
2020.03.14
昭和生まれにはわかる中国生まれのダイエットアイテム。それは痩せる石鹸である。
1995年頃に流行った海藻入りの代物で、洗うだけで脂肪を溶かすとブームになった。よく考えれば、いやたいして考えなくても、洗って脂肪が溶けるなどという現象があるわけないのに、老いも若きも、なぜあんなにころっと信じてしまったのか。
「そんなことも昔はあったよね……」と笑ってはいられない。私はいまだにネットで、ダイエットグッズを買っては失敗を繰り返し続けている。
ところがダイエットグッズは、楽して痩せようとしているのがもろわかりで恥ずかしくてあまり人に相談ができないので、誰も注意してくれず、気づくと、とんでもなくしょうもないものをネットで購入していることが多い。
数年前、大減量した女性のブログで紹介されていた〈痩せるクリーム2980円〉を3個も買ってしまった。
安っぽいプラスチックのアイスクリームカップのようなものに入った無味無臭のクリームで、少し硬めのニベアのような使い心地だった。
いま思えばあれが、アフィリエイト広告への貢献の始まりだ。ビフォアアフターの写真を貼った女性が「これを毎日二の腕と太ももやふくらはぎに塗っていたらほっそりしました。よかったら試してみてくださいね♪ 2980円ですが、今なら3個で6980円です」というコピーにまんまとひっかかった。
ああばかばかしい。本当に痩せるなら、減量中のキックボクサーやオーディション前のモデルが使うに違いないし、だったらもっと話題になっているはずだ。そもそも、塗るだけで本当に痩せるならむしろ劇薬だ。あのブログ主だって、女性かどうかわかったものではない。
大きなカップは洗面所の棚に3年ほど積みっぱなしになり、引っ越しのときにゴミとなった。
おろかなアフィリエイト広告への貢献はほかにもある。これは騙されたのでもなんでもなく私が悪いのだが、またまた別のダイエット成功者(自称)のブログから「冷凍酵素玄米おにぎり」を30個注文した。
お通じにもよく、ビタミン・ミネラルも豊富。噛みごたえもあり満腹になるので、酵素玄米にはいいことしかないと謳っていた。
サプリやクリームなど原材料のわからない得体のしれないものとは違うし、と早速クリック。別のページに飛んだ。
ダイエットの強い味方、酵素玄米! と文字が踊る。
「プレーン」、「醤油」のほか、「梅しそ」や「青菜」などいろんな味と組み合わせがある。よく読まないままポチリとしたら、後日、冷凍の品物がどーんと届いた。
ブログ主が勧めていた「プレーン」を押したつもりが、「梅しそ」のほか、「カレー」「鮭」「そぼろ」「わかめ」「カツオじょうゆ」などいろんな味が3種ずつ入ったバラエティセットを誤ってポチッていた。
まあ、そのおいしいことといったらあなた!
在宅仕事なので昼も家で食べるのだが、おやつも、夜食も「ちょっと1個。今夜は鮭で」とチンしてしまう。「玄米だしヘルシーだし、痩せるからいいよね」と、酵素玄米教のような言い訳をして。 いや痩せないから。
なんだったら、いつも以上に食べちゃってっから。米は米だから。
食べる量を守らなかったせいで、その月は順調に体重が増えていた。
チョコも大好き。フェアトレードだしと言い訳してつい買ってしまうのですが持続可能な社会のためにいいのであって、特段、低カロリーというわけではないんですよね……。
おおだいら・かずえ
文筆家。長野県生まれ。’94、編集プロダクションを経てライターとして独立。著書に『東京の台所』『男と女の台所』『もう、ビニール傘は買わない。』(平凡社)、『届かなかった手紙』(角川書店)、『あの人の宝物』『紙さまの話』(誠文堂新光社)、『新米母は各駅停車でだんだん本物の母になっていく』(大和書房)など。『そこに定食屋があるかぎり(ケイクス)』など連載多数。大学生長女と映画製作業の夫と3人暮らし。現在どうやら人生初のダイエット道アガリの噂あり。今後の展開にご注目を!
www.kurashi-no-gara.com
instagram : @oodaira1027
twitter : @kazueoodaira
イラスト/いいあい
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