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【編集マツコの、週末には映画を。Vol.91】『羊飼いと風船』

2021.01.15


こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。インスタグラムやフェイスブックなどのSNS、そして昨年一気に普及したZoomなどのおかげで、世界中どこにいてもコミュニケーションが取れるようになりました。ただしそれは理論上の話で、パソコンもスマートフォンも使わずに生活している人はたくさんいます。この作品に出てくる人たちの生活も、最新の科学技術とは縁遠いもの。彼らを「取り残された人たち」と見なすのではなく、時代の変化の影響を受けながらもがく様子を優しく描いた、とても温かい作品でした。


最初のシーンがとても良いのです。もやがかかった草原地帯に子どもたちの声が響き、そこにやって来るのはバイクに乗った父。馬がバイクに取って代われられたことを祖父がしみじみとつぶやく……。チベットの高原で、牧畜をしながら生計を立てる一家の日常。子どもたちが遊び道具にしている風船は、この後あっと驚く形で再び登場します。
一家を支えるタルギェ(ジンバ)と妻のドルカル(ソナム・ワンモ)を中心とした家族の物語であり、時代の急激な変化に揺れるチベットの物語でもあります。
最初のシーンの印象からほんわかしたストーリーかと思いきや、内容はけっこう生々しい。街の診療所を訪れたドルカルが女医に相談したのは、避妊手術のこと。というのは、1970年代に始まった中国での一人っ子政策は、初めは非漢民族には適用されていなかったものの、80年代以降チベット自治区にも影響が及んだそう。一人っ子ではないものの、この地域の農牧業従事者は子どもの数は三人までと制限されているみたいです。


一家は信仰深く、徳を積めば輪廻転生出来るという仏法の教えを信じています。避妊手術や中絶という「生のコントロール」が宗教と両立するのか分かりませんが、それも変わりゆく生活の象徴なのでしょう。
宗教と科学。田舎と都会。動物と人間。そして男と女。ストーリーの中で散見される様々な対比。信仰は救いであり、ときに残酷だなあと思いました。長男の学費のことを考えると、罰金を払ってまで子どもを産む選択肢はありえないと考えるドルカルに対し、大切な人の生まれ変わりだからと、中絶に反対するタルギェ。伝統や風習と、法律という現実の間でどう折り合いをつけていくか、正解がないだけに難しい……。


辺境に暮らす人々を上から目線で描くのでもなく、変に理想化することもなく、ニュートラルな視点を変えることなく物語は進みます。国や宗教、文化の違いはあっても、それぞれの登場人物の思いは理解できるし、共感もする。それってすごいことかもしれません。
この監督は今作が日本では劇場初公開らしいですが、これまで国内外でたくさんの賞を獲得しているそう。折しもチベットのイケメン君が話題になっている今、(知らない人は検索!)本当におすすめの作品です。

「羊飼いと風船」 1月22日(金)より、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー!
©2019 Factory Gate Films. All Rights Reserved.


【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。

次回1/22(金)は「天空の結婚式」です。お楽しみに!

文/編集部・小松正和

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