
地震、台風、豪雨など、いつどこで起こっても不思議ではない大災害。それでも、防災というとハードルが高く感じてしまう人も多いのでは? そこで、国際災害レスキューで防災のプロでもある辻直美さんに、手軽に買えてしっかり役立つ100均グッズを教えてもらいました。9月1日の防災の日を前に、今回はおすすめグッズ〈その2〉をご紹介します。
教えてくれたのは……辻直美さん
国際災害レスキューナース。阪神・淡路大震災を経験したのを機に災害医療に目覚める。被災地での過酷な経験をもとに、本当に使える防災術を講義や講演、メディアなどで精力的に発信中。著書に『レスキューナースが教えるプチプラ防災』(扶桑社)など。
プチプラおすすめグッズを部門別にご紹介!
マークの説明

100均で購入できるもの(100円ではないものも含む)や、辻さんが100均のもので充分役立つと考えているもの

避難所に行くことを想定した「持ち出し袋」にあるとよいもの

自宅に備えておくとよいもの
医療・衛生部門
感染症を防いだり、けがをした際の手当てに使うアイテムは、非常用持ち出し袋と自宅の両方に備えておきましょう。
自宅でも避難所でもしっかり感染予防感染対策グッズ




昨今のコロナ禍はもちろん、冬のインフルエンザなど、災害時もウイルス対策は欠かせないもの。「備蓄なら100均グッズでも充分。多めに買ってストックしておけるのがうれしいですね。マスクは洗えるタイプと不織布タイプの両方あると安心です。手指を清潔に保つためのアルコール消毒液、断水した場合に備えて使い捨ての手袋も備えておきましょう。場所もとらず長もちする固形石けんは備蓄向きといえます」。
外出先で被災する可能性もあるので、自宅や非常用持ち出し袋だけではなく、ポーチにコンパクトにまとめてふだん持ち歩くバッグに入れておくと安心。

アルコール除菌ジェル60ml、不織布マスク(小さめサイズ、20枚入)、洗えるマスク (ホワイト・小さめサイズ)、フレグランス石鹸ラズベリーの香り80g 3個入、ポリエチレン手袋各110円/DAISO
アルコール入りと、なしの2タイプ用意してウェットティッシュ/おしり拭き




ウェットタイプのティッシュは、断水したときに手や体を拭いて少しでも清潔に保つのに欠かせないアイテム。アルコール入りとなし、両方備えておくのがおすすめです。「アルコールが入っているタイプのものは、手指に。おしり拭きなどアルコールなしのものは、体にと使い分けましょう。おしり拭きには保湿成分や、汚れを取りやすくする成分が入っているので、おしりはもちろん、体拭きにもOK」。アルコールが入っているものを体に使うと肌がかぶれてしまうことがあるので、肌が弱い人は避けましょう。
おしり拭きで拭くとすっきりするだけでなく、気化熱効果で涼しくなるので暑い季節に最適。アルコール入りのものは、机やお皿などの除菌にも使えそうです。
アルコール除菌ウェット、純水99%あかちゃんおしりふき各110円/Can★Do
断水したときでも口の中を清潔に保つためにマウスウォッシュ




