陶器の街・益子町生まれ。幼いころから料理に親しみ、実家の台所や食卓にはつねに「発酵食品」があった……。そんな井上咲楽が、自家製の調味料や、お気に入りの発酵食品などを紹介していく「発酵ごはん」連載です! はつらつとした彼女のすこやかさの秘訣がここにアリ!?
井上咲楽の山形旅!疲れをいやす銀山温泉の地酒といちじくの絶品つまみとしいたけ占い

週頭の心の支え・しいたけ占い
9月はバタバタしていた。地方仕事も多くこれを書いている9月中旬時点で、沖縄、名古屋、大阪、栃木、茨城、とせわしなく動いている。そして来週はベルリンマラソンの仕事でドイツのベルリンへ行く予定だ。寝る時間がないわけではないけれど、先の予定を考えると目が回りそうで休んだ気がしない。ふだんの収録に加えて、マラソンに趣味の選挙イベントにレシピ仕事に、頭に置いておかなければいけないことがたくさんあって、あと少しであふれてしまうかもしれないという疲れの予感がして雲行きが怪しい。
それでも9月は頑張りたいところで、毎週恒例のしいたけ占いを読む。しいたけさんの言葉は寄り添って、もうひと踏ん張りさせてくれるのでいつも心の支えになっているのだ。
今週も「しいたけさん、あなたじつは、私のことをこっそり見ているんでしょう?」と涙が出そうになるようなしいたけパイセンの言葉が並ぶ。なかでも「何かを食べたりするときにひと口だけでも味わって、うんおいしいとつぶやく時間を作ってあげて」という趣旨のことが書いてあり、グッときた。そうか、今月の私はずっと頭がいっぱいで、ごはんを食べていても考えごとばかり。ちゃんと味わっていなかったかもしれない。まとまって休まなくてもこういう少しの「ホッ」の積み重ねで気持ちが休まるのかも。そういえば今週は自炊が少なかったことを思い出し、次の山形ロケではおいしい日本酒を買うと決めた。山形も仕事ではあるが、「山形でおいしい日本酒を見つけるんだ!」という一つの目標があることでより楽しみになった気がする。

銀山温泉の温泉街で出会った、山形の地酒
2日間でたくさんの場所をめぐり、最終日の夕方に銀山温泉の温泉街をぶらぶらしていると奥に酒屋さんが見えた。これだ! ついに日本酒をここで見つけるんだ! とまだ入ってもいないのに金魂を掘り当てたかのように気持ちが高まり、店内へ。店に入ると視界に備蓄米を担いだほんわかしたおじさんの絵が目に入る。か、かわいい。多分これを買ってしまうだろうな私は、と思いつつ、一応店主におすすめをきくと、店主もそのおじさんの日本酒をすすめてくれた。
小嶋総本店の「山川光男」という日本酒で、抑えきれない備蓄米への興味で作った日本酒らしい。備蓄米で作った日本酒は出回ることが少ないらしく、その希少さを聞いてよりほれてしまう。もう一つ、店主おすすめのヨーグルト酒「ドロ沼ヨーコ」をすすめられるままに購入し、店主と日本酒トークが始まった。出身をきかれ、栃木と伝えると「栃木だったら仙禽とか、鳳凰美田とか、飲んだことありますよ。」と言ってもらいすごくうれしかった。地元のお酒を知ってもらっているということはこんなにうれしいことなのか。日本酒は詳しくないけれど好きで、これからはもっと銘柄を見てみよう。店主とも楽しい話をできて、日本酒も買えた。目標を達成して大満足で東京へ。

山形ではたくさん食べた。いも煮、だし、山形牛、つや姫も2日間で3合くらい食べた気がする。欲張ったからか、胃がちょっとお疲れぎみなので山形から帰った夜は軽めに、少しのおつまみと買ったばかりの日本酒を開けることに決めた。せっかく買った日本酒に合わせるおつまみを作ってみよう。
秋といえば、いも、栗、さんま、梨、ぶどう、いろいろあって考えるだけでよだれがたれるが、なんせ私は疲れている。気合を入れすぎたら疲れてしまうに違いないので「秋の食材を使った火を使わない料理」縛りにするとしよう。山形帰り、果物コーナーに並ぶいちじくを見て、これをメイン食材にすると決め、日本酒に合うように濃厚さが欲しくてクリームチーズ。さらに臭み、くせが欲しくて、酒かすを購入し帰宅。
家に帰ったらとにかく座らないでやるべきことをこなすのが私流で、荷解きをしてお風呂に入り、明日の準備まで終わったところで、おつまみを作る。まずクリームチーズ40gと酒かす10gを混ぜクラッカーにのせ、裂いたいちじくをのせて、お好みでみりんをひとたらし。おつまみの準備が整ったところで、まずはお疲れの自分に乾杯! 毎日本当におつかれさまだ。最近自分は、疲れた気がするけど、これは疲れていいのだろうか? ちゃんと疲れていいくらいに働いただろうか? と、疲れを認めてもらえる言い訳をいろいろ考えている。でも今日はちゃんと疲れたと認めるとする。日本酒を飲んでいいでしょう!

ぽんっと封を開けると、バナナの香りがいっぱいに広がり、一気に気がゆるんだ。フルーティながら奥にはしっかりとしたうまみが立っている。
それからおつまみも。いちじくのみずみずしさ、チーズ酒かすのほどよいくせとクリーミーさが複雑にからまったところで日本酒をひと口。合う、とても合う。これがしいたけさんが言っていた、味わうということなのだろうか。一杯だけ日本酒を楽しみ、片づけをして眠った。今月を乗り切って、来月は少しだけゆっくりしたいと思っていたけれど、今日のような休み方を知っていればもう少し頑張れそうだ。頑張れ自分! 休み方を学びながら、行けるところまで行ってみたらいい。



PROFILE
井上咲楽(いのうえ・さくら)
1999年、栃木県生まれ。2015年「第40回ホリプロタレントスカウトキャラバン」を経て芸能界入り。「おはスタ」「新婚さんいらっしゃい!」など、バラエティで見せる明るいキャラで人気を博す。NHK大河ドラマ「光る君へ」に出演。2024年5月『井上咲楽のおまもりごはん』、11月『じんせい手帖』、2025年10月『井上咲楽の発酵、きょう何作る?何食べる?』を出版。「発酵食品ソムリエ」資格、「食品衛生責任者」の資格も持つ。

文・写真/井上咲楽 バナー・プロフィール画像/大森忠明
オレンジページnetを追加してお気に入りに登録すると、Google検索でオレペnetの記事が表示されやすくなります!












