【わたし史上最高】の声多数!調理室池田の大人気メニュー「タルトタタン」レシピを特別公開

もとはといえば失敗から生まれたというタルトタタン。私もレシピが確立するまで長い道のりで苦手としていた菓子でした。
とにかく焼き時間がかかって、到底メニュー化は無理と思っていたのですが、あるときミキサーが壊れたことがきっかけで、本腰を入れて取り組むことに。以来、「わたし史上最高賞!」なんてうれしいお声がけをたくさんいただく人気メニューとなりました。

きっとこのレシピをどんなによく読んでも、本当にこれで合っているのか、半信半疑、不安に思うことでしょう。
むずかしい技術は必要なく、切って焼くだけの簡単なレシピですが、重要なのは気長に待つことです。私もこれがなかなかできなくて、成功を手前に失敗したと思い込んでいました。
ポイントはしっかり焼くことと、よく冷やすこと。これに尽きます。まずはレシピの全体像を解説します。

焼いて、冷やして、温めて、冷やす
タルトタタンとはどういうお菓子なのかというと、カラメルとよくよく焼いたりんごの焼き汁のペクチンにより、たっぷりのりんごを固めたものです。
焼き上がったらしっかりさまし、冷蔵庫で完全に冷やし固めることで切り分けられるのですが、冷やし固めただけだと型にベッタリとくっついて抜けません。しっかり冷やし固めたら表面だけを温めて型から抜く、切る前にもう一度、くずれないように冷やし固めてから切る。
焼き時間
山ほどのりんご、砂糖、ほんの少しのバターというシンプルな材料ながらも、印象深い味わいなのは、しっかりと色づけしたカラメルと焼き時間にあります。
店のオーブンでも1時間半以上かけて焼き、いかにりんごの水分を煮つめるかがポイントです。
焼いて冷やして温めて冷やす、となんともややこしいのですが、気長に着実にこれらの工程を進めます。

りんごを入れる前に、強めに色づけたカラメルを型に流し込み、バターを置きます。

【焼く前】
りんごを盛り盛りに盛ってグラニュー糖をかけます。


【1時間ほど焼いた状態】
焼き色がつきはじめています。りんごのかさはだいぶ減ったものの、焼き汁がじゃばじゃばとたっぷり流れ出てきます。まだまだ焼かなければなりません。

【1時間半ほど焼いた状態】
全体的に焼き色が強くなってきました。りんごを押さえて傾けると、まだサラリとした煮汁がたっぷり流れてきますが、だいぶ煮つまってきています。もう少し焼きます。


【1時間45分ほど焼いた状態】
傾けたときに煮汁に粘度がつき、ゆっくりと流れるくらいまで焼き詰めます。
焼き時間はこんなに長くていいのか、と迷うかもしれませんが、焼き時間が短く、水分が多く残っていると型から抜いたときにバラバラになります。時間にかかわらず状態に合わせてしっかり焼きつめてください。
ひっくり返し方とタルト生地の話に続きます。
–{ひっくり返し方とタルト生地}–
ひっくり返す
焼いたら粗熱を取って3時間以上冷蔵庫に入れます。りんごと砂糖とバターだけでどうして固まって切り分けられるのかというと、煮つまった焼き汁にはペクチンの粘性があるから。
冷やすことによってしっかりと全体が固まるのですが、冷やしただけだと型から抜けません。型から抜く前に湯せんにかけて表面だけを温めてゆるませます。


傾けて全体がゆるっとすべるようになったら湯せんから引き上げます。



あらかじめ焼いておいたタルト生地をかぶせ、バットを当ててひっくり返す。


かるくたたいて1分ほど待ってから型をはずします。(重力で自然と落ちてきます)。
少しくらいくずれても大丈夫。へらなどで形を整えて冷蔵庫で1時間ほど冷やします。
店では待ちどおしくされているお客さまもたくさん! 時間がないときは冷凍庫で15分ほど急冷します。

しっかりと冷やし固めた状態。でき上がりです!
タルト生地
土台となる生地は、以前連載で紹介した「いちじくのタルト」の生地を使います。
タルト生地1回の分量でタルトタタンの土台が2台分でき、ひとまとまりにした生地を半分にして使います。残った半分はラップに包み、保存袋に入れておけば1カ月ほど保存可能です。
タタン本体の焼き時間、冷やし時間がたっぷりあるので、その間に作ってください。
次のページでは詳しいレシピを紹介します。
–{タルトタタンのレシピ}–
『タルトタタン』のレシピ
材料(口径20cmのマンケ型1台分)
りんご(紅玉)……約1.5kg
グラニュー糖(カラメル用)……80g
グラニュー糖(りんご用)……200g
バター(食塩不使用)……15g
【タルト生地】 (作りやすい分量)
バター(食塩不使用)……75g
薄力粉……75g
強力粉……75g
〈卵液〉
卵黄……1個分(約17g)
水……大さじ1
→卵黄に水を加えて32~34gになるようにする
グラニュー糖……5g
塩…ひとつまみ
作り方
(1)カラメルを作る

