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柚木麻子の「拝啓、小林カツ代様」~令和のジュリー&ジュリア~
人気作家・柚木麻子さんが昭和の料理研究家・小林カツ代さんを語る食エッセイ。映画「ジュリー&ジュリア」ばりに往年のカツ代さんレシピを作り、奮闘します。コロナ禍ですっかり料理嫌いになった柚木さんが、辿り着く先はーー?

柚木麻子連載!ジェットコースター寒暖差でバテた身体を一気に秋にする小林カツ代の葱汁とかぼちゃパイ

柚木麻子の「拝啓、小林カツ代様」~令和のジュリー&ジュリア~

第42回  柚木麻子連載!ジェットコースター寒暖差でバテた身体を一気に秋にする小林カツ代の葱汁とかぼちゃパイ

季節の変わり目はいつもあんまり元気がない方だが、今年の9月のおわりから10月の初旬までのジェットコースターのような寒暖差は、こういった体質ではない人でもかなりきつかったのではないだろうか。
突然の冷たい雨で革靴の中までびしょ濡れになったかと思えば、8月に逆戻りしたような日差しで夏用の日焼け止めはどこにやったか不安になり、そうかと思うと羽織ものなしで外出して風邪を引き、寝る時はどんな布団にくるまっても、しっくりくる厚みのものがない。
もはや寒いのか暑いのもよくわからない。疲れたなあと思っていたら発熱してしまい、大量の発汗とともにすぐ下がったのだが、かえってすっきりしてしまった。しかし、その分、身体の節々が痛い。
こんな時は旬の野菜をたくさん食べて、一気に身体を秋にしてしまうに限る。 手始めにKATSUYOレシピから「ほかほか葱汁」を見つけ出し、1本分のねぎを生姜、にんにくとよく炒め、だし汁や梅干しとことこと煮た。
それだけなのに、さすがカツ代さんで、汗がワッと出て、血が巡り出し、シンプルながら香ばしく飽きない味で、合わせる料理を選ばない。
これでパワーを得て、いつも通り、カツ代さんのお赤飯や筑前煮などを作って意欲を取り戻し、ハロウィン前なので、かぼちゃパイを焼くことにした。かぼちゃパイであり、パンプキンパイではない。野菜の代表的なイメージのじゃがいもよりも、かぼちゃ料理のレシピ数が断然多いくらい、カツ代さんは和風にも洋風にもおかずにも甘味にもなるかぼちゃにいつも熱心に向き合っている。
カツ代さんのかぼちゃパイは、パイ生地からしっかり手作りし、生のかぼちゃを煮てつぶして卵と牛乳、たっぷりのシナモンとナツメグをくわえる。市販のパンプキンパイが物足りなく思えるくらい、しっかりと秋野菜の色と食感が出ていて、ほのかに身体があたたまり、甘いのに食べ応えがある。
料理は好きだが、別になんでも買えばいいのではと思っている。
しかし、パンプキンパイ否かぼちゃパイだけは今日から手作り派だ。生姜たっぷりのミルクティーに合わせたら、深く満足し、どっしりと腹が座った。ここ最近の心許なさが飛んでいく。
私はいつもカツ代さんの確信と自信に満ちた、あの言動のファンなのだが、もしかすると旬の素材を誰よりも早く調理し、しっかり食べていたのではないか、と今急にひらめいている。

今回紹介したカツ代さんレシピ

※「KATSUYOレシピ」より一部引用

「かぼちゃに合うスパイス使いが絶妙な、お手軽パイ」

『かぼちゃパイ』のレシピ

材料と作り方(8人分)
【パイ生地】
バター……80g
砂糖……大さじ2
卵黄……1個
小麦粉……150g
水……大さじ1~2
【パイの中身】
かぼちゃ……300g
砂糖……80g
牛乳……150ml
卵……2個
小麦粉……大さじ1
シナモン……小さじ1
ナツメグ……小さじ1/2
塩……ひとつまみ

作り方
(1)パイ生地を作る

バターを室温でやわらかくして、クリーム状に練り混ぜ、砂糖を加えてさらによく混ぜる。
(2)卵黄を加えてなめらかに混ぜ、そこに小麦粉をふるい入れる。指でつまむ様に混ぜ、全体をまとめていく。
(3)冷蔵庫で休ませる
耳たぶよりちょっとやわらかめになるように、分量の水を少しずつ加えて生地をまとめ、ビニール袋に入れて冷蔵庫で少し休ませる。
(4)中身を作る
かぼちゃは種と皮を除き、適当な大きさに切って鍋に入れる。ヒタヒタの水を加え、蓋をして竹串がスッと通るくらいやわらかく茹でる。 (5)茹で汁が残っていたらきり、熱いうちにマッシャーでつぶして、砂糖を混ぜる。
(6)⑤に牛乳を少しずつ加えながらマッシャーで丁寧につぶし、溶き卵、小麦粉、シナモン、ナツメグ、塩を次々入れて混ぜ合わせる。
(7)オーブン準備
タルト型にバターを薄く塗っておく。
オーブンを200度に温めておく。
(8)生地を成形
打ち粉をふった台に③の生地をおいて、生地にも打ち粉をふってから、めん棒で型よりひと回り大きくなる様に3~4mmの厚さに伸ばし、タルト型にのせる。
指で押さえながら、型に生地を敷き込む。
(9)はみ出した生地は、型の上からめん棒を転がして落とす。
(10)オーブンで焼く
天板に型をおき、パイの中身を流し入れる。
200度のオーブンに入れて10分焼き、180度に下げて25~30分焼く。
(11)竹串を刺してみて何もつかなければ焼き上がり。粗熱がとれたら、型からはずして冷まし、8等分に切る。


point
♪ミキサーがあれば、パイの中身の材料をすべて入れて、ガガガ~っと!これでOKなんです。
♪材料は、直径20cmくらいのタルト型1台分。
次回は11/28(土)更新! お楽しみに。
柚木麻子(ゆずき あさこ)
2008年「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞し、10年に同作を含む『終点のあの子』でデビュー。15年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞を受賞。著書に『私にふさわしいホテル』『ランチのアッコちゃん』『伊藤くん A to E』『マジカルグランマ』『BUTTER』『らんたん』『とりあえずお湯わかせ』『あいにくあんたのためじゃない』など多数。
毎月第4土曜日更新・過去の連載はこちら

文・写真/柚木麻子 イラスト/澁谷玲子 プロフィール写真/イナガキジュンヤ  取材協力/(株)小林カツ代キッチンスタジオ、本田明子

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