本来は歯磨き後に使用するマウスウォッシュですが、「断水した場合、歯を磨いて口をゆすぐことができないのであると役立ちます」。ボトルタイプだと重くてかさばるので、非常用持ち出し袋には、この1回使いきりのポーションタイプがおすすめです。
口の中にスーッとした爽快感が残りすっきり!
L-8020マウスウォッシュ110円/Can★Do
*その他備えておくと安心なグッズリスト
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トイレットペーパー
排泄時に必要。非常時持ち出し袋には一人1ロールを目安に。
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歯磨きセット
感染症予防のためにも、避難所での口内のケアは大事。
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お湯のいらないシャンプー
頭皮は皮脂を分泌しやすく夏はべとつくので、断水したときを想定して。
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ポケットティッシュ
汚れを拭き取ったり、けがをした際の止血に使うなど。
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アイマスク、耳栓
避難所は壁などでしっかり仕切られているわけではないので、睡眠時にあると便利。
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下着など着替え(3日分程度)
雨にぬれないようポリ袋などに入れておく。
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コンタクトレンズ・眼鏡
夜の災害時は、ふだん使いのものを持ち出せないことも。予備を入れておくと安心。
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常備薬、目薬、リップクリーム、体温計
常備薬類も備えておくと安心。目薬とリップクリームはがれきやほこりから目と唇を守るために。体温計は、災害時の体調管理に。
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ガーゼ、包帯、絆創膏、消毒液など
災害時に落下物などでけがをした際の応急処置に欠かせない。
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お薬手帳
避難するときに非常用持ち出し袋に入れる。アプリもあるが、バッテリーが切れたり水没して使えなくなる場合もある。
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生理用ナプキン
災害が起きてストレスが強まると、急に生理になることも。
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おりものシート
断水で洗濯ができなくなったり、毎日着替えができなくなる場合に備えて。
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使用ずみペットボトル
キャップに穴をあけて簡易シャワーを作ったり、懐中電灯と組み合わせることで簡易ランタンにも。
–{防災グッズ 食事部門はこちら}–
食事部門
レトルト食品やカップ麺、缶詰、乾物など、ふだん食べているものにも保存がきくものがたくさん。非常食ではなく、保存食で充分と心得て。
食べ慣れているものをストック保存食



100均ではレトルト食品や缶詰、乾物、お菓子などをたくさんとりそろえていて、しかもすべて108円と安価なのがポイント。自宅、非常用持ち出し袋ともに、ふだん食べ慣れていて保存がきくものを多めに置いておくのが理想です。備蓄した食料は災害時用にとっておくのではなく、賞味期限の近いものから食べて、買いたしてというサイクルを日常生活に取り入れましょう。そうすれば、賞味期限の長い防災食でなくてもOKですし、好きな味を見つけることもできます。
100均食品のなかでも缶詰はお買い得感あり。スーパーで売られているものより小ぶりなものも多いですが、味を試してみるにはぴったりです。
*その他備えておくと安心なグッズリスト
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水
飲料用や生活用水として1日一人3Lをキープしておくのが理想的。
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皿、コップ、箸、フォーク、スプーン
食事用に。キャンプ用のアルミやメラミン素材の皿やコップでも。
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カセットコンロ
ガスや電気が止まったときの食事作りに。
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ガスボンベ
最低でも6本以上。使用期限は製造日から7年ほどなので、定期的に使用して使えることを確認しておく。
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着火ライター
料理のときになど火をおこすために必要。
〈辻さんrecommend〉アウトドア用のメスティンが災害時の救世主に


電気やガスが止まった場合に備えて、辻さんがふだんから愛用しているのは、キャンプなどでご飯を炊くメスティン。小さいものだと1合炊きのものからあり、専用の五徳や固形燃料といっしょに100均で購入できます。固形燃料の燃焼時間は20~25分でちょうどご飯が炊ける長さ。火にかけたメスティンの上におかずになる缶詰をのせておけば、ご飯もおかずもほかほかに仕上がります。調理中は火元に注意して、室内で使う場合は必ず換気することを忘れずに。

燃料用五徳(11cm)、固形燃料25gカップ入(アルミ付)×3個入各110円、メスティン(ハンドル付)550円/DAISO
編集部取材メモ
米と水の量を半分にして、野菜や味つけした肉をアルミホイルで包んだものを浸水させた米の上にのせて火にかければ、ご飯と同時に数品のおかずも完成。(S)
–{あると便利なマルチグッズも!}–
あると便利なマルチグッズも!
ここで紹介するのは、本来防災用としては使わないものの意外な応用アイディアです。一つで2役も3役もこなしてくれるグッズの数々。備えておいて損はありません。
吸水性を利用してマルチに使える! ペットを飼っていない人にも備蓄をおすすめペットシーツ





吸水性にすぐれているので、ぞうきんとして使えるのはもちろん、簡易トイレに利用したり、おむつ代わりにも使えるペットシーツ。さらにポリ袋に吸水面が外側になるように折りたたんで入れ、たっぷり水を吸収させれば体を冷やすアイテムにも! 「好みがあるので、香りつきのものは避けておいたほうが無難ですよ」。
今回使用したシーツは約200mlの水を吸収。暑いときに太い血管がある首や手首に当てると体が効率よく冷やせます。

