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世話焼きな本屋さん

お客さんの悩みや気持ちに寄り添う本を、ちょっと世話焼きな書店員たちが心をこめて選書いたします。どうか素敵な本との出会いがありますように。

忙しい人でも、すきま時間に『さくっと読める本』を書店員が本気で選書!お薦め6選

毎日忙しく、ルーティンをこなすだけで終わりがち。すきま時間にさくっと読める本で、一日の楽しみや刺激が欲しいです

今回の選書担当

書店員芸人 カモシダせぶんさん

芸人活動と並行し、2つの書店に勤める現役書店員。9 月19日には初小説『探偵はパシられる』(PHP研究所)発売予定。
公式X:@kamo_books

「いか文庫」店主 粕川ゆきさん

書店勤務のかたわら、店舗も商品もない「エア本屋」・いか文庫を発足。リアル書店での選書やイベントを通じ、本との出会いを提供している。

書店員芸人 カモシダせぶんさん
おすすめ3選

天才はあきらめた

100 文字SF
著:北野勇作 ハヤカワ文庫JA 770円

小説のなかでも「さくっと読む」のがむずかしそうなのがSF 小説。この本は、そんなSF 小説を最もお手軽に摂取できます。なにせたった100 文字! 1分あれば1 話読めます。もとは、著者の北野勇作先生がXに上げていた人気企画をまとめたもの。SNS 発信の本というのも、ちょっと前からしたらSF 的な展開ですね。ここで一つお話を紹介しましょう。「冷凍睡眠装置の調子が悪く睡眠槽の周囲が霜だらけで、自動霜取り機能もうまく働かないから手動でやったら船内びちゃびちゃ、あわてて雑巾で拭いているという夢を今見ているのだが、この冷凍睡眠装置、大丈夫かなあ。」……小説でもありますし、短いので詩のようにも思える文ですよね。SF 入門におすすめですのでぜひ。

一話の文字数、たった100 文字。この小さな制約の中で無限に広がるSF世界を創造していく、作家・北野勇作による実験的で挑戦的な新しいSF作品集。

武士道シックスティーン

おやさい妖精さん 大図鑑
作・絵:ぽん吉 Gakken 1540円

短い時間にたくさんの字を読むのは何か疲れるな……だけど読書で癒やされたい。そんなときにおすすめなのがこちら。児童向けだと侮るなかれ、大人でも読みごたえがある一冊なんです。おやさい妖精さんは、人間に助けられた動物の魂が、人間に健康になってほしくて変化した姿。ハクサイヌ、カボチャボなど、作者のぽん吉さんデザインの妖精さんがとにかくかわいいし、色合いがきれい。ビタミンカラーは見ているだけでも元気が出ます。さらに野菜についての知識もしっかり描かれていて、ページをめくるごとに野菜が食べたくなる。恐るべし、おやさい妖精さん……。パッと開いたページで今日食べたい野菜が決まる、そんな本でもあるので、献立で迷っていたらぜひー。

人間に恩返しするため、動物から野菜や果物に姿を変えた「おやさい妖精さん」。ハクサイヌやライチワワなど、ユニークでかわいい妖精さんの生態をイラストで解説。

ゼロからトースターを作ってみた結果

挫折を経て、猫は丸くなった。―書き出し小説名作集―
編:天久聖一 新潮社 1210円

すぐれた小説の条件に、「書き出し」の一文で読者の心をつかむというのを聞いたことがあります。たとえば川端康成『雪国』の「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」は、有名な書き出し。この本の編者である天久聖一さんは「デイリーポータルZ」というサイト内で、そんな書き出しを一般に広く募集し、優秀なものを公開する「書き出し小説大賞」という企画を10 年以上定期的にやっています。その傑作選がこちらの本。じつは昔、僕も投稿してました。ちなみにこのタイトル『挫折を経て、猫は丸くなった。』も書き出しの一つ。この猫、いったいどんな挫折をしたんだろう……と、書かれている文のその奥まで想像して楽しめるものばかりです。

冒頭の一文のみが提示される「書き出し小説」集。「担任に好かれている吉田と、ただの吉田がいた。」など、続きを想像したくなる全416 編の「書き出し」を収録。

「いか文庫」店主 粕川ゆきさん
おすすめ3選

プラネテス 全1~4巻

探偵はパシられる
著:カモシダせぶん PHP研究所 1980円

主人公のパシリ君こと、岡部太朗が巻き込まれるさまざまな事件を収録したこの小説。9つのお話ごとに語り手が代わり、それぞれ一話で完結するので、少しずつ読めて日々ワクワクをとっておけるのが魅力。なんといってもパシリ君のさえわたる謎解きに、たまらない爽快感を味わうことができます(個人的にはゆがんだ感覚を持った生物教師との会話応酬劇にドキドキ)。それに、芸人でもある著者のカモシダさんが書きためているコントのネタももとになっているそうで、だからこそテンポがよく、実写で見ているような気分で楽しめます。前向きで迷いのないパシリ君の打たれ(殴られ)強さにはパワーや勇気ももらえるから、日々の活力にするべく読むのもおすすめです!

主人公は神奈川県立N高校の番長……ではなく、その「パシリ」の岡部太朗。お使い先で巻き込まれるあらゆる事件を、番長のもとに早く戻るべく最速で解決していく。

すぐやる脳

うみべのストーブ 大白小蟹短編集
著:大白小蟹 リイド社 880円

日常風景にそっとファンタジーも織り交ぜられた7つのマンガたちには、だれしも一度は味わったことがある身近な、かつ大切な出来事や感覚が、おだやかにやさしく描かれています。本当は人間が嫌いじゃない雪女・雪子のお話には、家族から「雪女はこの山の中でしか生きていけない」と言われつづけてきた雪子が、人間に「家出しちゃえば」「やってみなきゃわかんないじゃん」と言われるシーンが。他人が言うことに縛られず、自分の気持ちに正直に踏み出してみることの大切さを思い出させてくれます。ほかのどの物語もすばらしいのですが、それはきっと、読むときの状況や感情によって、心に響くものが違うからかもしれません。何度でも読み返したくなる一冊です。

考えすぎて始められない、何をやっても続かない、やってみたいことはあるのに――。そんな「先延ばし」の癖を、脳神経外科医の著者が脳のしくみをもとに解決。

調理場という戦場「 コート・ドール」斉須政雄の仕事論

死ぬまでに行きたい!世界の絶景 新世界編
著:詩歩 三才ブックス 1980円

掲載写真がうっとりするほど美しいのは表紙からも伝わりますが、それだけじゃないのが本書のおもしろいところ。実際に行くとしたらと、旅のプラン例、おすすめの季節、旅の予算なども載っているので、妄想がぐっと現実に近づきます。たとえば(私が行ってみたい)アイルランドの「トリニティ・カレッジ図書館」があるダブリンは、6 月~9月に行くのが◎で、4 泊7 日の行程で、ご予算32 万円から。毎月5000 円ずつ貯金したら、6 年後に行けちゃうかも……? さらにこの本、リラックスしながら読めるように光沢のない上質紙を使用し、開きやすい製本の工夫もされているので、寝る前にパラパラめくりながらおやすみなさい……。夢も無限に広がります。

絶景ブームを巻き起こした『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』シリーズの完結編。知られざる60の絶景スポットを、美しい写真と実用的な旅ガイドで紹介。

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イラスト/河原奈苗

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