54歳。認知症の母に何度も起こされる。毎日睡眠不足で辛い/駒村多恵・菅原道仁が回答
夜、認知症の母に何度も起こされます。毎日睡眠不足でつらいです。

仕事をしながら認知症の母を自宅で介護しています。最近は、夜中に起きて家の中をうろうろしたり、ひとり言が多くなり、「足が痛い」などと言って私を起こしに来たりで、ゆっくり眠れない日々が続いています。私も何かあるといけないのでいっしょに起きて、「もう寝ようね」とふとんまで連れていくのですが、なかなか寝てくれません。「今晩も母が起きてくるかも」と思うと、私まで眠りが浅くなりがちに。日中は、デイサービスのお世話になっていますが、夜中に何度も起こされるのはさすがにつらいです。どうしたらいいでしょうか。
(54歳・女性)
駒村多恵さんの回答
私が実践しているのが、《スキマ時間睡眠》。介護のプロにも相談して、解決策を探りましょう。

私は要介護5の母を在宅介護していますが、夜間は私のほうが心配で起きちゃうんです。せき込んだら背中をさすってあげたり、体位交換をしたりとこま切れ睡眠の日が続くことも。そしてある日、謎のじんましんが全身にバーッと出てしまったことがあって……。病院に行ったら、「ちゃんと寝てますか? 睡眠不足が原因かもしれません」って指摘されたんです。それでスマートウォッチで自分の睡眠スコアを測ってみたら、びっくり。なんと睡眠時間が4時間を切っていたんです!
介護をしていると、目の前のことに懸命になってしまい、自分のことは後回しにしがちです。このままでは共倒れになってしまうと、自分の睡眠を大幅に見直すことに。まずは睡眠時間を確保できるタイムスケジュールを組むことが最優先。そして少しでも時間があいたら寝る! 電車の中では意識的に目を閉じるようにしていますし、ときには壁にもたれて寝ることも(笑)。ほんの数分、数十分の〈スキマ時間睡眠〉でも体がぐっとラクになるんです。
あとは、日ごろお世話になっているかかりつけ医や認知症の専門医、「介護のプロ」のみなさんに相談しましょう。まずはケアマネジャーさん、デイサービスのかたにお母さまの日中の過ごし方を相談するのがいいでしょう。ショートステイ※1などの宿泊サービスを利用して、ゆっくり休める時間をつくるのもいいと思います。とにかく、一人で抱え込まないようにしてくださいね。
※1 ショートステイ
在宅介護が一時的にむずかしくなった際に、短期間施設に入所し、日常生活全般の介護を受けることができるサービスのこと。65歳以上で「要支援」「要介護」と認定された人が利用できる。宿泊できる施設は、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)などがある。
お悩み回答者 駒村多恵さん
フリーキャスター。1975 年、大阪府生まれ、奈良県育ち。大学卒業後、フリーキャスターとして活躍。現在、NHKの情報番組「あさイチ」のサブキャスターとして、料理コーナーを担当。実母の介護を15 年以上続けており、仕事をするかたわら、介護福祉士と介護食士の資格を取得。
菅原道仁さんの回答
「病気の症状」と割り切って対応することも必要。無理をせず、ご自身の睡眠を優先させてください。

認知症を患うと、睡眠障害や昼夜逆転の傾向が強く表れます。まず、これらは「認知症=脳の病気」によるものだということをしっかり理解するようにしましょう。認知症の症状のひとつに、「見当識障害」※2というものがあります。自分の今いる場所や時間がわからなくなるという症状で、時間の見当識に障害が起こると、夜中でも昼と勘違いして行動する原因に。また、認知症患者が夕方から夜にかけて不安や混乱が増す現象として、「夕暮れ症候群」※3というものがあり、それによって夜眠れなくなったり、眠れても浅い睡眠になったりします。
きっと相談者のかたは、夜起きてきたお母さまにていねいに対応されているのでしょう。でもこの場合、「なぜ寝てくれないのか」とあれこれ思い悩むより、「病気だからしかたがない」と割り切って考えたほうが気持ちがラクになります。お母さまの体調と家の中の安全を確認し、外出防止の施錠さえしっかりすれば、最後までお母さまにつきあう必要はありません。ご自身の睡眠を優先させてください。
同時に、お母さまの主治医にも相談を。症状によっては睡眠薬が処方されることがあり、適切に使うことで生活リズムが整って、お母さまもご自身も双方がしっかりと休めるようになります。また、昼夜逆転しないためには、日中の活動量を増やすことも大切。一度ケアマネジャーに相談し、介護プランを見直してみてはいかがでしょうか。
※2 見当識障害
日にちや時間、場所や人物などを総合的に把握する能力(=見当識)が失われ、社会生活や日常生活に支障をきたす障害のこと。認知症患者のほぼ全員にみられる症状で、アルツハイマー型認知症の場合、見当識障害は「時間」「場所」「人物」の順に能力が低下することが知られている。
※3 夕暮れ症候群
認知症患者が夕方から夜にかけて、落ち着かなくなって不安を訴えたり、混乱した言動をとったり、「ひとり歩き」をするなど通常とは異なる言動をすることをさす。夕暮れ症候群が起こるしくみは解明されていないが、体内時計の変化、感覚の低下、疲労などが原因とされている。
お悩み回答者 菅原道仁さん
脳神経外科医。1970 年生まれ。杏林大学医学部卒業後、国立国際医療研究センターに勤務。2015 年に菅原脳神経外科クリニック、19 年に菅原クリニック東京脳ドックを開院。現在は、頭痛、めまい、もの忘れ、脳の病気予防の診療を中心に行う。著書に『すぐやる脳』(サンマーク出版)など多数。
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取材・文/太田順子 イラスト/松元まり子









