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【編集マツコの、週末には映画を。Vol.99】『ミナリ』

2021.03.12


こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。最近、仕事で移民のかたたちに料理を教わる機会があるのですが、彼らの食文化の興味深いこと! グローバル化が進み、独自の食文化が失われつつあるなんて話も聞きますが、なんのなんの。親類から食材を送ってもらったり、日本で手に入るもので代用したり、みなさんたくましく伝統の灯を掲げ続けています。
そんな彼らの姿と重なったのが、80年代にアメリカに渡った韓国の移民一家を描いた今作。飛ぶ鳥を落とす勢いでヒット作を生み続けている映画製作・配給会社「A24」によるファミリーストーリーです。ぐっと抑えた演出のおかげで、逆にそれぞれの登場人物の感情が際立ち、穏やかな感動に包まれます。


ひよこの鑑別師って本当にいるんですね。見事な手つきで雄と雌を分けていく韓国人移民のジェイコブ(スティーヴン・ユァン)は、カリフォルニア、シアトルと各地の孵卵場で働き、夢をかなえるために家族とともにアメリカ南部のアーカンソー州へ。農場作りを夢見る夫に対し、妻のモニカ(ハン・イェリ)は娘のアン(ネイル・ケイト・チョー)と息子のデビッド(アラン・キム)にとってこれがベストな選択かどうか自信がありません。夫婦のストーリーだとするとややありがちな設定ですが、不思議と冒頭からずっとワクワクした気持ちで見られるのです。それは、「主人公が誰なのか」を曖昧にしながらも、息子デビッドの視点を中心に話が進んでいくからかもしれません。彼と同じような経験をした監督の半自叙伝的作品、と考えれば納得。子どもの目は余計な価値判断を加えず、この時代にアメリカに渡った一家の生活をありのままに伝えてくれます。


アジア系に対する地元住民の差別とか、せっかく育てた作物が全滅とか、ステレオタイプの劇的な展開は用意されていません。もちろんすべてが順調ではなく、地下水が枯れてしまうトラブルなどは発生するものの、そこにあるのはもっと淡々とした家族のエピソード。意見が食い違う夫婦は何度も小さな口論を繰り返し、ケンカの翌日はやはり気まずい。心臓に疾患を持つデビッドへの心配も絶えない。アメリカンドリームの裏にある小さな日常を描いているからこそ、誰もが共感できるのだと思います。
この映画に欠かせないのが、一家が韓国から呼び寄せるモニカの母・スンジャ(ユン・ヨジョン)。料理はできない、やたらと騒がしい、そして花札が大得意な、「おばあちゃんらしくない」と何度も言われる彼女とデビッドの交流が話の軸の一つになっています。
素っ頓狂な彼女が示す孫への愛情は、両親にも負けないほど深いもの。幼いながらも自分の病を認識し死に怯えるデビッドをスンジャが励ますシーンは、ぐっとくるものがあります。


農作業を手伝ってくれる友人も招き、一家で囲む食卓。そこには、肉や野菜を葉野菜で包んで食べる韓国独自の食文化が見られます。韓国のドラマや映画によくあるのが、この「葉っぱ包み」を相手に「はい」と食べさせてあげるシーン。愛情深いこの文化が、どうか途絶えることなく受け継がれますように……。
タイトルの「ミナリ」は、日本でもおなじみのある植物のこと。その意味するところは、ぜひ映画を見て確かめてください。遥か海を渡った同胞への、そして祖先たちへのリスペクトが込められた素敵なタイトルでした。

「ミナリ」 3月19日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
配給:ギャガ
©2020 A24 DISTRIBUTION, LLC   All Rights Reserved.

【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。

文/編集部・小松正和

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