるとハードルが高そうな印象です。

よく「麹ってどこに売ってるんですか?」ってきかれるんです。スーパーで普通に〈都こうじ〉が買えるのに……。
でも昔は私も、レシピ本にちょっとレアな材料が載っていると、「そんなの持ってないよー」と作るのをあきらめることがありました。
だからこの『おまもりごはん』の本では、実際に自分がスーパーで買っているものとか、手に入りやすい身近なものを使ったレシピを掲載していて。
そのくらいの感じだよ、特別じゃなくていいんだよってスタンスでやれたら。


――それはいいですね! 発酵って、まず料理が好きだったり、上手だったりする人が進む〈次のステージ〉みたいなイメージですけど、ここを入り口に料理を始めたっていいんですし。

はい。よく〈ていねいな暮らし〉といわれる生活って、理想の生き方、暮らし方がまずあって、仕事はそれを支えるものだと思うんです。でも私の場合、芸能界での仕事も発酵食も、全部同じように〈生活〉の中にある感じなんですよ。
〈ていねいな暮らし〉とは違うけど、〈現代の自炊〉というか、こういうやり方があってもいいよね? というのを発信していけたらうれしいです。

PROFILE

井上咲楽(いのうえ・さくら)

1999年、栃木県生まれ。2015年「第40回ホリプロタレントスカウトキャラバン」を経て芸能界入り。「おはスタ」「新婚さんいらっしゃい!」など、バラエティ番組で見せる明るいキャラクターで人気を博す。NHK大河ドラマ「光る君へ」に出演。2024年5月、『井上咲楽のおまもりごはん』を出版。「発酵食品ソムリエ」資格、「食品衛生責任者」の資格も持つ。

撮影/大森忠明  取材・文/唐澤理恵

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