50歳独身、子もパートナーもなし。お墓の準備始めたほうがいい?/伊藤東凌さんの回答
だからこそ、考えだしたら不安でたまらない、家族や自分の老後の生活。
各分野のスペシャリストが、そんなあなたの不安にそっと寄り添います。
今回のお悩み/孤独
独身・子なしのお墓問題。
今から何か準備したほうがいい?

現在独身で、パートナーもいません。両親も後期高齢者になり、ふとお墓のことが心配に。お寺関係のことは両親にまかせきりで、私自身お寺とのおつきあいはありません。お墓を継ぐ人がいないので、私の代で「墓じまい」をしなければならないのはもちろん、自分が亡くなったときのお墓はどうなるのか不安です。親戚に迷惑をかけないよう、今から永代供養の墓を買うなど準備が必要でしょうか。最近よく耳にする「樹木葬」や「散骨」なども気になっています。
(50歳・女性)
伊藤東凌さんの回答
お墓も「所有」から「シェア」の時代へ。家族形態を問わず、「樹木葬」を選択する人が増えています。


伊藤東凌さん
50歳でお墓について考えるのは早いと思われるかもしれませんが、今のうちから動いて、ご自身が納得する〈終着地〉を見つけておくことをおすすめします。なぜなら、「お墓をどこに定めるか」は、今後の生き方にも影響してくるからです。
昨今のお墓事情についてお話ししますと、相談者のかたのように、従来の石塔葬よりも、樹木の下の土地を共有する「樹木葬」※を希望する人が増えています。「両足院」でも、新規で供養を申し込まれるかたの9割近くが樹木葬を希望されています。むしろ墓石の下に埋葬してほしいと希望する人のほうが少数派になってきているのです。この傾向は、パートナーやお子さんがいる・いないには、まったく関係ありません。
これからは、お墓を個々で「所有する」時代から、「シェアする」時代になるでしょう。人生最後に行きつく場所を「人と共有する」と決めておくと、物や執着が手放しやすくなり、より人とのつながりや内面的な豊かさを重視した人生が送れるのではないでしょうか。
墓じまいに関しては、まず親族の同意を得たうえで進めてください。そして、できるだけ早い段階でお寺や墓地の管理者に相談しておくことが大切です。いきなり墓じまいをしたいと伝えるだけでは、お寺や管理者とトラブルになることがあります。墓じまいをするに至った経緯や理由を事前に説明しておけば、お寺側も事情を理解し、スムーズに手続きが行えるように対応してくれるはずです。
※ 樹木葬
樹木を墓標として埋葬する永代供養墓のひとつ。遺骨を自然に返す「自然葬」のなかでもっとも人気が高い。大きな樹木の下に合祀するタイプ、個別の区画を持ち、樹木や花を植えるタイプ、里山全体が墓地となっているタイプなどさまざまな形式がある。
臨済宗建仁寺派「両足院」副住職
1980 年生まれ。坐禅と瞑想の指導、アート展の企画など活動は多岐にわたる。最新刊は『忘我思考』(日経BP)。メディアプラットフォームnoteにて「医師と僧侶のカケコミ相談室」をスタート。音声メディアVoicyにて「とうりょうさんの寺子屋ラジオ」を配信中。
取材・文/太田順子 イラスト/松元まり子