
和紙の面だから、ここまで動ける。伝統芸能「石見神楽」が迫力満点!/島根の神事

島根県を西から東へ大横断したプレスツアーより、島根県の名所・グルメをおすすめ! 第2回は「石見神楽」にまつわるスポットをご紹介します。
石見神楽がどんなものか、ご存じですか? 笛や太鼓囃子に合わせて、豪華絢爛な衣裳と鮮やかな面をつけ、ダイナミックに舞う島根県西部の伝統芸能です。静かな動きが多い日本の伝統芸能のなかでは珍しい、激しい踊りを成り立たせているのが〈石州和紙〉。まずは、その作り方を学べる「石州和紙会館」を訪れました。
職人の妙技を知る。石州和紙の紙漉き体験も!



石州和紙の原料となるのは、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)といった植物の皮。手作業によるさまざまな製造工程を経て、「紙料」にしていきます。漉き舟に紙料・トロロアオイの粘液・水を入れ、混ぜ棒によって均等に分散させます。

まんべんなく混ぜた紙料の中に紙漉きの木枠を入れ、紙料をすくい前後に揺らす工程を何度かくり返し、厚さを調節します。漉いた和紙を圧搾し、板に張り付けて乾かしたら完成です。

「石州和紙会館」では、予約をすれば紙漉き体験も可能。はがき判2枚分(税込770円)、A3判1枚分(税込1650円)など、いくつかの体験ができます。和紙の飾りを漉き込むことができるので旅先の思い出づくりにおすすめです。
なお、この紙漉きがなかなかむずかしい! 気がつくと厚いところと薄いところができてしまい(それはそれで味ではありますが)、見るのとやるのでは大違い。改めて職人さんたちのすごさを痛感することができます。
石州和紙会館
〒699-3225 島根県浜田市三隅町古市場589
営業時間:9時~17時、月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始休
TEL:0855-32-4170
和紙を小さくちぎって貼り重ねて作る、石見神楽の面
楮などの原料を繊維状にするところから、紙を漉いて乾かすまで、大変な苦労をして作られる和紙。この和紙を使って作られるのが、石見神楽の〈面〉です。そんな神楽面を作っている「小林工房」さんにお邪魔しました。


「小林工房」さんには、石膏の面型がたくさん。注文があると、この石膏型に粘土を押し込み、原型を作ります。

粘土の原型の上に、ちぎった和紙を柿渋入りののりを使って貼り重ねていきます。

乾燥したら原型を叩いて取り外し、彩色や毛植えなどをして完成します。
通常の木彫りの面に比べてとても軽い、紙を貼り重ねて作る石見神楽面が生まれたのは、明治時代に神職による神楽が禁止されたことがきっかけ。担い手が民間へ移っていくに従い、調子がどんどんリズミカルになっていき、派手な舞ができる軽くて動きやすい面が好まれるようになったのだそうです。
神楽面への絵付け体験(税込8500円)もできる「小林工房」。緻密に作られた面をじかに手に取り、本物の材料を使って世界でひとつだけの面を作るのは、とっても貴重な体験かもしれません。
小林工房
〒699-2511 島根県大田市温泉津町小浜イ308番地2
営業時間:9時~17時、不定休
TEL:0855-65-2565
きらびやかな衣装で激しく舞い踊る。大迫力の石見神楽を体験!

かつての神事からエンターテインメント性を高めていった石見神楽は、温泉地などの観光スポットで定期公演を観ることができます。今回訪れたのは、有福温泉の「湯の町神楽殿」。ごく小規模な建物の中、ステージのような段差もなく、すぐ目の前で神楽が行われます。

コメディのような一幕や、あっと驚くしかけもあり、夢中で見ているうちに華やかに演目が進んでいきます。

須佐之男命(すさのおのみこと)が八岐大蛇を退治する「大蛇(おろち)」は、そのスケール感で特に人気の演目。面だけでなく胴体の部分まで石州和紙で作られているのですが、途中紙が破けないか心配になるくらい縦横無尽に動きます。
いわゆるプロの踊り手はおらず、地元の〈神楽っ子〉たちにより運営されている石見神楽。その土地に根ざしたあたたかさも、魅力のひとつです。
湯の町神楽殿
〒695-0156 島根県江津市有福温泉町711-1
公演時間:毎週土曜日20時30分~22時
※10月と2月は第2・3土曜日、1月は第2・4土曜日のみ開催
※事前予約制(定員に達していない場合は、当日予約がないかたでも会場で受付を行います)
TEL:0855-52-0534(江津市観光協会・江津市観光情報センター)
星空を望む半露天風呂付き「アウルリゾート有福温泉」で石見神楽の余韻に浸る

本日の宿は、有福温泉「アウルリゾート」。ホテルの裏口から徒歩1~2分で湯の町神楽殿に行くことができます。



部屋ごとに趣きが異なる和モダンの客室には、多くの部屋で温泉が楽しめる檜風呂がついています。


夕食は、その季節にいちばんおいしい旬の食材を使ったもの。なかでも目を引いたのは、海鮮がぎっしりと入った豪華な鍋。地酒とともに山と海の恵みをいただいて、石見神楽を楽しみ、温泉でその余韻に浸る。そんな滞在ができるホテルです。
アウルリゾート有福温泉
〒695-0156 島根県江津市有福温泉町695
TEL:0855-56-3008
豊かな自然と文化を誇る島根だからこそ、「石見神楽」のようにテーマを設けて旅をする。そんな計画もよいのではないでしょうか。
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編集協力/島根県 写真・文/編集部・平