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【FPが解説】がん・心疾患・脳血管疾患。3大疾病にかかるリアルな自己負担額とは?

だれもがかかる可能性のある「3大疾病」。入院・手術・通院と治療が長期化するほど、医療費の負担が気になるところです。

そんな「もしものとき」にも慌てずに備えられるよう、ファイナンシャル・プランナーの黒田尚子さんに〈リアルな自己負担額〉について聞きました。

「3大疾病」とは?

「3大疾病」とは、日本人の死因の上位を占める、「がん」「心疾患」「脳血管疾患」のこと。

これらの病気は、医療の進歩によって生存率が向上したため、治療期間が長引く傾向に。場合によっては治療が一生続くこともあり、老後資金にも影響を与えかねません。

3大疾病はだれもが罹患する可能性がある病気。実際にかかる医療費と自己負担額の目安を知っておけば、医療費として備えておくべき額や保険加入の参考になります。

「3大疾病」で入院した場合、治療費はいくらかかる?

がん約150万~300万円部位や進行度、治療法により金額は大きく異なる。
抗がん剤・放射線治療含む。
心疾患
(心筋梗塞など)
約100万~200万円カテーテル手術や入院が多く、回復後の通院や服薬継続が必要。
脳血管疾患
(脳梗塞・脳出血)
約150万~250万円手術+リハビリ費用がかさむ。後遺症が残ると介護費用も発生。

※公的保険利用前の総額。治療開始からある程度の回復・通院までを含む概算

平均治療費(上の表)は、公的医療保険制度が適用される前の金額なので、実際の窓口負担は1~3割。さらにその金額が高額療養費の自己負担額を超えた場合、申請すれば超過分が2~3カ月後に払い戻されます。

高額療養費の自己負担額の上限は一般的な年収(約370万~770万円)の人で月額8万~9万円。100万円の医療費がかかった場合、窓口負担(3割)が30万円でも、実際に負担する金額は、9万円弱に抑えられます。

公的保険の対象にならない「自己負担費用」も意外とかかる

入院・手術・診療代など保険適用になる医療費以外に、病院の医療サービスに支払うお金も。たとえば、粒子線治療などの先進医療は技術料が全額自己負担。差額ベッド代、入院時の食費の一部、診断書作成なども別途お金がかかります。通院にかかる交通費も含め、保険対象外の費用がかかることも心得ておきましょう。

公的保険対象外の費用(例)

◆差額ベッド代1日当たり 5000~2万円程度
◆先進医療の技術料部分 30万~300万円
◆交通費・付き添い費用 数千~数万円
◆衛生・日用品費(パジャマ、洗面用具、紙おむつなど)  1万~ 5万円程度

3大疾病の自己負担額の目安

高額療養費の自己負担(月額上限)→ 8万~ 9万円 /月(年収 370万~ 770万円の場合)

差額ベッド代(10日入院×約 1万円)→約 10万円

先進医療の技術料部分→30 万~ 300 万円(保険未加入なら全額負担)

雑費・交通費・日用品など→5万~ 10万円以上

=1回の大病でかかる総自己負担額 → 50万〜150万円以上

病気や治療費のことは考えるだけでも不安になるもの。けれど正しい知識と備えがあれば、もしものときも落ち着いて対処できます。

リアルな金額を知ることこそが、備えの第一歩。今日から少しずつ考えてみませんか?

※2025年6月25日時点の情報です。

教えてくれたのは…
黒田尚子さん
ファイナンシャル・プランナーCFP ® 、1級ファイナンシャルプランニング技能士、CNJ 認定乳がん体験者コーディネーター

2023年、病気の経済的問題に悩む患者や家族の支援のため「患者家計サポート協会」を設立。最新刊は『がんとお金の真実 』(セールス手帖社)。

詳細はこちら

『オレンジページ』2025年8月2号より)

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監修/黒田尚子 イラスト/沼田光太郎 原文/太田順子 文/池田なるみ