料理好き、そして玉子好きな小説家の井上荒野さんが、 気楽に作れておいしい「目玉焼きのせ」料理を紹介する連載エッセイ。 冷蔵庫に残りものしかない、おかずがちょっと物足りない…そんなとき、 最後に目玉焼きをのせればどうにかなる。読めば、心強くて気持ちが楽になるはずです。
私の好物のひとつに玉子があり、というか正直に言えばかなり大好きで、玉子があしらわれているだけでその料理の評価が二、三割上がってしまう。
たとえば、前夜の残りのおかずでも、ちょっぴりしか残っていなくても、そこに目玉焼きをのせればごきげんで、ある日、ごきげんになったあまりに、そのようなひと皿をインスタグラムにアップして、「目玉焼きをのせればたいていのことはうまくいく」というタイトルの本を誰か書きませんか、などとコメントをつけてみたら、なぜか自分で書くことになってしまった。「うまくいく」と言い切るのをちょっと遠慮して「どうにかなる」に変更しましたが、これからしばらく、どうぞよろしくお願いします。目玉焼き、および落とし玉子をそえてごきげんになるひと皿を、毎月紹介する連載です。
というわけで、第一回目は目玉焼きのせごはん。目玉焼きのいちばんおいしい食べかたはこれなんじゃないだろうか。お茶碗にごはんをよそい、それこそ残りもののおかずとか、佃煮とか、かつお節とか、のりとか、ちりめんじゃこなんかで賑やかして、いちばん上に目玉焼きをどーんとのせるのもいいけれど、初回なので潔く、シンプルにねぎとしょうゆのみで。
目玉焼きはもちろん、箸を入れたらトロリと黄身が流れ出す焼き加減であることが肝心で、うっかり火を通しすぎたり、ごはんにのせる前に黄身をつぶしてしまったりしたときの絶望感はものすごい。「目玉焼きの目玉がすぱっと切れてしまったときほどの絶望」という比喩を、そのうち小説に使うつもりだ(ほんとか?)。
長野の家は
八ヶ岳の麓にあります
松太郎19歳。
一緒に移動します
お盆は友人が来て
花火をしました
撮影/三原久明
文・写真・料理/井上荒野 構成/掛川ゆり
記事検索