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【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.55】今見たい!心温まる家族の映画

2020.04.30

こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
時間がある週末のおうち時間を楽しくしてくれる、おすすめ映画を紹介します。

自分にとって当たり前の存在は、ついついそのありがたみを忘れてしまうもの。もちろん大事に思っているけどちょっぴり面倒、それが家族というものではないでしょうか。今回は、その大切さに改めて気づかせてくれる3本をピックアップ。親子、夫婦、兄弟、etc.家族の数だけ問題や悩みがあり、また愛情の形もそれぞれ。どの作品も、ちょっぴり変で不器用だけれども、確かな家族愛に心を揺さぶられること間違いなしです。

『トウキョウソナタ』2008年

【バラバラになってしまったフツーの家族。再び美しい旋律を奏でることはできるのか?】

リストラされたことを家族に話せないお父さん、ドーナツ食べてもらえないお母さん、軍に志願兵として入隊したお兄ちゃん、そしてこっそりピアノを習い始める僕。東京に暮らす普通の家族が静かに壊れていく様子と、意外な形で絆を取り戻していく過程を描いた、カンヌ国際映画祭で受賞経験もある黒沢清監督の作品です。

今見ると、思った以上に2008年当時の状況が分かる描写がそこかしこに。中国人スタッフに取って代わられ、退職に追い込まれるお父さん(香川照之)のエピソードもそうだし、長男(小柳友)が入隊するのはアメリカ軍というブラックな設定も、9.11やイラク戦争を経た2000年代後半だったからなのかなあと思います。

こういうシリアスなテーマがありつつもどこかコメディー感があるのは、それぞれのメンバーの必死さがどこか滑稽で、人間らしいバタバタ感が出ているからかもしれません。
みんなが家族に言えない秘密を抱えているものの、スマートに隠すことが出来ない姿は格好悪く、悲劇の主人公にはさせてくれません。
「ねえードーナツ食べないー?」と空しく家族に語りかける小泉今日子さんがとってもハマり役で、今でもドーナツを見るたびにキョンキョンを思い浮かべてしまうのです。
今は立派な青年となった井之脇海さんが演じる、家族に内緒でピアノを習う小学生。タイトルにも通ずる、このピアノこそが家族の再生の象徴となり……。
ラストシーン、やられた!って感じです。

『トウキョウソナタ』
 価格:DVD¥4,700(税抜)
 発売・販売元:KADOKAWA
 ⓒ2008 Fortissimo Films/「TOKYO SONATA」製作委員会

『ありがとう、トニ・エルドマン』2016年



【超個性的な父親と笑顔を忘れた娘の、予想がつかない愛のストーリー 】

このお父さん、2つ目の人格を持っていて、それはトニ・エルドマンという名のビジネスマン……。この説明だけでどれだけ変てこな映画かが分かりますよね。仕事第一で人間味のかけらもない娘が心配でたまらず、トニ・エルドマンに扮してわざわざドイツから彼女の働くルーマニアまで行ってしまうという(笑)。エキセントリックだからこそ、その愛情の深さに胸をわし掴みにされてしまうのです。

ちょっと風変わりな父親と堅物娘のほのぼのストーリーと思いきや、真面目な話をすると、実は現代ヨーロッパの権力構造を示唆しているのもこの映画の特徴。ドイツ人がルーマニアに赴き働いているという設定は、欧州で独り勝ちしている大国が、経済的に弱者である東欧の資源をかすめ取っているという現状をヒューマンドラマに重ねて巧みに示しているのです。

この映画のハイライトは、娘イネス(ザンドラ・ヒュラー)が、父親ヴィンフリート(ペーター・ジモニシェック)の伴奏とともに、ホイットニー・ヒューストンのある曲を歌う場面。作品全体が全く予想のつかない展開なのですが、この曲を歌う場面も本当に唐突で、あれよあれよという間に涙があふれてくるのです。この映画を見た後、本家ホイットニー・ヒューストンが歌うミュージック・ビデオを見たのですが、イネスの不器用な歌声ほどの感動はありませんでした。映画自体もその後3回見たものの、やっぱり初見の衝撃に勝るものはないのです。まだこの映画を見ていない人が、うらやましくてたまりません!

『ありがとう、トニ・エルドマン』
価格:DVD 3,900円(税抜)、Blu-ray 4,800円(税抜)
発売・販売元:株式会社ハピネット
ⓒKomplizen Film, coop99, Missing Link Films 2016
 

『グッバイ、レーニン!』2003年



【激動のドイツ。壁が消えても、家族の絆は消えない。】

1989年、ベルリンの壁崩壊。教科書的に語られることの多い東西ドイツの統一を、東ドイツのとある家族を通して悲喜こもごもにコメディータッチで描いた作品です。
熱狂的な社会主義者である母親と、反体制の息子。ある日母親は心臓発作を起こし、数か月後に目覚めたとき、東ドイツという国はこの世界から無くなっていた……。

母親にショックを与えないよう東西統一をひた隠そうとする、息子アレックス(ダニエル・ブリュール)の画策がなんともコミカル。ニセの東ドイツニュース番組を作って見せたり、彼女の大好物である瓶詰のピクルスが食べたいと言われれば、もう生産されていないその瓶をゴミ箱から探し出したり。

徹底的な管理下で自由がなかったように言われる東ドイツを、西側ではなく当事者の目線から描いているのがこの作品の特徴。実際、この映画が公開された2000年代前半は、東ドイツ時代のすぐれたプロダクトやデザインを見直すオストロジー(オスト=東+ノスタルジー)と呼ばれる感情が高まったそうですよ。

『グッバイ、レーニン!』
価格:¥1,143(税抜)
発売・販売元:ギャガ
© X Filme creative pool GmbH


【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文/編集部・小松正和

次回5/8(金)は「今見たい! 〈おいしい〉が心をつなぐ食べ物映画」です。お楽しみに!

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