※2021年7月30日更新
※この記事は、京都府立医科大学消化器内科学教室 准教授の内藤裕二先生への取材に基づいて執筆したものです。
今や日本人の平均寿命は女性が87歳、男性は81歳と、年々延びてきています。そんななか、最近の研究で、
健康で長生きするには「腸内細菌のバランス」をよくする食習慣が重要と注目されています。
今回は、京都府立医科大学 消化器内科学教室 准教授・内藤裕二先生に、健康と腸内細菌のかかわりと、腸内環境を整える「発酵食ベスト3」についてお聞きしました!
◆健康長寿の人たちの腸内には善玉菌が多い!
100歳以上の人たちが多い京都府北部の京丹後市。ここは「大腸がんの罹患率が低く、80~90代の人たちの血管年齢が極めて若い」と注目されている地域です。内藤先生の研究チームでは、数年前から京丹後地域の高齢者の食事を調べ、腸内環境と長寿に関する研究をすすめています。
「京丹後地域の高齢者は、都市部の京都市に比べて
腸内細菌の種類が非常に多く、善玉菌が優位な状態でした。なかでも、食物繊維をエサにして『酪酸』を作る『酪酸産生菌』の割合が高いことが判明したのです」と内藤先生。
酪酸産生菌とは腸の働きをよくして、腸粘膜のバリア機能を強化してくれる善玉菌。今、コロナ禍で注目されている「免疫力」のアップにも深く関わっています。また、がん細胞の増殖を抑制する働きもあるなど、酪酸産生菌のさまざまな働きが高齢者の健康を支えていることが明らかになってきたのです。
◆大麦などの雑穀や根菜類、海藻類などの「発酵性食物繊維」に注目! そもそも、京丹後市の高齢者はどんな食事をしているのでしょうか?
「調査を通じて、私たちは3つの特徴に注目しました。1つ目は、『摂りすぎはよくない』と言われている肉類やバターなどの動物性脂肪よりも、
魚を食べている人が多かった点です。2つ目は、モズクやワカメ、ところてんなどの
海藻類、豆類、根菜類を毎日の食事でしっかりと摂っていること。そして3つ目は、毎日の主食に
麦ごはんや玄米など、雑穀類をとり入れている人が多かったという点です」
つまり「食物繊維」をしっかりと摂る食生活を送っていることこそが、善玉菌の割合が多い理由だったのです。「
腸内環境をよくするには、酪酸産生菌を含む善玉菌を腸内で増やすことがカギ。そのためにも、
まずは善玉菌のエサとなる発酵性食物繊維(雑穀類、海藻類、豆類、根菜類など)をとるのが大切です。また、発酵を起こす菌そのものを補充することも必要です。善玉菌が少ない人の場合は、
発酵食品を積極的にとるように心がけると、善玉菌の働きがよくなります」
★内藤先生のおすすめ「発酵食べスト3」①発酵性食物繊維大麦、玄米、小麦ブランシリアル、ライ麦パンなどの雑穀類、豆類、いも類、根菜類、海藻類など、茶色っぽい食材がおすすめ。これらは善玉菌のエサになります。
②発酵菌トクホ(特別保健用食品)の表示のある乳酸菌飲料やヨーグルトは、ビフィズス菌、乳酸菌を生きたまま腸に届けてくれます。毎日食べることによって、腸内にもともと棲む善玉菌を元気にしてくれる効果が。また、最近では、摂取するのが難しい酪酸産生菌のサプリメントも登場しています。
③発酵食品微生物の働きで作られている発酵食品は善玉菌を増やし、腸内細菌が体によい物質を産生するのを助けてくれます。ただし、塩分を摂りすぎないように注意してください。
・植物性乳酸菌/ぬか漬け、キムチなどの漬物
・動物性乳酸菌/ヨーグルト、チーズなどの乳製品
・納豆菌/納豆
・麹菌/味噌、醤油、甘酒、塩麹、米酢など
「医学の父といわれるヒポクラテスは『すべての病気は腸から始まる』という言葉を残しています。
免疫力を高めることはもちろん、健康で長生きするためにも、善玉菌を増やす食事を意識して、腸の免疫力をアップさせましょう」(内藤先生)
(オレンジページサロンWEB 「オレペ腸活部」より)