ハナコさんから天ぷらのコツをきいた角田さん。他にも質問があるようで……。角田光代さん(以下 角):ハナコさんは、油をたっぷり使って揚げてらっしゃいますね。やっぱりそれくらい入れた方がいいですか? 後片づけのことを考えて、少しの油で揚げ焼きにしてしまうこともあるんですが……。ツレヅレハナコさん(以下 ハ):本誌でもお話ししているのですが(12/28発売予定『オレンジページ』2023年1/17号 P.90 参照)、揚げものは最低3cmは油を入れるべき、というのが持論です。その方が絶対においしいですもん。温度が一定に保たれて、熱の入り方が均一になるので。3cmぶんの油の値段を考えても、食材のひとつと考えれば高くはないかなと。角:確かに。もっと高い食材はいくらでもありますもんねぇ。ちなみに、ハナコさんはオイルポットは使わないんですか? うずらの卵の水煮と生ハム、バジルをワンタンの皮に包んで揚げたもの。「バジルの香りと生ハムの塩けで味つけいらず。火の通りを気にしなくてよいものを選ぶと、気軽に作れます。スモークサーモンやたくあんを包むのもおすすめ」とハナコさん。 ハ:私、油はなるべく早めに処分する派なんです。これにも理由があって、私たちって美容の話になると、アンチエイジングで抗酸化作用とか気にするじゃないですか。それなら酸化した油をとるのはやめようって思ったんです。角:説得力ありますね。ついもったいないと思って、次の揚げものに使おうかな、って。でも、本当にそうですね。酸化した油と思えば躊躇します。ハ:どうしてももったいないという場合は、揚げる順番を考えてみるといいです。角:順番というと? 「面倒だから、家で揚げものはしない」という人に向けて、熱いメッセージが込められた著書『ツレヅレハナコの揚げもの天国』(PHP研究所)。 ハ:素揚げは、それほど油が汚れません。だから、まず素揚げに使って、そのあとは天ぷら、フライ、唐揚げの順がオススメ。ころもの種類によって、油の汚れ方は全然ちがいますよ。角:これは小さな注ぎ口がついているから、オイルポットに移し替えたい場合も便利ですね。ハ:私は、揚げかすをよくすくい取ったら、油を鍋に入れっぱなしにしています。そういう意味でも、揚げ鍋にはふたが欲しかったんですよね。といっても週3回くらいは何かしら揚げてるので、酸化する前にすぐ使うようにしています。 側面に小さくついた注ぎ口。液だれすることなく注げます。 角:なるほど! 揚げものが面倒になる工程がひとつ減りますね(笑)。ということは、ハナコさんは、この注ぎ口は使わないんですか?ハ:素揚げに使った油を炒めものに活用するときに便利ですよ。鍋からダイレクトにフライパンに注げます。角:揚げものに限らず使うようにすればいいんですね。私もそうしてみます!(つづく)\ハナコさんちの揚げものホムパレシピ/ 前回の「揚げものの思い出」の話はこちら>>> profileツレヅレハナコさん旅と酒をこよなく愛する文筆家・料理研究家。雑誌や書籍、WEB、料理講座などで活躍中。週に2~3日は家で揚げものを作るほどの揚げものLOVERで、初心者でも失敗しない揚げ方に定評がある。著書に『ツレヅレハナコの揚げもの天国』(PHP研究所)、『まいにち酒ごはん日記』(幻冬舎)など。角田光代さん1990(平成2)年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。2005 年『対岸の彼女』で直木賞、2007 年『八日目の蟬』で中央公論文芸賞、2014 年『私のなかの彼女』で河合隼雄物語賞ほか、多くの賞を受賞。源氏物語の現代語訳という大仕事を経て、5年ぶりに長編『タラント』(中央公論新社)を出版。