【イチからわかる腸活】クリーミーな自家製ヨーグルトを作るのにおすすめの牛乳は？

※この記事は、東北大学名誉教授の齋藤忠夫先生の監修のもと、作成したものです。

腸活に効果的と言われる〈ヨーグルト〉は、自宅でも作ることができる発酵食品。
でも、いざ作ってみたら、好みの味にならなかったり、腸に効果が感じられなかったりと、残念な思いをしたこともあるのでは？

ということで今回は、手作りヨーグルトを作る際に役立つ知恵や、ヨーグルトにまつわる疑問、トリビアな話をご紹介！

乳酸菌と機能性ヨーグルト研究のエキスパート、東北大学名誉教授の齋藤忠夫先生にお伺いしました。

◆手作りヨーグルトの健康効果と、おいしく作るコツが知りたい！

健康効果の高いヨーグルトを作りたいとき、思い浮かぶのは「機能性ヨーグルトを種菌にしてホームメイドした場合、機能性乳酸菌の効果はあるの？」という疑問。

「尿酸値を下げる、肥満を防止するなど、特殊な機能性ヨーグルトに含まれる乳酸菌の機能を自宅で再現することは、残念ながら難しいといえるでしょう。

しかし、〈整腸作用〉や〈便秘改善〉の効果は、どのヨーグルトを種菌にした場合も確実に得られます。また、＜花粉症を軽減する＞、〈免疫機能を整える〉などの効果は、ある種の乳酸菌にも期待できるでしょう」（齋藤先生）

通常、市販のヨーグルトにはブルガリクス菌とサーモフィラス菌という2つの乳酸菌が基本的に入っており、加えて他の乳酸菌やビフィズス菌が使われています。

自宅のヨーグルトメーカーを用いて、市販品と全く同じものはできません。
その理由は、ヨーグルト中には4～5種類の善玉菌をブレンドしているヨーグルトもあり、まったく同じ菌数割合（比率）を再現することは､その道の専門家でも難しいとされているからです｡

でも、がっかりしないで！
市販品と同様に、クリーミーで風味が豊かなヨーグルトを再現することはできるんですよ！

ヨーグルトを失敗なく、おいしく作るには、乳脂肪成分が含まれている「成分無調整牛乳」を使うのがコツ♪

「牛乳の中の酸素を窒素ガスにより取り除く処理 をしている牛乳を選ぶと、乳酸菌が増殖しやすいんです。私は、明治や森永の『おいしい牛乳』をおすすめします。

ただし、酸素が苦手なビフィズス菌は空気にふれると死んでしまうものが多いため、自家製で作ることがなかなかできません。私は長年にわたって、自家製ヨーグルトを毎日食べていますが、ビフィズス菌入りヨーグルトだけは市販品を購入しています」

ちなみに、「カスピ海ヨーグルト」は、自宅でも室温で作ることができ、あまり乳酸ができないタイプの乳酸菌を使っているため、白カビの混入に気がつかないこともあります。
食品衛生管理のためにも、1カ月に1回程度は「種菌」を新しくすると安心ですね。

◆ヨーグルト博士の腸活アドバイス

ヨーグルトの専門家が実践しているのは、どんな腸活なのでしょうか。

齋藤先生の1日は、毎朝、にんじん、りんご、パセリ、セロリ、キャベツ、きな粉、はちみつ、青汁、ゴマ、黒酢をはじめとした15種類くらいの食材を、手作りヨーグルトと市販ビフィズス菌ヨーグルト、そしてオリゴ糖を加えてミキサーにかけ、特製ジュースを飲むところから始まります。

「不足しがちな善玉菌（乳酸菌、ビフィズス菌）とともに、腸内細菌のエサとなるオリゴ糖や食物繊維を補給するのが目的です」

また、腸活の一環として、腸を休ませることも意識しているそうです。

「消化吸収を担当する小腸が働き通しになって疲れないように、食事と食事の間をあけるように心がけています。
1日3食以外の間食が多い人は、ダラダラと食べないように要注意。特に、就寝から起床までの約6～7時間は腸を休ませることが重要です。この時間に腸の免疫細胞がメンテナンスされるからです」

そして、腸のリズムを整えるには、食事時間を一定にすることもポイント。

「1日3食規則正しく食べることで消化吸収活動がスムーズになり、おなかの調子をくずすことがありません。食事をとる時間は、休日も平日とできるだけ変えないようにしてみましょう。
また、排便リズムが乱れると便秘を招きやすくなるため、便意を逃さずにトイレにすぐに行く習慣を心がけましょう」（齋藤先生） 

