
【旬のレシピ:たけのこの土佐煮】管理栄養士のおいしい(?)解説つき

こんにちは。
フリーランス管理栄養士の菱沼未央です。
先日、母からたけのこをもらいました。
たけのこを食べると一気に春の到来を感じますね。

たけのこが大好きなので
土佐煮に若竹煮、たけのこごはん、わらびとたけのこの煮物…と旬を堪能しました。




旬の食材と旬の食材は
相性がいいのが特徴です。


今日は、私の一番好きなたけのこ料理【たけのこの土佐煮】のレシピをお伝えします。
たけのこが旬のこの時期に、ぜひぜひ作ってみてくださいね!(公開が遅れ、やや旬が終わりつつありますが笑)

後半ではたけのこのゆで方にまつわる”Why?”について
管理栄養士が解説します。
長くなるので、興味がある方のみお読みいただければと思います。笑
【母の味・たけのこの土佐煮】
〈材料〉
・たけのこ(下処理済み) 1本(250g)
A 水 1と1/2カップ(300g)
A 白だし 小さじ1/2(3g)~
・ きび砂糖 小さじ2(6g)
B しょうゆ 小さじ2と1/2(15g)~
B みりん 小さじ1(6g)
・かつお節 1パック(3g)
・木の芽 適宜
〈作り方〉
- たけのこは食べやすい大きさに切る(穂先はくし切り、根本付近は半月〜いちょう切り)。
- 鍋に1とAを入れ中火にかけ、煮立ったら砂糖を加え5分ほど煮る。
- Bを加え弱めの中火で15分ほど煮て、煮汁が少なくなってきたらかつお節を入れひと混ぜして火を止める。
- 器に盛り、あれば木の芽を叩いて散らす。
POINT
- 我が家の春の定番の煮物
- 採りたてのたけのこをすぐに下ゆでして新鮮なうちに使う
- さやえんどうと合わせても春らしくて◎
- 2日目に食べると味がなじんでおいしい
- しょうゆと白だしの量はお好みでOK
- だし→砂糖→みりん+りょうゆ、の順で煮ることでしょうゆ控えめでも深みのある味に
管理栄養士のたけのこ解説
なぜ下ゆでするときに米ぬかが必要か
たけのこに含まれるえぐみ成分は
ホモゲンチジン酸とシュウ酸という物質です。
えぐみが抜けていないたけのこを食べると
口の中いっぱいにイガイガピリピリした刺激が走ります。
これらの正体がホモゲンチジン酸とシュウ酸なのです。
この刺激は決しておいしさのエッセンスではないので
下処理で除く必要があります。
皮ごとしっかり下ゆでしてあく抜きをしましょう。
シュウ酸は食べ過ぎると体内でカルシウムと結合して結石となり、痛い痛い尿管結石を引き起こす恐れがあります。
痛みを伴う病気にはいろいろありますが
胆石、すい炎、結石(尿管結石)の痛みは、「3大激痛」と言われています。
なかでも結石は昔から
「七転八倒の苦しみ」とか「想像できない痛み」と表現されるほどです。
出産より痛いってどういうことでしょうね…。
罹りたくないですよね。。
下処理が手間でもしっかりあく抜きをするか
もしくは八百屋さんやスーパーであく抜き済みのものを購入しましょう…!
では、なぜ水だけで下ゆでするのではなく、米ぬかや米のとぎ汁、米粒などを入れるのでしょうか?
それは、米ぬかや米に含まれるでんぷん質があくを吸着したり、たけのこの表面を覆って空気や水中に融解している酸素との接触を防ぎ
たけのこ中の成分の酸化を防いだりするためなのです。
たけのこのえぐみ成分であるホモゲンチジン酸は
たけのこに含まれるアミノ酸、チロシンの二次酸化産物です。
そのためたけのこと空気の接触を避けることで
そもそものえぐみ量を減らすことが可能なのです。
採ったばかりのたけのこが刺身で食べられるのは
土の中にあったたけのこが、空気に触れる時間がないからですね。
ちなみにゆでる際に唐辛子をプラスすることもありますが
これは唐辛子のもつ揮発性香味成分でえぐ味を舌に感じさせないためです。
あくを取り除いているわけではありません。
ちなみにあくというのは
無機塩、有機塩、アルカロイド、タンニンなどの総称で、一般的にえぐ味や苦味、渋味を呈します。
除去方法はさまざまですが
水に浸ける、下ゆでをする、塩もみをする、といった方法をとることが多いですね。
下ゆで時には米ぬか、灰、重曹、塩などさまざまなものが使われます。
なぜ下ゆでするときに皮をつけたままにするのか
前述のとおり、たけのこのあく成分であるホモゲンチジン酸は
もともとはたけのこに含まれるアミノ酸・チロシンでした。
たけのこを掘り、土の中にあったたけのこが空気に晒されることで
チロシンが酸化され4-ヒドロキシフェニルピルビン酸になり、さらに酸化されホモゲンチジン酸となります。
なので、なるべく酸素に触れないようにする必要があります。
収穫してからゆでるまで皮に覆われたままにしておき
ゆでるときも水中の酸素と直に触れないよう
そのままゆでるのです。
もう1点大事なポイントがあります。
たけのこの皮には亜硫酸塩が含まれています。
亜硫酸塩は、ワインやドライフルーツの漂白や酸化防止に食品添加物として使用されてる物質です。
それが、たけのこの皮に入っているということは
皮ごとゆでることでたけのこが白くきれいにゆであがり、酸化防止効果が期待できる、と考えられますね。
亜硫酸塩には繊維をやわらかくする作用もあると言われているので
皮つきのままゆでると、白く、かつやわらかく仕上がる、ということなんですね。

おまけ:たけのこの下処理(水煮の作り方)
〈材料〉
・掘りたてのたけのこ 3~5本
・米ぬか 1カップ~
・唐辛子 1本
〈手順〉
- たけのこは外側の硬い皮を2、3枚はがし、流水でよく洗い土を落とす。
- 穂先の部分を斜めに切り落とし、縦に垂直に切り込みを入れる(たけのこを切らないように注意)。
- 家にある一番大きな鍋にたっぷりの水とたけのこ、ぬか、唐辛子を入れ中火にかける。
- 沸いてきたら火を弱め、平皿などで重石をし、たけのこが沈んだ状態で45~60分ほどゆでる。
- 根元の部分に竹串が刺さるくらいやわらかくなったら火を止め、そのまま冷ます(8時間以上置くとしっかりえぐみが抜ける)。
- 流水で洗いぬかを落とし、皮をむく。
- 根元、中央、穂先に切り分け、保存容器に水と一緒に入れる。冷蔵庫で保存する。
POINT
- とにかく掘ったらすぐにゆでるのがおいしくなるコツ
- 買ったものの場合、収穫から時間が経っていることが多いのでとにかく急ぐ
- 米ぬかがない場合は米のとぎ汁でもOK
- 唐辛子の代わりに梅干しでもOK
- 大きく育ったものや採ってから時間が経ったものだとゆで時間が長くなるので、ゆで時間はたけのこの状態を見て判断する
- 小さなたけのこの場合はそのまま、もしくは縦半分に切った状態で保存する
- 保存中はまいにち水を変える(鮮度にもよるが4~5日もつ)


…いかがだったでしょうか?
調理は科学。
栄養学(調理学)をバックグラウンドにお料理をすると
いつものお料理がより楽しく、おいしくなります。
このブログを通して
栄養学のたのしさをみなさんにお伝えできたら幸いです。