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【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.5】「パパは奮闘中!」

2019.05.02

こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
長い連休ももうすぐ終わりですね。
来週末は母の日。子供の頃、「お母さんカーネーション嫌いだから母の日にくれなくていいからね」と言われ、子ども心にとても困った記憶が。色々な家庭がありますね。
せっかくだから母の日にふさわしい映画を……と思ったのですが、すみませんママではなく(笑)「『パパは奮闘中!』というフランス映画です。

チラシを見ると、「あの名作『クレイマー、クレイマー』から今新たにー」というフレーズが。
『クレイマー、クレイマー』観たことありますか? 1979年のアメリカ映画で、家庭を顧みない夫に嫌気がさした妻がついに家出してしまい、幼い息子とともに残された父親が家事に育児に奔走するストーリー。息子のために作るフレンチトーストがうまく出来ず、真っ黒焦げになってしまうシーンが有名ですね。


この『パパは奮闘中!』も、奥さんに突然出ていかれる夫の話。きっと仕事人間で都合がいいときだけ子供と接するお父さんの、自業自得なストーリーかな~アメリカもフランスも日本も一緒ね~と思って観たら、そう言い切ってしまうにはもったいない、色々な要素を含んだ映画でした。

【身近な人を大切にしていますか?】

オンラインショッピングサービスの倉庫で働くオリヴィエは、ある日突然妻のローラに出ていかれてしまい、幼い我が子2人との生活が始まります。おそらく育児はほぼローラが担当していたのでしょう、慣れない子供の世話と残業続きの仕事との両立はなかなかうまくいきません。
奥さんがなぜ出ていったのか、実のところよく分からないんです。ローラはショップ販売員のため、この夫婦は共働き。家事と育児を自分1人に押し付ける夫に我慢がならず……だったら話はシンプルなのですが、そうハッキリとは映画は告げません。
ローラが出ていく前日、彼女が勤務先でお客さんとやり取りをするシーンがあるのですが、ここで彼女の人となりが少し分かります(なんせ、出ていった後は登場しない)。このわずかな登場場面から察するに、彼女はとても優しい人で、それゆえに不満や愚痴を人にぶつけることをせずに、自分の中での限界に達してしまったのではないでしょうか。その結果が、愛する家族から一時的にせよ離れるという選択だったのかもしれない。


オリヴィエはそもそもの仕事が忙しい上に労働組合にも参加しています。冬の倉庫は風邪をひきそうなほど寒く、暖房をつけてくれという要望も聞き入れられません。「不満なら辞めれば?」と言われる始末。年齢がいった従業員を辞めさせる話が出るなど、フランスの労働環境の厳しさを示すシーンがちらほら。この映画が撮影されたのはもっと前かと思いますが、昨年の末からフランスで続いている「黄色いベスト」と呼ばれる労働者たちのデモが頭に浮かびました。
こういう厳しい環境に身を置いているから、家庭のことをないがしろにしていいとは思いません。ただ、働く環境が以前に比べあまりにも多様化していて、確実に格差も広がっている中で、「普通に」家庭を営むというのは、実はものすごく難しいことなのでは……と感じています。


そんな中、彼と子供たちを支えてくれるのは周りの人間です。オリヴィエのお母さんは近くに住んでおり、なにかと世話を焼いてくれます。妹は事情を聞きつけ、しばらく滞在して子供たちの面倒を見てくれることに。この妹がめちゃめちゃいいキャラなんです。陽気でユーモアがあって、カッとなりやすいオリヴィエのことを年下ながらうまくいなして落ち着かせてくれる。子供たちにとっても大好きなおばちゃんなので、母親の不在を悲しみながらも毎日をなんとか過ごしていけるのです。
こんないい妹なのに、いよいよ帰らなければというときにオリヴィエは「職も夫も子供もない(劇団員?みたいな設定だったと思う)んだから、もう少しいてくれてもいいだろ」的なことを言うんです。
あんた、そんなだから奥さんが出ていくんだよ!(笑) この人なー、職場での同僚への気遣いとは裏腹に、一番大切な人たちに優しく出来ていない気がする。男の人ってこうだよねと決めつけるのは好きではないですが、確かにこういう人は実際にいますね。


幼い子供たちがお父さんと一緒に少しずつ成長していく姿も必見。お兄ちゃんと妹、それぞれの立場でこの問題と立ち向かい、最後は3人である結論に至るのです。この結論の決め方がとても良く、好きな終わり方でした。
オリヴィエやローラのように小さい子供を持つ方は、その立場に共感しながら観られるでしょう。ただ、この映画には色々な人物が登場します。オリヴィエの母親世代、妹のような独身者、過酷な環境で働く人々etc. 観る人の立場によって感じ方も変わるでしょう。原題は『Nos batailles』=我々の闘いという意味です。みんなそれぞれ、社会の中で闘っている。ある家庭の母親の家出という出来事を通して、一見すると違うカテゴリーに属する人たちが、実は色々なところでつながっていることを教えてくれる映画だと思います。


『クレーマー、クレーマー』を思い出して急に食べたくなり……。


「パパは奮闘中!」 新宿武蔵野館 ほか全国公開中
@2018 Iota Production / LFP – Les Films Pelléas / RTBF / Auvergne-Rhöne-Alpes Cinéma


【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文・撮影(フレンチトーストのみ)/編集部・小松正和

次回5/10(金)は「コレット」です。お楽しみに!

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