もっと知りたい！ヨーグルトＱ＆Ａ

Ｑ.　無脂肪ヨーグルトって、ヨーグルトメーカーで作ることができるの？

Ａ.　より多くの乳酸菌を腸に届けるには、胆汁酸の分泌を少なくするために、ヨーグルトも含め食事中の脂肪分の摂取量を少なめにすることがポイント。

とはいえ、自宅で無脂肪ヨーグルトを手作りすると、無脂肪乳を使ったヨーグルトは分離しやすく、舌を刺すような強い酸味が出てしまい、おいしくありません。

ソフトでクリーミーなヨーグルトを楽しみたい場合は、低脂肪牛乳か成分無調整牛乳を使用して、できれば酸素の少ない牛乳（「おいしい低脂肪乳」という商品名のもの）を用いて、低温で長時間（例えば37℃で12時間）発酵させるのをおすすめします。

Ｑ.　友だちからすすめられたヨーグルトを食べてみたけど、効果が感じられないのはどうして？

Ａ.　たとえば、A子さんが「自分に合うヨーグルト」をB子さんにすすめたとします。でも、B子さんに合うとは限りません。

なぜなら、私たちは自分だけの特徴的な腸内フローラ（腸内細菌叢）を持っていて、腸内細菌の種類や菌数のバランスには大きな個人差があるからです。 

また、食の好みが異なれば、消化液として分泌される唾液や胃酸や胆汁酸の分泌量も異なります。脂肪分の多い食事を好む人は胆汁酸の分泌量が増えて、乳酸菌やビフィズス菌が死んでしまう確率が増え、腸内環境が乱れる心配があります。

じつは、食事とともに飲み込んだ空気（酸素）の量も、ビフィズス菌の菌数に反映され、腸内フローラのバランスに大きく関わると考えられます。 

たとえばB子さんは、食事の際に空気をたくさん飲みこんでしまうタイプだとしましょう。すると空気中の酸素がB子さんの下部消化管に届いて、大腸内で酸素が苦手なビフィズス菌を減少させ、腸内健康に影響する可能性があります。

人にすすめられたヨーグルトを1～2週間食べ続けても整腸作用が実感できないときは、「自分の腸内フローラに合っていない」という可能性が大です。別のヨーグルトをぜひ試してみましょう。

Ｑ.　血液型に合った乳酸菌が存在するって、本当？

Ａ.　答えはイエス。私が東北大学に在職していた当時の研究で、A、B、O、AB型の血液型を認識する「血液型乳酸菌」が存在することを世界で初めて発見しました。

「血液型乳酸菌」の機能性についての詳細は不明ですが、たとえばA型の血液型の人にはA型乳酸菌が間違いなく存在すると考えていいでしょう。

血液型の違いにより、感染症のリスクが異なることは古くから臨床的に知られています。私たちの腸の粘膜には血液型を認識する乳酸菌が付着し、それらが病原菌の増殖を阻止して、腸の健康を守ってくれると推定できます。

Ｑ.　ヨーグルトをたくさん食べる国の人は、大腸がんが少ないの？

Ａ.　粘り気があって糸を引く「ヴィリー」というヨーグルトをたくさん食べるフィンランドでは、「大腸がんが極めて少ない」という研究報告があります。おそらく朝、昼、晩とヨーグルトを食べる習慣によって、スッキリ快便という人たちが多いのでしょう。

便が長時間にわたって大腸の中に滞留すると、有害菌が発ガン物質を作り出し、大腸の壁と接触する機会が増えて、大腸がんの発生リスクが高まります。ヨーグルトをたくさん食べる国の人たちは便秘知らずなので、結果的に大腸がんの発症リスクが低めだと考えられます。

これであなたも〈ヨーグルト〉について詳しくなったのでは？
自分に合った手作りヨーグルトで、おいしく、楽しく腸活に励んでみて。

教えてくれたのは……
齋藤忠夫（さいとう　ただお）先生

東北大学大学院農学研究科・名誉教授。オエノンホールディングズ株式会社・社外取締役。アジア乳酸菌学会連合（AFSLAB）フェロー。日本農芸化学学会（JSBBA）フェロー。日本酪農化学学会（JDSA）顧問。これまでに、さまざまな機能性ヨーグルトを世に送り出してきた乳酸菌研究および機能性ヨーグルト研究のエキスパート。著書に『ヨーグルトの事典』(朝倉書店)など多数。

※この記事は、会員サイト「オレンジページサロンWEB」（サービス終了）の掲載記事を再編集したものです。

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