「生と死」、むずかしいテーマもやわらかく伝える

今回、こどもたちをいちばん連れていきたかったのが「生きること/死ぬこと」についての本を集めたお部屋。1階の奥、円筒形のその部屋には天窓があり、やさしい光が降り注ぎ、壁には「おれは、100万回もしんだんだぜ!」という『100万回生きたねこ』(講談社)の一節が掲げられています。館内には、本の一節を抜き出したこんな「言葉の彫刻」があちこちに。
少し前、大おばあちゃんを亡くし、「しんだらどうなるの?」「しなないひとっている?」などと命についての疑問でいっぱいの息子。
戦争についての本、地獄についての本など手にとり、そしてとうとう安藤さんの言う〈自分だけの一冊〉に出会いました!

それがこの本、『寿命図鑑』(いろは出版)!
「おおかみって12ねんでしんじゃうんだって!」「すずめは1.5ねんだって!」と、さまざまな動物の寿命が書いてある本か、と思っていたら、「ママ、トイレットペーパーのじゅみょうってしってた?」「ちきゅうもしぬらしい!」と、物や天体の寿命までかわいいイラストとともに紹介されています。

すべてのものには限りがあること、だから大切にしなければいけないことを自然と学べる素敵な本でした。国ごとの人の平均寿命も紹介されていて、貧困や戦争、格差などについても考えるきっかけになりそうです。
息子は「どうすればしなないの?」とパパを質問攻めしていました。
ちなみに、館内の本は閲覧のみで貸し出しは行っていません。お天気のよい日は、中之島公園に持ち出して外でも読むことができるそう。
プロジェクションマッピングで物語の世界へ

『寿命図鑑』にくぎづけのお兄ちゃんをよそに、妹が向かったのは井戸の底のような不思議なお部屋。ここは休憩室で、物語の世界に浸れる素敵な空間です。プロジェクションマッピングによって『星の王子さま』や『魔女の宅急便』の一場面が浮かび上がります。
それから二階へ戻り、ハロウィンイベントに参加(取材は10月。現在は終了)。

「もりびと」と呼ばれる館内スタッフに「トリックオアトリート!」と言うと、シールをもらえたり、おばけのフォトプロップスで写真を撮ったりできました。

これまでにも絵本作家さんのトークショーや、科学実験ショー、仕かけ絵本ワークショップなどさまざまなイベントが開かれているそうです。
〈自分だけの一冊〉に出会う

さあ、いよいよ大階段を上って最上階へ!


川に面した席や、本棚の中の席など、いろんな場所で自由に本を読めます。
『こどもオレンジページ』としてはずせないのが、「食べる」をテーマとしたコーナー。

「できた できた ほかほかの ほっとけーき」という『しろくまちゃんのほっとけーき』(こぐま社)の一節が飾られ、パンに大根、おでんにみそ汁とさまざまな食の本が並んでいます。

『おすしのずかん』(白泉社)や『へんなおでん』(グラフィック社)をめくってはにっこにこの2人。食べ物の本って元気が出ますよね。
そして、「きれいなもの」がテーマの本棚で娘が〈自分だけの一冊〉に出会いました。
それは……『ファッションマジック』(白泉社)!

ページが上中下の3分割になっていて、ぱたぱたとめくるたびにヒグチユウコさんの描くかわいい猫たちの着せ替えができるというもの。
文字がない絵本なので、小さい子でも楽しめます。

「ねこちゃん、おズボンはくの」「おリボンのあたまにするー」と、熱中しています。
帰宅後、この効果か突然自分でズボンをはいたのにはびっくりしました。
そして、ここで11:30の回の終了アナウンスが。最後にミュージアムショップで「青リンゴアメ」を買って、1時間半の濃密な本の森での探検を終えました。

ちなみにこの「青リンゴアメ」(300円)を作るのは、あの「パインアメ」で有名なパイン株式会社。大阪創業とのことで、コラボしているそう。
【まとめ】こどもと本を仲よくする4つのヒント
行く前は、「1時間半も図書施設にいられるかな……」と心配していましたが、終わってみれば親も子も「もっといたい!」の大合唱。最後に、「こども本の森 中之島」で見つけたこどもと本を仲よくするヒントをお伝えします。
- 本の表紙を見せて並べる
- 対象年齢を分けずにきょうだいの本を1つの場所に
- 本棚のそばに落ち着ける椅子やクッションを
- 「この子にはこの本」と押しつけず、こどもの直感を見守る
〈自分だけの一冊〉と出会える「こども本の森 中之島」、機会があればぜひ行ってみてくださいね。
こども本の森 中之島
- 大阪市北区中之島1-1-28
- 京阪中之島線「なにわ橋駅」3番出口すぐ
- 入館料 無料
事前予約の方法、休館日など詳しくはこちらから
こども本の森 中之島 公式サイト