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世話焼きな本屋さん

お客さんの悩みや気持ちに寄り添う本を、ちょっと世話焼きな書店員たちが心をこめて選書いたします。どうか素敵な本との出会いがありますように。

書店芸人カモシダせぶん、いか文庫が選ぶ『ネガティブ思考を手放す』おすすめ本6選

人と比べては、ついクヨクヨ。
ネガティブ思考を変えてくれる本、ありませんか?

今回の選書担当

書店員芸人 カモシダせぶんさん

芸人活動と並行し、2つの書店に勤める現役の書店員。YouTubeやイベント、ブログ等で日々おすすめ本を発信。公式X:@kamo_books

「いか文庫」店主 粕川ゆきさん

書店勤務のかたわら、店舗も商品もない「エア本屋」・いか文庫を発足。リアル書店での選書やイベントを通じ、本との出会いを提供している。

書店員芸人 カモシダせぶんさん
おすすめ3選

成瀬は天下を取りにいく

成瀬は天下を取りにいく/
著:宮島未奈 新潮社 1705円

他人と比べる。自分もそれでよく悩みます。だけどこの小説を読むと、主人公・成瀬あかりのあまりの行動力とまぶしさに悩みも吹き飛びます。物語の大半は天才・成瀬のまわりの人物の視点で進みますが、最初は彼女のたぐいまれな才能にいじけたり、わが道を行く成瀬に悪印象すら抱いたりする人も、最後には彼女にひきつけられてしまう。そこがすごい。相手と比べて落ち込むんじゃなくて、ただただ自分とは別の生き物として尊敬して、俯瞰して楽しむ。というのも自己嫌悪から離れる一歩かもしれません。僕らは大谷選手じゃないんで、あこがれるのを、やりましょう。まずはこの無敵の女子学生、成瀬あかりの輝きをぜひ体感してほしいです。

閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映る——。コロナ禍の夏、また変なことを言い出した主人公・成瀬を通じて描く青春小説。2024年本屋大賞受賞。

カレー沢薫のワクワク人生相談
著:カレー沢薫 太田出版 1430円

あなたはSNSに流れる友人の幸せな報告や、芸能人のハッピーニュースを見て落ち込んでいませんか? 僕が大好きな笑えるマンガ家&エッセイストのカレー沢薫先生(深い話も書けるかた)が、この本の中でこんな趣旨のことを書いています。〈SNSで同業者の成功なども目にするが、「アニメ化」とか「重版」などのワードは最初からNGにしているし、フォローしている同業者でもサクセスした者から順次ミュートする〉。潔すぎる。これをまっすぐ書けるカレー沢先生はマジでカッコいいです。自分が幸せであるために、余計な情報は積極的に遮断する! 言葉は強いですが、情報があふれすぎているこの世界では重要なことかもです。

SNSでの幸せアピールから推し活問題まで。対人関係、性格と仕事、趣味と生活をめぐる37のお悩みを、人気著者がスカッと&クスッと解決する人生相談集。

かわいそうだね?

かわいそうだね?
著:綿矢りさ 文春文庫 726円

男女平等といいつつ、いまだに男は強いもの、女性は守られるべきものみたいな考え方が世間には根強く残っていて、いやになることがあります。この表題作の主人公は、一生懸命にがんばって、人間として精神的に強くなってきたのに、ある日自分の彼氏のもとに〈弱さ〉を武器にした彼の元カノが転がり込んできます。なんだよ、結局弱い女性がモテるのかよ……ずるいわ。読んでいて、同じように思う女性も少なくないでしょう。なんだかなぁと読み進めると、後半、そんなモヤモヤが積み上がった「ジェンガ」のような気持ちを、ドンガラガッシャンとなぎ倒す爽快な展開に。強い自分よりも弱い人のほうがいいのかな、と変に思っているかたにぜひ。

恋人と幸せな日々を送る樹理恵。あるとき彼が、無職の元彼女を居候させると言い出して――。ブラックだけどいとおしい、〈女子〉の世界を描く2編を収録。

「いか文庫」店主 粕川ゆきさん
おすすめ3選

さみしい夜にはペンを持て

さみしい夜にはペンを持て
著:古賀史健 絵:ならの ポプラ社 1650円

主人公と同じく、自分はダメだと思うことがあります。ネガティブ思考から抜け出すために感情を書き出してみては? とすすめられたこともあるけれど、つらい気持ちを書くこと自体、つらくない? と思っていました。この本はそんな「書き方」の指南書でありながら、展開は小説のよう。中学生向けだそうですが、大人にもスルスルドバドバ刺さる言葉ばかりで、いつの間にか自分も書いてみようという気持ちに変わっていました。すぐに試したくなったのが、ネガティブ感情は「~と思った」と過去形で書くこと。今の自分から少し距離が生まれ、気持ちが切り替わるのだそうです。読むうちに少しずつ上を向きたくなって、自分を好きになりたくなりますよ。

自分を好きになれないタコジローが絶望のさなかに出会ったのは、ヤドカリのおじさん。「書く」ことで自分の心と対話するすべを教わり、一歩踏み出していく。

元気になれそう 映画「魔女の宅急便」より

元気になれそう 映画「魔女の宅急便」より
詩:宮崎 駿 絵:近藤勝也、大塚伸治、近藤喜文 徳間書店 880円

この絵本のもととなる映画「魔女の宅急便」のキャッチコピー、「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです」。私はこれを「おちこんだりもするけれど」だとずっと勘違いしていました。でもその間違った記憶に、だいぶ勇気を与えられてきた気がします。この本は「元気がない」主人公が、心に抱えた気持ちを自分に語りかける一冊。読んでいると気がつきます。そう、だれしも落ち込まないわけがない。だけどどこかに糸口はあるし、急にパッと明るい気持ちになるきっかけや瞬間はある。そんな希望に満ちた気持ちにしてくれます。きっと元気になれるから、今もこの先も、落ち込んだって大丈夫。そう語りかけてくれる、懸命に生きるみんなのための絵本です。

「魔女の宅急便」映画化に際し、宮崎駿監督が書き下ろした詩と、スタジオジブリの作画スタッフによるイメージボードで構成した詩集&イラスト集。

スキップとローファー

スキップとローファー 既刊1~10巻
著:高松美咲 講談社 748円〜

まずハッとさせられるのは、主人公に〈人を比べて見る〉という発想がないこと。過疎の町で人の裏表も知らずに育ったので、そんなんで大丈夫か?と人間関係に疲弊ぎみの私は不安にもなりますが、いや、そうだよね、人とも自分ともそんなふうに接したいよね、本当は心の底からそう思ってる! と、元気をもらえるマンガです。とても好きなのが、まだ仲よくなっていないクラスメイトを半ば強引にカフェに誘うシーン。主人公が人生初のタピオカドリンクをワクワクしながら飲むということだけで、自分のキャラや立ち位置を気にして新しいことに踏み出せなかったクラスメイトの心が溶けていくコマに、何度読んでも目がうるむ、小さなハッピーもくれる物語です。

高校進学を機に上京した主人公・岩倉美津未。成績優秀だけどちょっと天然、飾らずまっすぐな彼女の存在が、いつの間にか周囲の人々の心をほぐしていく。

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イラスト/河原奈苗