鍋をさっとぬらし、カラメル用のグラニュー糖を入れて火にかける。鍋肌から茶色く色がついてきたら、色が均一になるように、鍋を傾けたり揺らす。

濃い茶色になったら火を止め、型に流し込み、全体にいきわたるよう回し傾ける。

粗熱が取れたら、小さく切ったバターを広げ入れる。
(2)りんごを型に詰める

オーブンを200℃に予熱する。りんごは縦4等分に切って軸としんを取り、皮をむく。型にりんごの1/2量を敷きつめ、りんご用のグラニュー糖の1/2量を全体にまぶす。同様にしてりんごをのせ、グラニュー糖をまぶす。
(3)オーブンで焼き、冷やす


天板にひとまわり大きいサイズに切ったオーブン用シートを敷く、(2)をおく。200℃のオーブンで、途中型の向きを変えながら1時間30分~2時間、焼き汁が煮つまり型を傾けたとき、少量の焼き汁がゆっくりと流れるようになるまで焼く。粗熱を取り、冷蔵庫で3時間ほど冷やす。
(4)タルト生地を焼く

「いちじくのタルト」の【タルト生地】の作り方(1)、(2)を参照して同様に作る。ただし、生地を一つにまとめたら2つに分ける。それぞれ厚み1.5cmほどの円形に形を整え、ラップで包んで冷凍庫で1時間ほど置く※。
※今回は1つ分の生地を使用。残りは次回に使うとよい。ラップで包み、保存袋に入れて冷凍で1カ月ほど保存可能。

生地を冷凍庫から出し、指で押せるくらいの柔らかさになるまで室温に置く。めん棒で直径約18cmの円形に広げ、フォークでピケを作る。オーブン用シートを敷いたバットなどに置き、ラップをぴったりとかけて冷凍庫で15分ほど置く。

180℃のオーブンでタルト生地を20分ほど、こんがりとした焼き色がつくまで焼き、さます。
(5)りんごを型からはずす。

高さ2㎝以上の耐熱のバット(直火OKのもの)にりんごを型ごと入れ、バットに湯を型の高さの半分ほどまで注ぐ。バットを弱火で2分ほど加熱する。火を止め、2分ほどおいて型を取り出す(やけどに注意)。


りんごの上に(4)のタルト生地をのせる。型に皿やバットをかぶせて上下を返し、型の上からかるくたたいてタルトタタンを取り出す。
(6)さらに冷やして仕上げる

皿やバットごと冷凍庫に入れ、15分ほど(または冷蔵庫で1時間ほど)冷やし固める。
ひっくり返すときは、多少くずれても大丈夫という気持ちで思いきり。お菓子作りは一度で成功すると思わずに、練習あるのみです。次回は12/20(金)公開です。
撮影よもやま話

真っ赤なりんごがよく似合うこちらの木の桶、この夏パリにあるアンティーク店のムッシューに譲ってもらったもの。見所は長い年月をかけて幾重にも施された無骨な直しの数々です。木桶自体は1700年代に作られたものということで木肌はトロトロで惚れ惚れするわけですが、1800年代に一番よく働いたのでしょう。その時に鍛冶屋に裏側をがっちり補強してもらったそう。その後1900年代に入ってから機能性を高める為に両サイドに金属製の取手がつけられ現在に至るという、何とも魅力的なストーリーを聞いてしまったものだから即購入。推定250歳のこちらの木桶、いろいろな意味で重みが違いますよ。次の250年を受け継いで頂ける方いらっしゃいませんか。(文/池田講平)

2018年12月に川崎市にある中央卸売市場北部市場内に開店。アンティークショップ・アートギャラリーを兼ねた、市場には珍しいスタイルのカフェ。早朝から働く人がコーヒーを片手に手軽に食べられるようにと作った焼き菓子や、ツナメルト、フリットといった市場で仕入れる新鮮な魚介類を使ったランチが人気。
公式HP 公式インスタグラム
神奈川県川崎市宮前区水沢1-1-1 川崎市中央卸売市場北部市場 関連棟 45
営業日/月・火・木・金・土曜
営業時間/7:00~13:30
(ラストオーダーは13:00、土曜日のみ14:00)
ランチタイムは 11:45~ 休みは市場に準ずる(原則、水・日曜と祝日)
※一般のかたの市場への入場は8時から。来店の際は必ず上記HPかインスタグラムを確認してください。

料理・文/池田宏実 撮影・スタイリング/池田講平 編集/小林