陶器の街・益子町生まれ。幼いころから料理に親しみ、実家の台所や食卓にはつねに「発酵食品」があった……。そんな井上咲楽が、自家製の調味料や、お気に入りの発酵食品などを紹介していく「発酵ごはん」連載です! はつらつとした彼女のすこやかさの秘訣がここにアリ!?
井上咲楽のしょうゆ旅⁉『美味しんぼ』の和歌山・角長「濁り醤」と岐阜「長良」の凄さにハマる。

しょうゆはコスパよく手軽さ重視!と思っていたら
最近、贈り物としてしょうゆをいただくことがあり、それがとてもよかったので紹介させていただきたい。
ふだんのしょうゆは特別なこだわりはなく、なんとなく「国産大豆使用」と書かれたものが良さそうだという理由でどこのスーパーでも買えるものを使っていた。

私の食卓では和の味つけが多いので、しょうゆは料理で使ったり、豆腐や刺し身にかけたり、卵かけご飯にたらしたり、と登場回数は塩と同じくらいに多いこともあり、コスパよく手軽に購入できるもので充分! だと思っていた。
が、昨年自宅にごはんを食べにきてくれたかたが手みやげとして持ってきてくれた「長良」というしょうゆをきっかけにさまざまなしょうゆを試すようになり、今はしょうゆ旅をしている最中、といったところだろうか。しょうゆの修業中と書きかけたが、それはしょうゆを作っている職人さんたちに申し訳ない気持ちもあり、あくまでも消費者として、醤油しょうゆ売り場で、しょうゆ旅をしているというテイで失礼します。


Kさんが持ってきてくれた「長良」は、重厚な角張ったびんに詰められたいかにも濃そうなしょうゆ。岐阜県産の大豆を100%使用、そして岐阜県を代表する長良川の伏流水を使ってつくられているたまりじょうゆだ。ロゴはおしゃれな現代的なフォントが使われていて、「洒落たしょうゆだなあ」というのが第一印象だった。Kさんもこのしょうゆを人からもらってハマったらしく、あまりにもよさを熱弁するので、その日に冷蔵庫にあった豆腐を重曹でとろとろに煮て、湯豆腐風にして食べてみることに。
まっさらな豆腐に「長良」をたらり。白としょうゆの黒のとろみが色っぽい。びんの口から出るしょうゆはとてももったりしていて、見ているだけで濃厚さに想像の浸透圧でヨダレが出る。食べてみると、とろんとしたしょうゆのコクと深み、そしてしょうゆのうまみにびっくりした。味が濃いというよりこくが濃いという感じ。お刺し身に合わせるときは少しの量でもしっかり味がのる。Kさんが来てくれた日は、「長良」にマーロウのプリンと、濃厚な手みやげに心おどった日だった。

続いて、先日仲よくさせていただいている文筆家・エッセイストの甲斐みのりさんにおみやげでいただいた、しょうゆの発祥地である和歌山県湯浅町の老舗「角長」が作る「濁り醤(にごりびしお)」。圧縮や火入れをしない生のしょうゆらしく、麹と発酵の力を使ってできた貴重なしょうゆ。
賞味期限も普通のしょうゆと比べて短いらしい。ラベルには「生」「PURE」と書かれている。
突然の英語が味わい深い。調べてみると、どうやら「美味しんぼ」にもこのしょうゆが登場するらしい。「長良」よりはわずかにさらりとしているが、とろみあり。そのままなめてみると、煮つめたというより重ねたような深みがあり、ピュアな濃さが印象的でとてもおいしかった。甘さもある。
甘さといっても九州のしょうゆのような甘さではなく、しょっぱさの奥にある大豆のふくよかな甘さ。サーモンのような脂がのった刺し身にも負けない個性がある。これは甲乙つけがたく、個性があってすごく楽しい。

使用量が多い調味料はできるだけ手ごろなものがありがたいのは事実。そしてせっかく買うなら目新しい調味料がいいと思ってしまう気持ちもすごくわかるが、いつも使うものだからこそ、いつもより少し特別なものを使ってみるのもまた幸せなのかもしれない。
そしてしょうゆとはすごい。主に大豆、塩、小麦を発酵させて黒くておいしい調味料になるわけだ。色からしてまったく異なる液体にさせる発酵の力、恐るべし! 醤油をはじめ、「さしすせそ」調味料の冒険もじっくり堪能したい。



PROFILE
井上咲楽(いのうえ・さくら)
1999年、栃木県生まれ。2015年「第40回ホリプロタレントスカウトキャラバン」を経て芸能界入り。「おはスタ」「新婚さんいらっしゃい!」など、バラエティで見せる明るいキャラで人気を博す。NHK大河ドラマ「光る君へ」に出演。2024年5月『井上咲楽のおまもりごはん』、11月『じんせい手帖』、2025年10月『井上咲楽の発酵、きょう何作る?何食べる?』を出版。「発酵食品ソムリエ」資格、「食品衛生責任者」の資格も持つ。

文・写真/井上咲楽 バナー・プロフィール画像/大森忠明
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