
料理好き、そして玉子好きな小説家の井上荒野さんが、 気楽に作れておいしい「目玉焼き」のせ料理を紹介する連載エッセイ。今回は、おうちで楽しめる目玉焼き弁当のアイディアです。家で過ごす時間が増えている今、気分転換に試してみませんか?
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目玉焼き弁当
この原稿を書いている四月中旬現在、世界はコロナ禍の真っ只中にある。
感染しない、させないためにはとにかく外出を控えるしかなく、私たちはしばらく長野の家に留まることにしている。
私も夫も、もともと在宅ワーカーなので、引きこもっても生活形態はさほど変わらない。買い物に出かける回数が少なくなったのと、外食をしなくなったことくらいだ。けれども今回、突然そうなってしまった人たちにとっては、家族と一緒にずっと家にいたり、自分と家族の食事を一日三食作らなければならなかったりすることが、かなりのストレスになっているという話を聞いた。それはそうだろうなあと思う。もう二十年以上、一日三食作り続けてきた私だって、突発的に「きーっ!」となることがあるもの(それが何度か起きた結果、毎週水曜日に夫が作ってくれることになったわけです)。
というわけで今回は目玉焼き弁当。昨日の残りものでも、お弁当箱に詰めればちょっと新鮮。出かけられなくても、家の中の日当たりのいいところでお弁当を食べれば気分も変わる。「笑顔で悲しいことは考えられない」という説を何かで読んだことがあるけれど、「お弁当を食べながらケンカはできない」ということもあると思います。家の中での人間関係と料理に煮詰まったらぜひ。
また雪!
四月なのに…ふきのとうを
発見青い鳥がきた。
ルリビタキらしい。
レシピ
目玉焼き弁当

今回はレシピと言えるほどのものはありません。
目玉焼きは最初、堅めに焼いて半分に切っておかずのほうに入れようと思っていましたが、よりフィーチャリングするために、ごはんの上にのせました。ニュー日の丸弁当みたいでなかなか楽しい見た目になったと思います。
ごはんの上にはまず、しょうゆをまぶしたかつお節を敷いて、その上に目玉焼きをのせています。この組み合わせはたいへんおいしいです。
おかずは、
とんかつ(昨日の残りもの)
たけのこの山椒炒め(同上)
ソーセージとピーマンのケチャップ炒め
(切って炒めてトマトケチャップで味付け) アスパラとカニカマのマヨネーズあえ
(切って合わせてマヨネーズであえる) です。

ちなみにお弁当箱は、去年、諏訪の鰻屋さんの店先で買ったもの。ちょっと古い樹脂製で、五百円なり。これを買ったときには数ヶ月後にこんなことになっているなんて思いもしなかった。一日も早くすべての人に日常が戻ってきますように。

撮影/三原久明
- 井上荒野(いのうえ・あれの)
- 1961年生まれ。89年「わたしのヌレエフ」でフェミナ賞、2004年『潤一』で島清恋愛文学賞、08年『切羽へ』で直木賞、11年『そこへ行くな』で中央公論文芸賞、16年『赤へ』」で柴田錬三郎賞、18年『その話は今日はやめておきましょう』で織田作之助賞受賞。著書に『夜をぶっとばせ』『ママがやった』『綴られる愛人』『あちらにいる鬼』など多数。新刊『よその島』(中央公論新社)発売中。
現在は東京と長野を拠点に生活。インスタグラムに手作り料理や愛猫との暮らしの写真などを投稿している。
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文・写真・料理/井上荒野 構成/掛川ゆり