
【柚木麻子連載】食欲もなく完全に秋バテ。これなら作れるかもと思えた、カツ代のにら卵

第29回 食欲もなく完全に秋バテ。これなら作れるかもと思えた、カツ代のにら卵
ごま油を熱したフライパンに、塩で味付けした卵液を流し入れ、いきなり、生のニラを載せ、ぎゅっと折りたたむ。本当にあっという間なのだが、切り口の強い緑と、卵の中で蒸されたニンニクにも似た命を感じる青い匂いが、眠っていた活力を呼び覚まし、気づくと、咀嚼が止まらない。ご飯も食べ、あっという間に気力が回復した。
そうやってちょっと落ち着いて自分を省みていると、これまでこうしたダウナーな時期は何度となく訪れ、その度に、友達の励ましと自分で料理を作ることで乗り切ってきたんだなあと、ハッとするのである。
今回紹介したカツ代さんレシピ
※「小林カツ代のすぐ!食べたい」(1996年・講談社)より一部引用
『にら卵』のレシピ
材料(つくりやすい分量)
にら……1束
卵……3個……1かけ
ごま油……小さじ1
●にらは半分に切る。
●卵は溶いて塩を混ぜる。
(1)ごま油を熱し、強めの中火にして溶いた卵を入れ、すぐ、半分に切ったにらをダーッとのせる。
(2)卵の表面が少し固まってきたら、手前から三つ折りくらいに大きめに巻いていく。
(3)上からフライ返しでギュッと押して焼き(卵が出ても気にせず)いい焦げ目がついたら裏返して少し焼く。
(4)食べよく切って盛る。好みでしょうゆをチョロッ。

2008年「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞し、10年に同作を含む『終点のあの子』でデビュー。15年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞を受賞。著書に『私にふさわしいホテル』『ランチのアッコちゃん』『伊藤くん A to E』『マジカルグランマ』『BUTTER』『らんたん』『とりあえずお湯わかせ』『あいにくあんたのためじゃない』など多数。

文・写真/柚木麻子 イラスト/澁谷玲子 プロフィール写真/イナガキジュンヤ 取材協力/(株)小林カツ代キッチンスタジオ、本田明子