48歳。フルタイム勤務、介護、子育てが重なり限界を感じてます…/おおたわ史絵さんがお答え
仕事と在宅介護、
育児との両立がむずかしく、
転職を考えています。

実母を在宅介護しながら、フルタイムで働いています。子どもは2人います。介護休暇やフレックスなどを駆使しながら働いていますが、仕事と介護、子育ての両立に限界を感じています。パートや派遣など、ある程度時間の融通がきく仕事に転職しようかと考えていますが、どう思われますか? 収入は減りますが、プロにすべてまかせればそのぶん出費も増えるわけで……。夫は子育てには協力的ですが、母の介護まではお願いできず。姉は他県に暮らしています。
(48歳・女性)
おおたわ史絵さんの回答
自分の人生にとって何が大事なのか、「優先順位」を考えてみましょう。


お悩み回答者
おおたわ史絵さん
大事なのは、「人生の優先順位をどう決めるか」ということです。現状、ご主人やごきょうだいの手を借りることができないのであれば、お金を出して介護のプロにお願いするか、ご自身が仕事を減らすかのどちらかになるわけですよね。収入が減ることや、これまでのキャリアを捨てることにどうしても抵抗があるなら、お金をかけてもプロにお願いするべきですし、「収入やキャリアよりも、時間のほうが大事」と思うのであれば、正規雇用にこだわらず、勤務時間を柔軟に調整できる職場に転職してもいいと思います。
介護離職※1の問題もありますが、介護と仕事、育児の両立※2のしかたは、人それぞれです。そのかたの価値観によるところが大きく、正解はありません。医師としてこのような相談を受けた場合、まずは、「仕事は辞めずに、介護施設への入居やデイサービス、訪問介護などを検討してみてはいかがでしょうか」と説明します。介護をプロにまかせることに罪悪感を抱くかたもいるので。それでも、「自宅で介護したい」「できるだけ自分で介護したい」というかたはたくさんいます。それはもうその人の価値観、生き方なんですよね。
絶対に避けていただきたいのが、「自分が頑張ればなんとかなる」とこのまま一人で抱え込むこと。ある程度、気持ちにゆとりがないと、お母さまやお子さんに強く当たってしまいがちです。頑張ることが必ずしも家族のためにならないことも覚えておいてください。
※1 介護離職
介護を理由に会社を退職すること。厚生労働省の「令和4年就業構造基本調査」によると、過去1年間に介護を理由に離職をした人は約11万人。2023年11月に、岸田首相は仕事と介護の両立支援制度を盛り込んだ法案を24年の通常国会に提出するよう指示した。
※2 介護と仕事、育児の両立
晩婚化や高齢出産の増加などにより、育児と介護のタイミングが重なる「ダブルケア」の世帯が増加中。平成28年に公表された内閣府の調査によると、未就学児の育児と介護を同時に行っているダブルケアラーは約25万人と推計。うち約17万人は女性。
おおたわ史絵さん
総合内科専門医
法務省矯正局医師。大学病院、救命救急センター、地域開業医を経て現職。少年院、刑務所受刑者の診療に携わる、日本でも数少ない〈プリズン・ドクター〉。情報番組のコメンテーターとしても活躍中。近著は『プリズン・ドクター』(新潮新書)。