
ちょっとおいしいドーナツ

子どもの頃、ドーナツが苦手でした。
揚げ油がずっしりと重たいところや、飲み物がないと飲み込むのも大変なところ。
特に、チョコやホイップの飾りもない、茶色くしっかり揚がったいわゆる基本のドーナツが。
そのせいか、今の今までドーナツを自分でつくって揚げよう、なんて思ったこともありませんでした。
結婚してから夫がミスタードーナツのオールドファッションが好きだと知って驚き。
最近では、子どもも絵本やアニメで何かと見かけるドーナツに心惹かれているようです。
「これはつくれば喜ばれるターンか…!?」
自分のなかにおいしいドーナツのイメージがないまま、小麦粉、キビ砂糖、たまご、牛乳、バター。
家にある食材でつくれるシンプルなドーナツづくりに人生ではじめて挑戦。
生地づくりはクッキーの要領で。問題は、ドーナツの型抜きが我が家にないこと。
適当なサイズのお皿の縁に小麦粉を塗って型の代わりにしたり、真ん中の穴はクッキー型でくり抜いたり。
なので、穴の周りがちょっとお花の形なのは、うちのトレードマーク。
油の温度はじっくり低温。いつもバチバチジュワジュワの揚げ物に慣れている鍋が、静かにシュワシュワとドーナツを茶色く染めていくところが不思議で見入ってしまいました。

最後は粉糖をまぶして完成!
味はともあれ。ドーナツを食べ慣れていないので、私の中では比較のしようがありません。
でも、揚げたてのほんのりあったかいドーナツを両手に収めるとホッとします。
何より、家でつくった時しか手に入らない「ドーナツの穴」部分が、サーターアンダギーのようでマドレーヌみたいで、でもドーナツで。
特別感がありますよね。

外はガリッとさくさく。中はしっとりしつつもさっくり目に仕上がったのは、揚げる途中で油の温度が上がっていくのをコントロールできなかったからかも…?
食べきれなかった分は、揚げたてから少し時間を置くと、油も生地もしっとり穏やかなドーナツになりました。これもこれで悪くないです。
しかし、子どもはいつの間にかドーナツの流行りを過ぎ去ったらしく、
「ドーナツよりグミが食べたい」
と市販のお菓子にあっさり負けてしまいました。揚げたてのドーナツそっちのけでグミに手を伸ばす子どもは、
「ドーナツはちょっとおいしい。グミはすごくおいしい」
とのこと。それを横目にみながら、笑うしかありませんでした。
「そっか。ママも、ドーナツちょっとおいしい」
