夏を楽しむブックガイド。読書で始める【熱中症対策】
夏なんて来なければいい。
10月までの4ヶ月、ニートになりたい。
理由はただひとつ、暑いからだ。
汗をかきたくない。
日差しを浴びたくない。
満員電車に乗りたくない。
生きているだけで体力を削られる季節。暴力的な日差しが滝汗を呼び、
アスファルトは焼け、空気は煮える。
もはや夏は風物詩ではなく試練だ。
そんな私が全力で探すのは、
完全な日陰が作れる傘でもなく、
「冷たい」が長続きする保冷グッズでもなく
とにかく夢中になれる「本」。
「黒牢城」 米澤穂信著 角川書店
織田信長に反旗を翻し、有岡城に籠城した荒木村重。
城内で起こる不可解な事件。混乱を鎮めるため、村重は土牢に幽閉していた敵方の軍師・黒田官兵衛に事件の解決を命じる。

現実逃避? いやいや、本気の暑さ対策です。
「心頭滅却すれば火もまた涼し」という。
私にはそんな修行僧のような精神力はないけれど、そのかわりに本を開く。
背筋が凍るようなホラー小説。
トリックに舌を巻くミステリー。
見事な伏線に唸る時代小説。
そんな一冊があれば、うだるような暑さの中でも、背中をひんやりとした風が通り抜けていく……かもしれない。
「方舟」夕木春央著 講談社
水没していく山奥の地下建築「方舟」。だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。
そんな矢先に殺人が起こる。犠牲にしてもいいのはその犯人の命か。
タイムリミットは一週間、残酷な犯人探しが始まるー。

夏の醍醐味はビール、枝豆、ミステリー。
仕事を終え、まだ明るさの残る街を歩く。
冷えたビールで、あるいは一杯のアイスコーヒーでもいい。喉を潤し、枝豆やクッキーをつまみながら、楽しみにしていた一冊のページをめくる。
夏の最高のご褒美じゃないか。
夏こそ読書。
城の中へ、地下建築へ、はたまた夜市へ。
今日はどこへ行こう。どの物語に会いに行こう。
「夜市」恒川光太郎著 角川書店
解放されるには買い物をしなければならないという夜市。
裕司は昔、弟を夜市で売った。
「人攫い」という異形のものから弟を買い戻すために再び夜市を訪れる。

図書館へ寄り道するのも忘れずに。
整然と並んだ本。
無機質な空間。
静寂。
ここだけは、別の時間が流れている。
涼しい。
そして、何といっても無料だ。
夏の寄り道先として、これ以上の場所があるだろうか。
特に最近の図書館は明るくて、居心地がいい。
開放的で、誰もが思い思いの時間を過ごしている。私は武骨なコンクリートの昔ながらの図書館も大好きだけど。
立ち寄ったら、水分補給だけは忘れずに。

武蔵野市立ひと・まち・情報 創造館 武蔵野プレイス(東京都武蔵野市)
ページをめくるたび、
夏の長さも、暑さも、少しずつ溶けていく。
まだ日が沈まない夜の時間にも、静かな時はつくれる。
一冊の本がある。それで十分だ。
ただし、どんなに面白い小説でも、熱中するのは物語だけにしておきましょう。
暑さ対策と水分補給は忘れずに。
背筋は冷えても、夏は夏。
本を片手に、気持ちだけは涼しく過ごしたいものです。
夏の長い夕暮れ時に、あなたはどんな本を開きますか。






