オレペAI検索
調理室池田 店のテーブル 家のテーブル

骨つき鶏もしみしみ柔らか「調理室池田」の『コック・オ・ヴァン』

調理室池田 店のテーブル 家のテーブル

毎月第1・第3金曜日に更新している「調理室池田 店のテーブル 家のテーブル」。4回目は「店のテーブル」から、ランチでもときどき登場するコック・オ・ヴァンの作り方をご紹介します。

今回のレシピのヒント

煮込まず待つことで、味を深める

コック・オ・ヴァンとは鶏の赤ワイン煮込み。ブルゴーニュの郷土料理です。もともとは、肉質の堅い雄鶏をおいしく食べようと考えられたもので、特産品である赤ワインでじっくり煮込んでいたそう。とはいえ、私たちがふだん食べているのは若鶏。しっかりとした味わいに仕上げるために長時間煮込むと、むしろ煮くずれしやすくなるという問題があります。 そこで私は、いくつか〈待つ時間〉をつくっています。

待つタイミングは3回

(1)肉に下味をつけて一晩待つ
肉にまぶした塩が煮汁に流れきらず、しっかりと残る。余分な水分が出て肉が締まり、食感もよくなる。

(2)ワインを加えてかるく煮たら、肉にワインがしみるのを待つ
火を止めておくので、煮くずれの心配がない。

(3)最後に30分ほど煮込んだら、味がなじむのを待つ
半日以上おくと、全体に味がなじんでソースの味わいが深くなり、色も濃くなる。

待つほどにおいしくなるこの料理。作っておけるので、おもてなしのメニューにも活躍しますよ。

骨つき肉でぜいたくな出来栄え

続いて材料の話です。おすすめなのは煮くずれしにくく、ジューシーな仕上がりになる骨つきのもの。今回は骨つきもも肉と、手羽元を使いました。

骨つきもも肉は大きいので、食べやすいようにぶつ切りに。関節に包丁を入れ上下2つに切り分けます。足を持って折り曲げると関節の場所がわかりますよ。
また、下半分のすねの部分は、そのままついていてもいいのですが、鍋の中が狭くなるので私は切り落とします。この部分はだしを取るときに使えるので、冷凍してとっておいても。
時間のないときや、より手軽に作りたいときは、骨がついていないもも肉に替えてもおいしく作れます。

飲んでおいしいと思うワインを使う

今回のもう一つの主役「ワイン」。ブルゴーニュ料理ゆえに、ブルゴーニュのものを使うのがいちばんですが、特にこだわらなくても大丈夫です。ただし、ワインの味が料理に影響するのは間違いないので、ここはご自身の好きな赤ワインで作るのはいかがでしょう。店ではアルコールが苦手なかたでもおいしくめしあがっていただけるように、味わいの深いものと軽めのものを混ぜて使って調整しています。

半日も待てない……というときは

煮込んですぐ食べたいときや、味が少しものたりないときには、いったん肉を取り出して、ソースだけを煮つめます。ソースは焦げつきやすので、ときどき混ぜるのですが、肉が入ったままでは煮くずれしてしまうので、一度取り出すというわけです。アルコール感が気になるときも同様に、よく混ぜながら煮つめるといいでしょう。
いっしょに食べるとおいしいので、マッシュポテトを添えても。皮をむいたじゃがいも(男爵)を大きめに切り、ひたひたの水でゆでます。火が通ったら湯を捨て、粗くつぶして。牛乳適宜を少しずつ加え、なめらかになるまで練り、味をみて塩でととのえたら完成。ほかには、平麺のパスタやフライドポテトなどでもいいでしょう。

次のページでは詳しい作り方を紹介します。

『コック・オ・ヴァン』のレシピ

材料(6人分)

鶏骨つきもも肉……3本(約1kg)
鶏手羽元……6本(約300g)

〈下味〉
にんにく……4かけ
オリーブオイル……大さじ2
塩……大さじ1弱
ハーブ(タイム、ローズマリー、ローリエ)、こしょう……各適宜

〈A〉
玉ねぎ(大)……1個
セロリの茎……1本分
にんじん……1本
にんにく……2かけ

マッシュルーム……12個
赤ワイン……500~550ml
バター(食塩不使用)……30g
カットトマト缶詰(400g入り)……1/3缶
ブーケガルニ
(セロリの葉1本分、ねぎの青い部分1本分、ローリエ3枚などをたこ糸で縛る)……適宜
タイム……適宜

オリーブオイル

小麦粉
粗びき黒こしょう

作り方

(1) 鶏骨つきもも肉をぶつ切りにする
鶏骨つきもも肉は中央の関節の部分に包丁を入れて切り分ける。足先側は、さらに関節の部分に包丁を入れて切り分ける。余分な脂肪を取り除く。

