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ミラクルドライフルーツの悲劇【ダイエットマニア 一代記 第四回】

2020.02.15

ダイエットマニア 一代記10代で初めてダイエットを経験。以来39年間、失敗したダイエットは75種。かかった経費は少なく見積もって2百万円! そんなダイエットマニアの文筆家・大平一枝さんの〈しくじりの記録〉を週一回連載でご紹介します。

 

素敵なドライフルーツと出会う

 去年8月から続いているのが、月曜断食である。少々結果が出始めているこれについては、いつかまた。

 さてトライに合わせ、はりきってダイエットアプリを携帯にインストールした。

 「あすけん」というスグレモノで、なんと月300円のオプションを払えば、写真を撮って日記に載せるだけで、カロリーを自動計算してくれる。素敵なスープも全部一緒くたに「味噌汁」と認証してしまうのはご愛嬌。

 そのアプリ会員の日記欄で、いろんなダイエット食材が流行しているのだが、年末からみんなのイチオシが「デーツ」(なつめやし)だった。

 いわく、お通じがよくなり、ダイエットに最適。食べるだけでストンストン体重が落ちる。トルコでは、女性は1日三粒、薬代わりに食べるとよいと、言われているらしい……。

 前回も書いたが、ダイエッターは、「国立病院」とか、どこぞの医師が勧めているとか、よその国では古くからこんな言い伝えがあるとかいう、もっともらしいエビデンスに極端に弱い。

 もちろん速攻、買いに走った。

 普通のスーパーにはあまり置いてなく、近所のちょっとお高めおしゃれスーパーで、やっと見つけた。
 早速トライすると、干し柿の味に似た食感と甘さで、とても食べやすい。ちなみに日本名は「なつめやし」で、「なつめ」は全く違う果実である。

 はたして、びろうな話で恐縮だが、待望のお通じが翌朝に。簡単で美味しい。なんてミラクルなドライフルーツなんでしょうと病みつきになり、仕事の合間におやつ代わりにむしゃむしゃ。
スーパーや成城石井、自然食品店、無印良品で見つけるとまとめ買いをした。

 ピルケースに入れて持ち歩き、「小腹がすいたら外でもつまむの。暴食防止になるでしょ」と得意げに娘に言ったら、「貧乏くさい」と一蹴された。

 

まさかの激痛に倒れる

 そんな折、夫が出張でロシアへ行くという。ロシア産デーツも有名なので、爆買いの司令を出した。
 しかし、ローリエ、ローズマリー、アールグレイなど、おしゃれそうなカタカナに弱いこの男は、デーツと信じて買ってきたうちひと袋が、しっかり杏だった。ミスに慣れている私は言った。「デーツが買えただけグッジョブ」。

 ロシア産は、日本の3倍くらい粒が大きくつやつやしておいしい。これで当面デーツ探しをしなくてすむ、食べ続けたら体重なくなっちゃうかもとウキウキした。

 12月下旬。
 神楽坂の狭い劇場で観劇した翌日、急激な腹痛に襲われた。大変な勢いでお腹を下し、腹痛と胃痛で真っ青に。
「やられた!インフルだ!だからこの季節に人混み行きたくなかったんだよ」

 20年来かかりつけの近所の医院に駆け込み、訴えた。
「せ、先生インフル。絶対インフルです!」
「熱がないから違うと思いますよ」
「いえ、人混みに行って帰宅したら、急にこうなったんです。検査をしてください」
「うーん。違うと思うけどなあ。ていうか予防接種してないの?」
 まさかしてないわけないよね、という厳しい問い詰め顔。
「……あ、はい。さーせん」
 ぼかぁ信じられないよ、なぜあなたのようなたくさん対面する仕事の人が予防接種をしないのか、逆に理由を教えてほしいよ、とそこからお説教タイム。先生、続きはあらためて健康なときに聞きに来ますからと、喉まで出かける。
「先生、ひとまずどうか検査を……」
「わかりました。◯◯さん、検査キット扱うの初めてだよね、やってみる?」 と、新米看護師さんの練習台にさせられたが文句を言うまい。

 しかし案の定、結果は陰性だった。先生は聴診器を取り出した。
「ちょっと、心音聴かせてね」
シャツをぺろんとめくると、先生と二人同時に「ギャッ」。
腹どころか胸も背中も全身一面、蕁麻疹のお花畑が。

「なにこれ気づかなかった?こりゃあ食中毒かアレルギーだよ」
「あ、そういえば死ぬほど痒かったです」
はなからインフルだと思いこんでいるので、痒いのは熱のせいだと決めこみ、肉眼で確認していなかった。
「なまものとか、最近なにか変わったもの食べてない?」
「……あ、デーツ。夫がロシアから買ってきました」
「それだよ。ドライフルーツの蛋白って、アレルギーを引き起こすことがけっこうあるんだよ」

 インフルの検査までさせられて、医者もいい迷惑である。
 帰宅後検索したら、デーツアレルギーがたくさん報告されていた。
 おそらく短期間に異常な量を一気に食べたせいだ。
 過去に、アボカドを一ヶ月食べまくったら、激しい腹痛を伴うアレルギー症状が出て、以来食べられなくなった。

 そんなわけで山のようなデーツの袋を前に、途方に暮れている。ロシアのはじめてのおつかいでしくじった男の杏が、今のおやつである。

今回のお代4000円
(デーツ10袋)

 

ロシア産は他国産より大粒で甘い。私がとりつかれたように食べただけで、デーツに罪はない。

 

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プロフィール

おおだいら・かずえ
文筆家。長野県生まれ。’94、編集プロダクションを経てライターとして独立。著書に『東京の台所』『男と女の台所』『もう、ビニール傘は買わない。』(平凡社)、『届かなかった手紙』(角川書店)、『あの人の宝物』『紙さまの話』(誠文堂新光社)、『新米母は各駅停車でだんだん本物の母になっていく』(大和書房)など。『そこに定食屋があるかぎり(ケイクス)』など連載多数。大学生長女と映画製作業の夫と3人暮らし。現在どうやら人生初のダイエット道アガリの噂あり。今後の展開にご注目を!

www.kurashi-no-gara.com
instagram : @oodaira1027
twitter : @kazueoodaira

イラスト/いいあい

 

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