ペットシーツ110円/DAISO
「書く」「拭く」「包む」などに使える、紙の万能選手!懐紙



懐紙は、本来は茶会や茶道の稽古でお菓子をいただく際に使う和紙。もともとは今のようにティッシュペーパーがなかった時代、文字どおりきものの「懐」に入れてさまざまな使い方をしていたものだったんです。「皿にもなるし、余ったお菓子を包んで保存する包装紙にもなるし、ぞうきんやハンカチ代わりにも、メモとしても使えます。避難所では折り紙として利用して子どもたちの気分転換にも」。
くしゃくしゃっともむと柔らかくなるので、ティッシュ代わりにも使えますよ!

御茶席用御懐紙110円/DAISO
便利な防災グッズセットも

「避難用持ち出しバッグセット」
オレンジページ通販で
購入できます
*その他備えておくと安心なグッズリスト
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タオル(圧縮タオル)
タオルとしてはもちろん、寒いときは首に巻いてマフラー代わりに。少量の水で広がる圧縮タオルならコンパクト。
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手ぬぐい
マスクの代わりや止血にも使える。
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レジャーシート
災害時には目隠し、雨よけ、がれきの運搬など多用途で使える。
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撥水風呂敷
水をはじく風呂敷は、レインコートやストールの代わりにもなり、雨の際にぬらしたくないものを包むのに重宝する。
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レジ袋
ゴミや汚物を分別したり、物を包んで汚れ防止に。
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45Lゴミ袋
給水袋や簡易トイレ、体の保温・防寒対策に使える。
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カラビナ&ロープ
カラビナはコップや笛、万能ナイフなどをリュックにつけるときに役立つ。ロープは洗濯物を干したり、カラビナと合わせて使えば、けが人や荷物を搬送することができる。耐荷重が5㎏程度あるキャンプ用ロープが強度があって◎。
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万能ナイフなどマルチツール
はさみもしくはナイフ、マイナスドライバーがセットになったアウトドア仕様のものがベスト。はさみやナイフは料理に使ったり、布や段ボールの切断に。マイナスドライバーは防災グッズの電池を替えるときなどに使用する。
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エア枕
避難所の床は硬い場合が多いので少しでも快適に眠るためにあると便利。起きているときはクッションとしても使える。
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アルミホイル、ラップ
アルミホイルは、体の保温・防寒対策や、懐中電灯と組み合わせることで周囲を明るく照らすことができる。ラップは、止血の応急処置や包帯代わりに、また携帯電話の防水対策にも。
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古新聞
手首や足首に巻きつけて防寒に。また簡易トイレにも。3部ほど。
コラム
「いつも」と「もしも」を同じに「フェーズフリー」って知ってる?
身のまわりにあるものを、ふだんはもちろん、非常時にも役立てることができるという考え方が「フェーズフリー」です。水を運べる仕様の雨天対策用撥水バッグや、常温のまま赤ちゃんに与えることができる乳児用液体ミルクなど、「フェーズフリー」商品が最近注目されています。比較的長期保存がきく食品を多めに買っておき、食べたら買いたすサイクルを繰り返す食品備蓄法の「ローリングストック」も「フェーズフリー」のひとつ。もしものときに備えて、ぜひいつもの暮らしに「フェーズフリー」を取り入れてみてください。
取材協力/一般社団法人フェーズフリー協会
※商品の価格は、特に記載のない限り消費税込みの価格です。商品情報は2021年7月のもので、店舗によって品ぞろえが異なったり在庫がない場合があります。また廃番、仕様変更等が発生する場合もあります。
[掲載協力]Can★Do ☎03-5331-5500 https://www.cando-web.co.jp/ DAISO ☎082-420-0100 https://www.daiso-sangyo.co.jp/
監修/辻 直美(国際災害レスキューナース) 撮影/飯貝拓司 イラスト/佐藤ジュンコ 取材・文/佐々木紀子
※商品の価格は、特に記載のない限り消費税込みの価格です。商品情報は2021年7月のもので、店舗によって品ぞろえが異なったり在庫がない場合があります。 また廃番、仕様変更等が発生する場合もあります。監修/辻 直美 撮影/飯貝拓司 イラスト/佐藤ジュンコ 取材・文/佐々木紀子