給食のシーンは、事前に市原さん自身がどんな動きや表情にして食べていくか考え、撮影当日、段取りで確認し、ナレーションを録音してから、それに合わせた演技をして撮影しているのだそう。

「まかせてもらえることは、役者冥利に尽きますが、毎日必死です。一般的な芝居ならこうするけれど、甘利田は常人じゃないから、明日はどんな演技にしようか……と考えているうちに気がついたら朝という日々が2カ月。それくらい濃密で、でも、演じることを心から楽しめる現場でした」

また、今回は「給食は絶対に完食するべき。食べるときは私語厳禁」という考えを持つ町長との対立も描かれています。

「町長は絶対的な悪ではなく、彼なりの正義がある。栄養をつけてほしい、郷土料理のよさを伝えたいなどの気持ちはとてもよくわかるんです。ただ、いちばん大事にしたいのは、食べる側の子どもたちの気持ち。給食に限らず、子どもたちのための社会でありたいと思わされる話でもあるんです」

甘利田先生が伝えるのは、次世代を担う子どもたちと対等に向き合う真摯な姿勢でもあるのです。

「好きなものを好きと言い、子ども相手にも自身の負けをきちんと認め、常に物事の本質を見極めている。そんな甘利田の存在は、僕にとってもあこがれです。ぜひ、映画館でご覧になってください」

市原隼人さんイチオシ！

バイクに乗る時間

愛車で走る時間は何物にも代えがたい

昔から大事にしているのが、バイク「カワサキ・Z1」で出かける時間だという市原さん。「北海道の宗谷岬や神戸まで行って帰ってきたり。バイクに乗っていると、香りや温度、湿度とかすべてを生身の体で感じられます。葛藤や壁にぶち当たることがあるなかで、ネガティブな感情を風の中に置いてこられる気がする。バイクと一体化できる瞬間があって、僕にとって大事な時間なんです。いつかこのバイクでアメリカを横断したいと思っています」。

これに注目！

「おいしい給食　Road to イカメシ」

© 2024「おいしい給食」製作委員会

全国ロードショー公開中
出演：市原隼人、大原優乃、田澤泰粋ほか

2019 年より放送されているテレビドラマ「おいしい給食」の劇場版第3弾。1980年代の中学校を舞台に、給食マニアの教師・甘利田幸男と生徒・粒来ケン（つぶらいけん）とのアレンジバトルを中心に、彼らを取り巻く人間模様を描く。〈給食は残さずいただく〉という町長との対決あり、カレーをめぐる劇での生徒との交流あり。給食でイカメシを食べたいという甘利田の夢はかなうのか、乞うご期待。

市原隼人さんからの直筆メッセージ

（『オレンジページ』2024年6月17日号より）

撮影／鈴木康史　取材・文／晴山香織　ヘア&メイク／大森裕行 （VANITES）　スタイリング／小野和美

·2024年5月現在の情報です。