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【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.60】闘う女性のストーリー

2020.06.04

こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
時間がある週末のおうち時間を楽しくしてくれる、おすすめ映画を紹介します。

今回紹介するのは、何かのために奮闘する女性が主役の作品。その目的や手段はさまざまですが、そこから生まれる人間ドラマに心を動かされるものばかりです。

『マイ・ブックショップ』 2019年

【権力に立ち向かうための静かな抵抗。小さな町で書店を開く女性のストーリー!】

イギリスの海辺に佇む小さな町で、亡き夫との夢だった書店を開くことになったフローレンス(エミリー・モーティマー)。時は1959年。女性が1人で書店を経営するというのはかなりセンセーショナルな出来事で、彼女の夢を邪魔しようとする人物が現れます。それは地元の名士・ガマート夫人。フローレンスが借りた建物をアートセンターにしたいという名目で、彼女の店を妨害しようとするのです。

アートセンター云々というのは大義名分で、ガマート夫人という人はフローレンスのような普通の女性が、書店という文化的なものに携わるのが許せないように思えます。こういった理不尽さに対して屈することなく徹底的に闘うフローレンスですが、その闘い方に注目。本に縁のなかった子どもたちにその楽しさを教えたり、人嫌いで引きこもっている老紳士に本を届けたり、嫌がらせに真っ向から対立するのではなく、あくまで「本の素晴らしさを伝えること」で彼女は闘うのです。

引きこもり紳士ブランディッシュ(ビル・ナイ)の邸宅へフローレンスが訪れるシーンはとりわけ美しく、人の心をも結びつける本の持つ力を目の当たりにします。2人のティータイムに登場するイギリス菓子のおいしそうなこと! とはいえ権力を持つ者の暴走は抑えがたく、次第に追い詰められていくフローレンスですが、彼女の静かな抵抗はやがて意外な形で実を結びます。本というものの価値を教えてくれるだけでなく、人の「品性」についても考えさせてくれる映画です。

『マイ・ブックショップ』
発売・販売元:ココロヲ・動かす・映画社〇
価格:DVD 3,800円+税
© 2017 Green Films AIE, Diagonal Televisió SLU, A Contracorriente Films SL, Zephyr Films The Bookshop Ltd.

『サンドラの週末』 2014年

【復職をかけて同僚を説得する孤独な闘い、その先に彼女が見つけたものは……】

「相手の立場になって考えましょう」とよく言いますが、その相手を犠牲にしないと自分が生き残れないとしたら……? 体調不良による休職からやっと勤務先の工場に復帰するはずだったサンドラ(マリオン・コティヤール)は、突然解雇を言い渡されてしまう。理由は、彼女が復職すると他の従業員にボーナスを払えなくなってしまうからとういうもの。過半数を納得させれば解雇を免れるという確約をなんとか得たサンドラは、週末の2日間を使って同僚を説得しに回るのです。

ボーナスの金額は1000ユーロ(10万円ちょっと)。サンドラの気持ちは分かるけどボーナスを取るときっぱり言う人、彼女の味方をしてくれる人、すぐには決められない人etc.同僚の反応は様々。サンドラは途中「私の身にもなってよ」と何度も言いますが、自分の復職が同僚たちの生活を脅かすというのも現実で、だんだんと彼女の心に変化が生まれていくのが分かります。

カッとなった相手から手荒な扱いを受けたりと、精神的に追い詰められていくサンドラ。残酷なゲームの中、それでも時折触れる清らかな優しさにはハッとさせられるものがあります。特に、彼女が訪ねるなり泣き崩れてしまう男性の同僚とのシーンは、とても良かったです。16人の同僚を訪ねて回る、たった2日と1晩の物語ですが、人間どうしの濃厚なやり取りは見ごたえ抜群。世の中の理不尽さに胸が痛み、同時に人と人の絆に心が揺さぶられるはずです。

『サンドラの週末』
 価格:DVD 3,800円+税
 発売元:ギャガ株式会社 
 販売元:株式会社KADOKAWA

『彼が愛したケーキ職人』 2018年

【同じ男性を愛した〈彼女〉と〈彼〉。イスラエルの食文化にも注目!】

「亡き夫の不倫相手が男性だった」という、それだけ聞くと衝撃的な設定ですが、変にドラマチックにせずに人の心の機微をていねいに描いている、美しい作品です。ベルリンでカフェを営むトーマス(ティム・カルクオフ)は、出張でこの店を訪れたイスラエル人のオーレン(ロイ・ミラー)と、いつしか恋愛関係に。ある日急にオーレンと連絡が取れなくなったトーマスは彼の勤務先へ。彼が事故死したことを知ったトーマスは、失意のまま彼の故郷イスラエルへ……。

もう1人の主人公が、オーレンの妻アナト(サラ・アドラー)。彼女もまた、イスラエルでカフェを経営しています。夫を亡くした後、休業していたカフェを再開し、そこに客としてやって来た(!)トーマスをケーキ職人として雇い入れることに。愛する存在を失った悲しみと対峙しなければならないアナトは、(実は)同じ苦しみを共有しているトーマスといつの間にか意気投合していくんですね。夫と妻、両方を自らのベーキングで魅了するなんてトーマスやるな!って感じですが、決してドロドロせず、2人の距離が縮みゆく様をていねいに追っています。

アナトの息子の誕生日にトーマスが焼くケーキ。トーマスも迎え入れ、安息日に家族で囲む温かな食事。国境や宗教を越えて人を結びつける食べ物の持つ力も感じる映画です。ドイツ人とユダヤ人という2人の関係を考えれば、なおさらのこと。ちなみに「コーシェル」という食事に関するユダヤ教の戒律をかいま見られる描写もあって、イスラエルの食文化がよく分かって面白い! 本来なら出会わなかった方が幸せだったはずの2人が心を通わせていく姿に、人生の不思議さを感じずにはいられません。

『彼が愛したケーキ職人』
販売元:アルバトロス
価格:DVD 3,800円+税


※ 価格等は2020 年 6月現在の情報です。

【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文/編集部・小松正和

次回6/12(金)は「その手に触れるまで」です。お楽しみに!

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