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柚木麻子の「拝啓、小林カツ代様」~令和のジュリー&ジュリア~
人気作家・柚木麻子さんが昭和の料理研究家・小林カツ代さんを語る食エッセイ。映画「ジュリー&ジュリア」ばりに往年のカツ代さんレシピを作り、奮闘します。コロナ禍ですっかり料理嫌いになった柚木さんが、辿り着く先はーー?

【柚木麻子連載】2週間遅れの年越し蕎麦。2026年も生き延びる気合をくれた、カツ代の味

柚木麻子の「拝啓、小林カツ代様」~令和のジュリー&ジュリア~

第33回  【柚木麻子連載】2週間遅れの年越し蕎麦。2026年も生き延びる気合をくれた、カツ代の味

年末年始は、家族の体調不良など、あらゆることが同時に起きた。クリスマスのご馳走、おせち作りなどを例年通りカツ代レシピに従って丁寧に作り(写真参照 ケンタッローフライドチキン本格ミートソースおせち各種)、苦手ながらなんとか子どもを率いて掃除もして、穏やかな冬休みを迎える予定が、暮れに開いている病院を探して、夫と右往左往する羽目になり、生まれて初めて、年越し蕎麦も食べなければ、紅白も見ない大晦日を迎えた。仕事に大量の遅れが発生し、子が寝た後、残業することでなんとか辻褄を合わせ、1月半ばのいま、やっと冬休みを迎える準備が整ったところである。ちなみに初詣もまだである……。
そうなると、年越し蕎麦を食べたい、という気持ちがむくむく湧いてくる! 今からなんとかして大晦日を迎え、すっぽり抜けたこの2週間を埋めてしまいたい。
冷蔵庫には、31日に大慌て「まいばすけっと」で購入した生そばが1つ残っている。いろんな事情が重なって、毎年注文しているお蕎麦屋さんの天ざるを食べることが叶わなかった。私はいつも間一髪のところを「まいばすけっと」に救われている。ちなみにこの蕎麦は3つ入りで、2つはボロボロの夫に振る舞ったもので、私自身はまだ食べていない。
さて、どう料理しようか。
大晦日はキリッと冷たいお蕎麦を食べたい。
おなじみカツ代レシピから「辛み蕎麦・ちくわ天添え」を作ってみることにする。市販の蕎麦に添えられていたパックのめんつゆは別の料理に使ってしまったので、カツ代さん直伝のそばつゆにチャレンジしてみる。
ひたした昆布を沸騰前で引き上げた後、鰹節をしっかり煮出すのがいかにもカツ代さん流。味付けはちょっと甘めで、鰹の風味が漂うと、それだけでもう大晦日そのものの空気が濃厚に立ち込める。大晦日とは私にとって、小さい頃から出汁と柚子の香りがするものだ。
ちくわは、子どものコロッケ(こちらもカツ代さんレシピ)で余った卵液と小麦粉を利用して、残り油でささっと揚げてしまう。お蕎麦は硬めに茹でて冷水できゅっと引き締める。大根おろしやねぎ、好みでレモンを添えて出来上がり。本当は柑橘類は柚子にしたいところだが、この数日、柚子湯に使い切ってしまった。
手作りのそばつゆの香ばしさと甘みにまず癒される。年末の「まいばす」の寂しさを思い出しながらすする蕎麦は、香り高く、噛み締めると力強い滋味さえ感じられる。ここに、きりっと辛いおろしや、アツアツカリカリで中は柔らかなちくわ天が合わさると、飽きるという瞬間がまったくない、すすることに全集中した数分間であった。
この2週間を乗り越えた、しみじみとした感慨と、今年も生き延びるぞという気合が湧き上がってくる。
今年もカツ代さんレシピとともに、どうぞよろしくお願いします。

今回紹介したカツ代さんレシピ

※「KATSUYOレシピ」より一部引用

「ピリリと辛い大根おろし暑い暑い季節に背筋が伸びるようで心地いい。」

『辛み蕎麦・ちくわ天添え』のレシピ

材料(2人分)
茹でた蕎麦……2人分
麵つゆ……適量
辛み大根……すりおろして1/2カップ
青葱……刻んで1/2カップ
揚げ油……適量
焼きちくわ……太1本

【衣】
小麦粉……大さじ5
卵……1/2個
水……大さじ3

作り方
(1)汁を用意する

麺つゆは市販を使うようなら、適度な味に希釈しておき、手作りなら一番先に作っておいて、冷やす。
(2)薬味を準備する
大根おろし、刻みねぎを用意する。
辛味大根の無い人は、いつもの大根のしっぽの方を使うと、それなりに辛い。
(3)ちくわ天を作る
ちくわは長さを半分に切り、さらに縦半分に切る。
衣を作る。衣の材料(小麦粉・溶き卵・水)を混ぜる。
揚げ油を中温で熱し、竹輪にどっぷり衣をつけて、揚げる。中温より温度が上がらないように火加減調節を気を付ける。
カリッと揚がったら、よく油をきって引き上げる。
(4)蕎麦を茹でる
湯をたっぷり沸かし、蕎麦を袋の表示通り茹で、水洗いして水気をきって器に盛り付ける。
※蕎麦はメーカーによって、個々に異なるので、必ず勝手にしないで、よく読むことが大事です。
(5)
ちくわ天、薬味をそえ、上からめんつゆをかけて食べる。お好みで七味唐辛子をふる。

POINT
※蕎麦をうどんにすれば、辛味うどん。
次回は2/28(土)更新! お楽しみに。
柚木麻子(ゆずき あさこ)
2008年「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞し、10年に同作を含む『終点のあの子』でデビュー。15年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞を受賞。著書に『私にふさわしいホテル』『ランチのアッコちゃん』『伊藤くん A to E』『マジカルグランマ』『BUTTER』『らんたん』『とりあえずお湯わかせ』『あいにくあんたのためじゃない』など多数。
毎月第4土曜日更新・過去の連載はこちら

文・写真/柚木麻子 イラスト/澁谷玲子 プロフィール写真/イナガキジュンヤ  取材協力/(株)小林カツ代キッチンスタジオ、本田明子

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