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世話焼きな本屋さん

お客さんの悩みや気持ちに寄り添う本を、ちょっと世話焼きな書店員たちが心をこめて選書いたします。どうか素敵な本との出会いがありますように。

【趣味がない人へお薦め本6選】定年後の生き方・時間の使い方が見つかる読書ガイド

定年間近です。趣味といえるものもなく、仕事以外の人づきあいも少ないため、家にこもるようになるのでは……と不安です。

今回の選書担当

俳優・エッセイスト 美村里江さん

俳優としてドラマ、映画、舞台等で幅広く活躍。無類の読書家でもあり、新聞や雑誌でのエッセイ・書評の寄稿や連載も多数。

ブックディレクター・good and son代表 山口博之さん

旅の本屋「BOOK246」、選書集団「BACH」を経て独立。オフィスや病院等、書店にとどまらないさまざまな場所のブックディレクションを手がける。

俳優・エッセイスト 美村里江さん
おすすめ3選

成瀬は天下を取りにいく

趣味は何ですか?
著:髙橋秀実 角川文庫 792円

まず少し気持ちを軽くしましょう。クスッと笑えるユーモラスなエッセイを読むと、その筆者の気質が脳に反映するのか、気楽になれる人は多いようです。かといって、無理に楽しむ必要もありません。「自分はそうは思わないなぁ」「えー、何言ってるの?」など、エッセイの名手は読者からのツッコミの余白も残しながら、軽やかにページをめくらせます。そしてこの文庫、じつは「あとがき」がとってもおすすめ。締め切りがきても、原稿を書いていないどころか取材すらまだという状況で、筆者が発見した意外な「充実感」とは? 珍妙な極論と思いきや、相談者さんのお悩みの核心にタッチできるかもしれません。三浦しをん先生による「解説」も必読のおもしろさです。

無趣味を自覚した著者による、趣味探し漫遊記。そば打ちやガーデニングなど、世間で「趣味」とされるあれこれについて、見て、聞いて、やってみた記録。

私のごひいき 95の小さな愛用品たち
著:高峰秀子 河出書房新社 1760円

「趣味」とは少し視点を変えて、「ごひいき」ならどうでしょう? 気づけば長年使っているものなど、意識していないだけで好みやこだわりが意外なところに見つかるかもしれません。現代でいうミニマリストに近いであろう、往年の女優・高峰秀子さん。実用性重視で「ごひいき」を紹介しつづけた20 年の連載は、いつしか独特の審美眼の集大成に。そこで選んだ数々の愛用品が本書にまとまっています。どれも〈2、3回のコーヒー代を節約すれば手が届く価格〉〈日本国内で買えるもの〉など、厳しい基準をクリア。物が増えるのを嫌う、掃除魔の高峰さんだからこそのラインナップを眺めつつ、ご自分の人生を伴走してきた物や人物を含む「ごひいき」を振り返ってみませんか。

名女優であり、日常の工夫を大切にする生活の達人でもあった高峰秀子。彼女が愛し、「ごひいき」にした95の文具、台所用品、小物の魅力をつづる。

かわいそうだね?

結局、人生最後に残る趣味は何か
著:林 望 草思社 1870円

読者さんが本当に「趣味」を見つけたいと願うなら、本書が最もストレートに力になってくれると思います。趣味の達人、70 代も半ばとなった〈リンボウ先生〉による指南書です。知的好奇心が高いかたは多趣味なイメージですが、先生もしかり。幼少期の工作から絵画、詩から国文学、能楽から地じ謡うたいに小鼓(この時点でまだ大学院生)、さらに40過ぎで能楽から声楽にシフトして熱心に取り組み、プロと同じ舞台を踏める〈玄人はだし〉ぶり……。決してプロに届かぬ自覚を持ちつつ、真剣に継続することで見える景色があるようです。「名誉ある孤立」と「不名誉な孤立」の定義など、人生の先輩の言葉を頼りに、ご自分の深層心理を解き明かしてみてはいかがでしょう。

絵、詩、短歌、写真、能楽、書道、ギター、声楽、散歩、旅、車、料理……多様な趣味を究めた著者が、趣味の意義から究めた先の楽しみまで語りつくす。

ブックディレクター・good and son代表
山口博之さん
おすすめ3選

さみしい夜にはペンを持て

路上のセンス・オブ・ワンダーと遥かなるそこらへんの旅
著:宮田珠己 亜紀書房 2200円

むずかしいことやまったくやってこなかったことに取り組むのはハードルが高く、大変です。しかも先行投資も必要になるかもしれません。その点、おすすめなのが散歩です。本書は、自然への感性を意味する「センス・オブ・ワンダー(wonder)」にひっかけ、「センス・オブ・ワンダー(wander=散歩、徘徊)」と銘打って、鉄塔、ガスタンク、暗あん渠きよ、配管、看板など、街にずっと存在しながらも気づいていなかった〈不思議〉を、散歩しながら見つけていきます。旅をせずとも、遠出をせずとも、どこかの駅から次の駅くらいまでのちょっとした散歩の繰り返しで、毎回新しい何かと出会うことができる。お金や技術がなくても始められる。必要なのは、視点と好奇心と脚力です。

鉄塔や階段など、〈散歩マニア〉が注目するテーマに興味を抱いた著者が、平凡な街の中に輝きを見つけていくエッセイ。巻末に「散歩ブックガイド」つき。

元気になれそう 映画「魔女の宅急便」より

日記の練習
著:くどう れいん NHK出版 1870円

作家のくどうれいんさんは、10 代のころから10 年以上日記を続けてきました。でもくどうさんにとって、日記は「『日々の記録』ではない。『日々を記録しようと思った自分の記録』だ。できる日とできない日があり、その緩急がわたしらしい」と言います。本書は「日記の練習」と、それをもとに書かれ
る各月のエッセイ「日記の本番」から成ります。書かなければいけないことを書くのではなく、書かなければ忘れてしまいそうなちょっとした喜び、悲しみ、不安、気づきを練習するように書く。案外そうした小さなことの積み重ねこそが、自分という人間の基礎をつくっているんだと、日記の練習を通して知ることができる気がします。自分を見つめ直す練習、いかがですか?

幅広い作品を生み出す作家・くどうれいんの、創作の原点となる「日記」を書籍化。日々の短文「日記の練習」、それをもとにした「日記の本番」を収録。

スキップとローファー

(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、 あの名作小説を面白く読む方法
著:三宅香帆 角川文庫 880 円

天気が悪くてお出かけもできず、家にいるだけで日記に書くこともない。となると本を読むしかありません。本書は、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』が話題の三宅香帆さんによる、一度は名前を聞いたことがあるような作品たちの読み方指南書。有名だからと昔一度読んだことがあったけどハマらず、そのまま読書自体から離れてしまったという人もいるのでは? しかし、ご安心。ここで、復活。『カラマーゾフの兄弟』や『吾輩は猫である』から、村上春樹に俵万智、昨年の大河ドラマで話題の紫式部まで。現実逃避として読む小説ではなく、日常を戦い、日常と戦ってくれる前向きな相棒として、あらためて小説を読めるようになるための一冊です。

だれもが知る名作小説、読んだけどじつはよくわからない……。そんな「読んだふり」を卒業したい人のための、名作をおもしろく読む技術を伝授する。

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イラスト/河原奈苗

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