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飛田和緒さんの「月に1度のさもない昼ごはん」

具材3つで! 何個でも食べられるさっぱり『生春巻き』【飛田和緒さん連載】

2024.04.17

人気料理家・飛田和緒さん。この連載は飛田さんの飾らないお昼ごはんをのぞき見させてもらいます。使うのは20年近く住む神奈川県・三浦半島の旬の食材! さて今日はどんな「さもない」お昼が見られるのでしょうか……?

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今日の野菜直売所は寂しかった。

4月に入ってからも落ち着かない春の陽気。そして昨日から冷たい雨が降ったのもあるだろうし。
前の週も嵐のような風が吹き荒れたり、夏日だったりと不安定な毎日だったこともあってか、野菜の出来があまりよくないみたい。せっかく出はじめていた春キャベツも大きくならず、少し小ぶりで出回っているとニュースで流れていました。

野菜の端境期ならこんなこともありますが、ここに越してきて季節の野菜がなかったのは初めてです。まあこんな日もあるねと自分に言い聞かせながら、お昼何食べようかと思いあぐねながら、直売所をウロウロ。

大きな野菜がなく、湘南きゅうり、新じゃが、新玉ねぎ、香菜を買いました。

湘南きゅうり

春まではハウスで育てているきゅうりは、太さも長さもそろっています。まっすぐだから切りやすい。露地ものが出はじめると形がばらばらでこれもまたおもしろくって、どう切ろうかと包丁をにぎりながら考える時間も案外好きです。

新じゃがいも

新じゃがは正直いうと味が薄いからあまり買わない。初物として一度は蒸して食べるくらいなのです。煮たり焼いたりは、ほくほくしっとりのいつものじゃがいもがいいけれど、今日は特別。野菜が少ないから、なんとか組み合わせを考えたい。

新玉ねぎ

新たまは、どのシーズンもあってほしいくらい大好物。
最近新たまの旬が長い気がしているのはわたしだけかしら……。初夏くらいまで楽しめるから、毎食食べる勢いで、買っては調理しています。

香菜(パクチー)

そして香菜は、直売所のものが香りも味も濃くってあれば必ず買う。ただ、この野菜は繊細らしくて、お天気にかなり左右されるみたい。だから今日出会ったのは奇跡に近くて、見つけたときには喜びのあまり、ぴょんと跳びはねてしまった……!
幸い雨だったからか、わたし以外に客はおらず、直売所のお母さんも新聞読むのに夢中だったから、わたしの小さなジャンプは一人だけの世界で終わりました。

今日のさもない昼ごはん『生春巻き』

さて、この野菜を前に思いついた昼ごはんは、『生春巻き』。
冷凍庫にたまっているえびがあったあったと思い出してからはもうほかの選択はなくなった。

えびがたまるとは何? って思われるでしょ。

雑誌などに掲載するレシピは、読者のみなさんにお伝えしやすいようきりのいいグラム数だったり、何尾って書きますから、撮影時は確認の意味もあって、そのとおりに作ります。

そうすると、えびが1~2尾残ることがあるんです。持ち帰れる食材はスタッフで分けたりしますが、そんなときえびはお持ち帰りにならずに、わが家の冷凍庫に放り込まれる。そんな半端なえびがたまっていたのを運よく思い出せました。
きゅうり、香菜、えびさえあればすぐにできるのが『生春巻き』。
春雨を入れたり、蒸し鶏を入れたり、具材のアレンジはいろいろできますが、今日は3つの具材で巻きました。

生春巻きの皮は乾物なので、いつも常備しています。チリソースも好きだから、いつも冷蔵庫にスタンバイ。もしなければ、ナンプラーとはちみつ、お水で少しのばして、赤唐辛子とレモンを絞れば、たれもすぐにできますよ。
きゅうりはひたすらせん切り。買った4本をすべて切りました。もちろん余りますから、それはまた別の料理に。切っておけばすぐになにかしらに使えますから、1本切るのも4本切るのもわたし的には手間は同じ! ということで一気に切りました。

あとは冷凍していたえびをゆで、香菜は洗ってざく切りにしたら、水で戻した皮で巻くだけ。
 
まずは3本巻きましたが、もう1本、もう1本と巻いているうちに結局6本も食べてしまって、もうおなかがはち切れんばかりに……。
お店で食べるとこうはいかないから、おうち生春巻きはついつい欲張って食べすぎてしまう。

きゅうりのシャキシャキと、香菜の強い香りと独特の青い味、プリッとはじけるえび、ほどよい弾力の薄い皮の組み合わせが絶妙。そこに甘くて辛いたれをからませるとたまりません。

夜ごはんは『キムチチゲ』

さて、新じゃがと新玉ねぎはというと、夜のキムチチゲの具材になりました。
夜になると、だんだんと気温が下がって寒くなってきたので、あったかいスープが食べたいなと思って、「そうだ、じゃがいも入りの韓国料理にしよう」と。

昨年久しぶりに韓国へ行った際に、なぜだかどこへ行ってもじゃがいもが入った韓食が出てきて、そのじゃがいもがそれはそれはまたおいしくってね。韓国料理の水炊きといわれる「タッカンマリ」のお店でも、主役の鶏肉以上に鶏のスープを充分にまとったじゃがいもがおいしすぎて、肉には見向きもせずにじゃがいもばかりを何度もお代わりしたくらい。

じゃがいものチヂミも、スペアリブとじゃがいもの辛い煮ものも、いもがいい仕事してました。辛めのキムチチゲも、じゃがいもが入ることで甘みがプラスされて、じゃがいもが出てくるとホッとする。
辛いキムチとスープ、じゃがいもって交互に食べると止まらなくなります。
スープは、まず玉ねぎとじゃがいも、鶏皮と香菜の根っこ、水を鍋に。鶏肉の皮から出るだしで煮てから、皮を取り出し、キムチや豆腐を加えて仕上げました。

つけ合わせのあえものは、昼間に切ったせん切りきゅうりにかるく塩をしておいたものに、わかめと甘酢を合わせました。このあえものの写真を撮り忘れてしまいました、ごめんなさい。

今が旬の『春わかめ』

わかめは目の前の海でとれた春わかめ。シャキシャキしていて、歯ざわり抜群。先月までは生わかめが手に入ったから、何度もわかめしゃぶしゃぶを食べました。
塩蔵わかめもいいけど、こちらでは干しわかめが主流。
生わかめをよく洗い、さっと湯通しして、天日で干した乾燥わかめ。塩味がきつくないので、水でさっともどすだけですぐに食べられて便利なんです。

そうだ、5月にかけてはひじき漁も解禁になるので、来月は海草と初夏の野菜の組み合わせをお伝えできるといいなー。

春は花粉や寒暖差もあってアレルギーの症状が出やすい季節。みなさま無理せず、体大事にお過ごしくださいね。また来月お会いしましょう。

飛田和緒


飛田和緒(ひだかずを)

料理家。神奈川県・三浦半島に夫・娘と住みはじめてから18年になる。海辺暮らしならではの魚料理や、地元の食材を使ったシンプルな野菜レシピが人気。繰り返し作りたくなる常備菜は、幅広い層から支持されている。お弁当や朝ごはんの記録をつづったインスタグラム(@hida_kazuo)も話題。著書に『いちばんおいしい野菜の食べ方』(小社)など。

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文・写真/飛田和緒 撮影/大森忠明(バナー、プロフィール画像)

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