30年以上の時を経て完成。料理編集者・宮川の「特製ミートソース」レシピ


入社25年(つまり四半世紀)以上のベテラン料理編集者4人が「うちごはん」について気ままに、赤裸々に語るリレー連載。個人的好み全開のオリジナルレシピのおまけつき。

vol.19
入社28年目〈人が喜ぶため〉に料理をしている宮川の場合
『30年以上の時を経て完成・特製ミートソース』
おうちごはんはもっぱらパスタの私。日ごろはパパッとできる、ごく簡単なものばかりですが、じっくりと向き合う日もあります。それは「特製ミートソース」を仕込む日。もう何年も作り続けているこのソース、三つの時代での出会いやきっかけがあって、今の味に至ります。
①一九八〇年代
高校生のときに食べた味が、今のミートソースのベース。当時住んでいたオーストラリアで参加した学校のキャンプで、先生が作った「スパゲリィ アンッ ミーッソース(と発音します)」でした。調理中に漂う香りがあまりに良くて、「ピザ屋さんみたいな、いいにおい! これは何?」と尋ねたところ、先生が得意げな顔で、「これはボク自慢のレシピさ。オレガノというハーブを使うのが秘訣なんだ」と教えてくれました。
帰宅して、さっそく実践。ひと振りするだけでたちまち「イタリアン」になり、これを食べた家族も「お店みたいだね」と大絶賛。以来、欠かせない材料のひとつとなりました。
②一九九〇年代
オレンジページに入社し、料理のプロフェッショナルの方々から、たくさんのことを学ばせていただきましたが(本当に幸せなことです)、ミートソースもその一つ。パスタ特集の企画で、シェフに「材料にドライトマトを加えるのがポイント。日本の乾物と同じで、だしが出るんだよ」と教わり、なるほど!とさっそく実践。さらに、カレーにさまざまなかくし味を入れる感覚で、フレッシュトマトに、トマトピューレ、ケチャップなどもプラス。いろいろな形態のトマトの相乗効果でしょうか、なんとも奥深い味になり、以来「トマトの複数使い」をするようになりました。
③二〇〇〇年代
味の決め手として近年加わったもの、それは「塩糀」。糀のレシピブック「 糀屋本店の幸せごはんレシピ」を担当したことがきっかけでした。メニューの選定、撮影と進めながら、和風のメニューだけではない、塩糀の「秘めたパワー」に、目からうろこの日々! 教えていただいたトマトソースのレシピもそのひとつで、トマトが持つうま味がぐぐぐっと引き出され、数時間煮込んだように味に深みが出るから、本当に不思議です。この技を、ミートソースに応用できないかと、さっそく実践。まろやかで奥深いおいしさに加え、肉が柔らかく仕上がる効果もあって◎!
三十年以上の時を経て完成した「特製ミートソース」。いろいろな思い出とともに、これからも作り続けていきたいと思います。
330年以上の歴史があり、「塩糀」の魅力が世界中に広まるきっかけとなった、「糀屋本店」さんの塩糀。ミートソースを始め、スープやドレッシングなど、洋風のメニューにも大活躍!
ミートソースは実家へも定期的に「納品」していて、なくなるころに母から注文が入るシステム。ふだんのパスタが「手抜き」な分、じっくり、ていねいに作って、お届けしています。
オレぺの中の人のうちごはんレシピ
『特製ミートソース』

材料(作りやすい分量)
- 合いびき肉(粗びきのもの) 300g
- 玉ねぎ 2個
- セロリの茎 1/2本
- にんじん 1/2本
- にんにく 2かけ
- トマト 2個
- カットトマト(缶詰400g入り) 1缶
- ドライトマト 2個分
- トマトピューレ 大さじ1
- トマトケチャップ 大さじ2
- オレガノ 適宜
- ローリエ 2枚
- オリーブオイル 大さじ2
- 赤ワイン 1/3カップ
- 塩糀 大さじ3
- 塩 こしょう
作り方
- トマトはへたを取り、ざく切りにする。ドライトマトは水に浸して戻し、粗いみじん切りにする(戻し汁はとっておく)。玉ねぎ、セロリ、にんじん、にんにくはみじん切りにする。
- フライパンにオリーブオイルを中火で熱し、玉ねぎ、セロリ、にんじん、にんにくを入れて弱めの中火にし、しんなりとするまでじっくりと炒める。ひき肉を加え、塩、こしょう各適宜をふり、ほぐしながら炒め合わせる。パラパラになったら赤ワインを回し入れ、ひと煮立ちさせる。
- 2を厚手の鍋に移し、トマト、カットトマト、ドライトマトと戻し汁を加え、水200mlを注ぎ入れる。煮立ったらオレガノ、ローリエを加えて弱火にし、ふたを少しずらしてのせ、ときどき混ぜながら20分ほど煮る。
- 塩糀を加え、とろりとするまでさらに10分ほど煮る。味をみて、塩、こしょう各少々で整える。
これでミートースの完成。多めにでき上るので、小分けにして冷凍保存しています。いただくときに、ミートソース適宜をフライパンに入れて中火にかけ、ゆでたスパゲティを加えてからめればOK。器に盛り、粉チーズをたっぷりとふります。ほかにも、ショートパスタと合わせ、ピザ用チーズをふってグラタン風に、ご飯にかけてタコライス風に、マッシュポテトを合わせてシェパーズパイ風に、といろいろ楽しめます。

- Editor No.03 宮川京子(通称・ミヤカワさん)
- 神奈川県横浜市出身。大学卒業後、1992年に「ただただ料理が好き」という志望動機でオレンジページに入社。出版社の業務形態などをまったく知らず「オレンジページに入れば、自分で料理を作って写真を撮ってレシピが書ける」と思い込み、後にそうではない事実を知る。戸惑いのスタートから早28年。料理本担当一筋の日々で、常に頭のなかは食べることと作ることで埋め尽くされている。
宮川のうちごはんレシピ、
こちらにもあります。
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