甲斐みのりさんは、大きな仕事をひと山超えたときや友人とおしゃべりするときには決まってお気に入りの純喫茶に訪れるそう。ここでは、旅の途中で甲斐さんが立ち寄ったおすすめの純喫茶をご紹介します。
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神奈川県横浜市
コーヒーの大学院 ルミエール・ド・パリ
JR関内駅南口から徒歩5分ほど。〈横浜スタジアム〉に面する、みなと大通り沿いのビルの1階に、「大学院」と白抜きで文字が入った、ひときわ目を引く赤いテントが。
「はて、こんなところに学び舎が?」と不思議に思う人もいるだろうが、ここは〈コーヒーの大学院 ルミエール・ド・パリ〉という喫茶店。いつでも極上のコーヒーとともにある、この上ない場所であるようにと願いを込めて、最高学府である〈大学院〉と、創業者が好きだった言葉〈パリの光〉を店の名に冠し、「香り高い一杯のコーヒーを吟味してお出しする」という理念のもと、1974年に創業した。
王族の館を思わせる
ゴージャスな特別室
鎧の騎士が出迎える入口の向こうは、赤い絨毯が敷き詰められた、豪華列車の食堂車のような縦長の一般席。こちらの客席だけでもじゅうぶん居心地がいいけれど、特筆すべきは店の奥に待ち受けるもうひとつの部屋「オーキット特別室」。
扉を開くと、まばゆいシャンデリア、大理石のテーブル、ベルベットの赤い椅子、王冠が並ぶ色鮮やかなステンドグラス、カトレアを描いたモザイクタイル、BGMは優雅なクラシック音楽と、きらびやかな異世界が広がっている。そんな王族の宮殿さながらの絢爛豪華な喫茶室で、コーヒー、パフェ、昔懐かしい洋食など、純喫茶メニューが味わえるのが嬉しい。
特別室を利用するのにチャージはかからず、一般席よりメニューの価格が、わずかに割高に設定されているのみだ。
〈コーヒーの大学院〉というだけあって、ストレートコーヒー、オリジナルブレンド、バラエティコーヒーと、種類も豊富に取り揃うコーヒーは特別な味わい。よりコクを出すために、一杯に通常の2倍の量のコーヒー豆を使い、丁寧に時間をかけてサイフォンで淹れているという。
そんな濃厚なコーヒーにぴったりなのが、アイスクリーム、ホイップクリーム、果物たっぷりのフルーツポンチ、白ワインゼリーを合わせた、「パフェルミエール」。ガラスの器に盛りつけられ、ちょこんと赤いさくらんぼをのせた姿がなんとも可憐。
さらには、タマネギ、ニンジン、ひき肉、トマトピューレ、ケチャップたっぷりの手作りソースと、バターを染み込ませたパスタが絶妙な風味を奏でる「スパゲティー・ミートソース」はじめ、手作りハンバーグやビーフカレーなども、折り目正しい正統派の洋食店と変わらぬおいしさと、長年に渡り親しまれてきた。
一度〈入学〉すると、ここで過ごす至福のひとときが忘れられず、いつまでも〈卒業〉できずに通い続けてしまう、唯一無二の空間だ。
創業者のこだわりが詰まった豪華な内装。
「 パフェルミエール」は、弾力のある白ワインゼリーがたっぷり入って、見た目よりヘルシー。910円(特別室は960円)
Data
住所 神奈川県横浜市中区相生町1-18
TEL 045-641-7750
JR「関内駅」より徒歩5 分
営業時間 10:00 ~ 18:00(月~金) 10:30 ~ 18:00(土・祝日)※ラストオーダーは17:00
定休日:日曜日
甲斐みのり
文筆家。昭和51年静岡県生まれ。旅や散歩や手土産、クラシック建築やホテル、暮らしなどを主な題材に、書籍や雑誌に執筆。著書に『歩いて、食べる 京都のおいしい名建築さんぽ』(エクスナレッジ)など多数。10月16日に『愛しの純喫茶』がオレンジページより刊行予定。
Instagram:@minori_loule X(Twitter):@minori_loule
撮影/原 幹和(本文)、鈴木康史(タイトル、プロフィール)、10/16発売「愛しの純喫茶・甲斐みのり著」より