
『現代民俗学入門』でたどる“暮らしの中の小さな不思議”【読書の秋】

先日、夫がスニーカーを買いました。好きなブランドの最新モデルだそうで、子どものように「晩ご飯食べに行こ!この靴で行きたい!」と大はしゃぎ。
そこで私が「新品の靴は午前中におろした方がいいよ」と言うと、夫は「?」という顔。立て続けに「何でダメなの?」「夜におろすと何になるの?」と聞かれ、私も「そういえば、なんでだっけ…?」と戸惑ってしまいました。
だって、子どもの頃からそう言われてきたし。「親に言われたから」としか言いようがありません。皆さんは「新品の靴を午後におろしてはいけない」と聞いたことはありますか?もちろん夫は初耳とのこと。
そんなすったもんだの後、私は幼い頃に親から聞いたさまざまな言葉を思い出していました。
「夜に口笛を吹くと蛇が来る」
「お湯に水は足していいけど、水にお湯を足してはいけない」
「むやみに土を掘ると土の神様に怒られる」
…どれも記憶のどこかに残っている言葉たちです。調べれば由来がわかるものもあれば、いまだによくわからないものもあります。皆さんの家にも、そんな“なんとなく伝わっている風習”があるのではないでしょうか。
夫は今でも突然「なぜなぜ期」が訪れるので、「ちゃんちゃんこって何で赤いの?」などと難しいことを聞いてきます。親に「子どもの頃に言ってた土の神様って何やったん」と尋ねても「そんなこと言うたっけ?」と返され、謎は深まるばかり…。
民俗学はこんなに面白い!

そんな身近な風習の謎を、やさしく解き明かしてくれるのがこの本『現代民俗学入門』です。「民俗学って難しそう…」と思うかもしれませんが、そんな心配は無用です!
本書では、「なぜトイレにはスリッパがあるの?」「火葬場で箸渡しをするのはなぜ?」など、「聞いたことはあるけど、意外とちゃんと知らない」素朴な疑問を一つひとつ解説してくれます。
本書は「日常のなぜ」「四季のなぜ」「人生のなぜ」「都市伝説のなぜ」の4章仕立て。それぞれに必ず興味を引く謎が解説されている優れものです。図解付きでわかりやすく、「そうだったのか!」という驚きが詰まっていて、まさに“入門書”にぴったり。
子どもに聞かれたときや雑談の小ネタにも役立ちそう。身近な風習の背景には、昔からの信仰や暮らしの知恵が隠れていると気づかされる一冊です。
本書で私が特に興味をひかれたのは、「どこまでがシンセキなのか?」という項目。“親族”は民法で『六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族』と決まっています。
では法律上の定義ではなく、慣習的な概念としての“親戚”はどこまでを指すのか…。私のいとこは親族として、夫のいとこは親戚になる?などと、読んだ後にどんどん疑問がわいてきて思わず家系図を作ってしまいました。
民俗学は暮らしをつくる「みんなの学問」
「民俗学は詳しくないけど、なんか面白そう」という軽い気持ちで手に取った本でしたが、読み進めるうちに一気に引き込まれていく。そんな読書の秋にぴったりの一冊です。
お手に取られた方は、ぜひ身近な人に共有してみてください。「そんなの初めて聞いた!」「私の地元では常識!」などなど、盛り上がること間違いなしです。
- 書籍名:創元ビジュアル教養+α 現代民俗学入門 身近な風習の秘密を解き明かす
- 編著:島村恭則
- 発行所:創元社
- 定価:1,980円(税込)