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飛田和緒さんの「月に1度のさもない昼ごはん」

料理家・飛田和緒さんの「あるものでパパッと昼ごはん」【なす・夕顔・甘長唐辛子など】

2024.09.18

人気料理家・飛田和緒さん。この連載は飛田さんの飾らないお昼ごはんをのぞき見させてもらいます。使うのは20年近く住む神奈川県・三浦半島の旬の食材! さて今日はどんな「さもない」お昼が見られるのでしょうか……?

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台風、線状降水帯、遠隔降水……よく雨が降りました。最近の雨はしとしと静かに降りつづくのではなく、どっと降って災害が起きる。備えをしていても心の準備をしていても、想定外のことが起こるから、気を抜けない。そんな日々を過ごしていて少々疲れた夏の終わり。

夏の終わりの野菜をあの手この手で調理

いつもの直売所に出かけてみると、やはり野菜が少なく、農家のお母さんたちのお顔が曇りぎみでした。秋冬に向けて種をまいてあったにんじんや大根は日照り続きで種が焼けてしまった。種をまいたらどしゃぶりの雨で種が流れてしまった……。

季節が変わる野菜の端境期は、次の収穫に向けて忙しいとき。「今日からまた一からやりなおすの」とおっしゃってました。連日、米不足と野菜の高騰ばかりがニュースで流れてますしね。まぁ、そんな状況で野菜の種類が少なくても、目当てのものがなくても、わが家はあるものでごはん作りを日々していますから、あわてません。頭の中でぐるぐるとおかずをイメージして帰ってきました。


本日は夕顔、甘長唐辛子、なす、しそ、谷中しょうが。選ぶというより、これしかなかったと言ったほうがいいのかな。期待していたとうがんや秋口の枝豆は来月までお預け。そこに、先日出かけた秋田の山菜を食材に加えて調理開始。

野菜は買ってきたら冷蔵庫におさめる前に下ごしらえをします。こうしておくとすぐに調理にかかれるのと、冷蔵庫にも収めやすくなります。

夕顔は汁ものに

夕顔はとうがんに似た野菜ですが、独特の青臭い香りがある、かんぴょうの材料でも知られる野菜です。わが家ではもっぱら夕顔はお汁の具材。煮るととろりと柔らかくてくせになる味です。

秋田で買ってきた山菜も調理

写真(上左)は秋田で親しまれている山菜「さく」で、セリ科シシウド属の多年草。すでに水煮になっているので、そのまま切って使いました。名前の通りさくさくっとした歯触りでうどの香りがほんのりします。

写真(上右)「ミズ」は、秋田でもっともポピュラーな山菜。しゃきしゃきとした歯ざわりのあとに、とろっねばっとした食感が味わえる。初めて食べると「えっ! なにこれっ」て驚くくらい口の中でふたつの食感が味わえます。おひたしにしたり、炒めたり、天ぷらにしたり。

どちらの山菜もJR秋田駅にほど近い「秋田市民市場」で買ったもの。直売所同様、市場めぐりも地元ならではの野菜や魚が並んでいるから楽しいですよね。旅がまだ続くので、見るだけでしたが、さくとミズだけはなんとか宿の冷蔵庫に納め、持ち帰ってきました。

なすとしその甘みそ炒め


なすは皮をむいて5mm角くらいに切ったら油炒めして、かるく塩をし、そこに刻んだ柔らかな青じその葉を入れてさらに炒め合わせます。しそが油となじんでしっとりしたら、砂糖とみそ同量くらいで味つけ。甘くてしょっぱいご飯のお供のでき上がり。1週間くらいは保存がきくので、常備菜として便利。ご飯はもちろんのこと、卵料理に添えたり、納豆に混ぜたり、焼いた肉にのせて食べてもおいしそう。

甘長唐辛子の蒸し焼き

甘長唐辛子はへたを短く切りそろえ、蒸し焼きにし、全体に香ばしく焼けてしんなりとしたら塩をかるくふり、秋田の調味料しょっつるを数滴ふって削り節を合わせました。しょっつるは魚のハタハタでつくる魚醤。数滴でパッとうまみが広がります。

谷中しょうがの甘酢漬け

谷中しょうがは茎を短く切って1本ずつに分け、ふきんでしょうがの表面をこするようにして洗い、甘酢に漬けました。

ピリッと辛くするときにはただ酢に漬けておくだけ。カリッと漬かり、みそなどをつけて食べてもおいしい。

しそジュース

しそは袋から出して葉を摘んでいましたら、しそも終わりの時期ですから堅い葉とやわらかな葉が入り混じっていましたので、かための葉と茎でジュースを作ることに。青じその葉と茎を水と合わせて、火にかけて煮出したら、葉と茎を除き、酢と砂糖、はちみつを合わせて甘く味付けしてシロップのでき上がり。氷水と合わせてストレートで飲んだり、炭酸や焼酎割りもおすすめです。
赤じそジュースのようなきれいな色は出ませんが、炭酸水や氷水で割って飲むとすっきりさわやかな香りの飲み口になります。まだまだ暑いので、こういう涼しげな飲み物欲しいですよね。

夕顔のスープとおにぎり定食

昼ごはんのメインは夕顔で汁ものを。皮とわたと種を除いて一口大に切り、鍋に入れます。油揚げと秋田の山菜も食べやすい長さに切って入れ、煮干しだしを加えて煮ます。野菜が柔らかく煮えたら、汁の味をみて塩と薄口しょうゆで味つけしました。

ご飯は麦入り、小さなおむすびにして、なすとしその甘みそ炒めを添えました。おむすびにのせて食べるとあっという間にご飯がなくなる。そろそろ新米が出てくるころですから、古米は麦入りにしたり、雑穀を混ぜたり、玄米とミックスして炊いてせっせと食べたり、冷凍したり。

それでも炊き込みご飯や酢めしは古米のほうがうまくできますので、古米も少し残しぎみで、この時期はお米の食べ進め方を計画的にしないとね。新米だけになってしまうとチャーハンやオムライスもうまく作れなくなるから、古米も大事にしています。

谷中しょうがの甘酢漬けと、甘長唐辛子の蒸し焼きは晩酌のお供に。時間をおくとよりしっとり味を含んでおいしくなっていることでしょう。

野菜の種まきや苗の植えつけがうまくいきますようにと祈るばかり。来月は秋を感じられるといいなぁ。

飛田和緒


飛田和緒(ひだかずを)

料理家。神奈川県・三浦半島に夫・娘と住みはじめてから18年になる。海辺暮らしならではの魚料理や、地元の食材を使ったシンプルな野菜レシピが人気。繰り返し作りたくなる常備菜は、幅広い層から支持されている。お弁当や朝ごはんの記録をつづったインスタグラム(@hida_kazuo)も話題。著書に『いちばんおいしい野菜の食べ方』(小社)など。

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文・写真/飛田和緒 撮影/大森忠明(バナー、プロフィール画像)

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