(2)下味の材料をもみ込む
バットに(1)のもも肉と鶏手羽元を入れ、下味の材料をもみ込む。ラップをかけ、冷蔵庫で一晩置く。

(3)フライパンで鶏肉を焼く
フライパンにオリーブオイル大さじ1を中火で熱し、鶏肉の1/2量を入れる。鶏肉の両面にしっかりと焼き色がつくまで焼き、バットなどに取り出す(中まで火が通ってなくてよい)。フライパンの余分な脂を拭き、残りの鶏肉も同様に焼いて取り出す。

(4)ワインを加えて煮る
フライパンの余分な脂を拭いて(3)の鶏肉をすべて戻し入れ、下味のハーブ、赤ワイン500mlを加えて中火にかける。煮立ったら弱めの中火にし、10分ほど煮て火を止める。

(5)野菜の下ごしらえをする
〈A〉のにんじんは皮をむき、残りの〈A〉とともに粗いみじん切りにする。マッシュルームは石づきを少し切り落とし、縦半分に切る。

(6)野菜を炒めて蒸し煮にする
口径26cmの鍋にオリーブオイル大さじ3を中火で熱し、〈A〉を入れて、塩小さじ1/2をふって炒める。玉ねぎが透き通ってきたら、マッシュルームを加えてさっと炒める。水1/4カップを加えてふたをし、煮立ったら弱火にして5分ほど蒸し煮にする。ふたをはずし、強めの中火にしてときどき炒めながら水分をとばす。

(7)小麦粉を炒めて鶏肉を汁ごと加える
バターを加えて溶かし、弱火にする。小麦粉大さじ1と1/2をふり入れて炒め、全体になじませる。粉けがなくなったら、(4)の鶏肉を汁ごと加える。ハーブと、焦げてしまったにんにくは取り除き、中火にする。

(8)ブーケガルニを加えて煮る
焦げないよう、ときどきゴムべらで底をこそげながら煮る。ひたひたの状態をキープし、汁けがたりなければ赤ワイン(または水)1/4カップを加える。煮立ったら弱めの中火にし、ブーケガルニ、カットトマトを加えて、ときどき混ぜながら30分ほど煮る。火を止め、半日ほどおく。食べるときは中火にかけて温め、塩少々で味をととのえる。器に盛って粗びき黒こしょう適宜をふり、タイムを散らす。

じっくり「待つ料理」。お試しください。
次回は2/16(金)更新。男性人気の高い『あまおうのプディング』を紹介します。

撮影よもやま話

毎日の仕事には、気持ちのいいコットンの業務用エプロンが必要不可欠です。どんなものでもいいわけではなく、丈夫であること、乾きやすいこと、着けていて疲れないもの、デザインが気の利いているもの、高価でないもの、などいろいろ条件があります。

服が汚れないようにビブエプロンと呼ばれる胸当てのタイプのものをその日の服に合わせてフランス製の白か紺、イギリス製のストライプのものから選んで着用します。今回の撮影では肉料理にちなみイギリス製のブッチャーエプロン、もとは汚れが目立たぬように肉屋で働く人の為に作られたストライプ柄のものを選びました。

伝統的なレストランはシェフを中心として役割に階層があって仕事が分業されており、それに伴い格好も異なります。ブッチャーエプロンはもとは肉屋のもの。レストランでは汚れることが多い食材の下処理などを担当する、いわゆる見習いが着けるものでした。しかしながら、90年代後半に台頭したモダンブリティッシュの流れの中で、そういった慣習に拘らないイギリスの若いシェフ達がこぞって着用するようになり現代のトレンドとなったのです。

美味しい料理を作るには気持ちの良いエプロンも欠かせない要素です。(文/池田講平)

調理室池田

調理室池田
2018年12月に川崎市にある中央卸売市場北部市場内に開店。アンティークショップ・アートギャラリーを兼ねた、市場には珍しいスタイルのカフェ。早朝から働く人がコーヒーを片手に手軽に食べられるようにと作った焼き菓子や、ツナメルト、フリットといった市場で仕入れる新鮮な魚介類を使ったランチが人気。
公式HP 公式インスタグラム 

神奈川県川崎市宮前区水沢1-1-1 川崎市中央卸売市場北部市場 関連棟 45 
営業日/月・火・木・金・土曜
営業時間/7:00~13:30
(ラストオーダーは13:00、土曜日のみ14:00)
ランチタイムは 11:45~ 休みは市場に準ずる(原則、水・日曜と祝日) 
※一般のかたの市場への入場は8時から。来店の際は必ず上記HPかインスタグラムを確認してください。

料理・文/池田宏実 撮影・スタイリング/池田講平 編集/小林