2022.12.07

日本でたくましく暮らす難民のこどもたち

日本でたくましく暮らす難民のこどもたち

どこか遠い国の出来事だと思ってしまいがちな難民問題。じつは、日本に安全を求めて逃れてくる人は少なくありません

最近では、ウクライナからの難民がニュースになっているので見聞きしている人も多いと思いますが、ほかの国や地域でも世界じゅうで多くの人々が故郷を離れなければならず難民となっています。

難民てどんな人たちのこと?

「自分の国にいると迫害を受ける・迫害を受けるおそれがあり、他の国に逃れた人」。国連ではこれを難民の定義としています。人種や宗教、国籍による差別など、迫害の理由はさまざま。内戦などの武力紛争によって他の国に逃れる場合もあります。また、外国でなく国内の他の場所へ避難した人は国内避難民と呼ばれ、難民と同じような苦境にあります。

全人類の1%以上が支援を必要としている

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の発表によると、難民や国内避難民など、世界で避難を余儀なくされている人は1億人以上。世界の人口の1%以上が避難を余儀なくされていることになります。ウクライナをはじめ、シリア、アフガニスタン、ミャンマーなど、紛争地域を抱える地域での避難が多数を占めており、全体の数は過去10年で約2倍に増加しているんです。

日本にも難民がいることを知っていますか?

コロナ禍で日本に避難してくる方の数は大きく減少しました。2021年は約2000人が助けを求めて日本にやって来ています。家族や知人を頼って来た人、たまたまビザを取れた人など、状況はさまざま。日本の難民認定率は約0.5%。この数字は先進国のなかで驚くほど低く、国際社会から改善を求められています。たとえ難民認定されたとしても、外国人が少ない日本では、言葉や文化など乗り越えなければならない壁が多く、必ずしも暮らしやすい国とはいえません。言葉や肌の色などさまざまな違いを超えて、いろいろな人が共生できる社会づくりが求められています。

 そのなかの1人、こどものときに日本にやって来た、シリア人のラーマさんを取材しました。明るく前向きに生きる彼女たちは「生きるチカラ」そのもの。そのパワーの源のひとつに「故郷の味」がありました。

シリアと日本、両方の食文化を大切にしたい



2011年に始まったシリア内戦によって国を追われ、家族とともに2013年に日本へやってきたラーマさん。当初、文化の違いや日本語の壁に苦しんだそう。今は日本語もすっかり上達し、多くの人とコミュニケーションを取ることができています。

「たこ焼きやおすしが好き」というラーマさんですが、今でも毎日シリアの料理を食べています。シリア人の多くはイスラム教徒。たとえば豚肉など、食べることを禁止されているものもあり、その規定を満たす「ハラルフード」を取り扱う店をよく利用しているのだそう。


左は、手作りチーズやスパイスなどを詰めたパン「ファターエル」。シリアではお店で買って朝ごはんや軽食として食べることが多いのだとか。
右は、なすの中身をくり抜き、ご飯やひき肉などをつめた「マハーシ」。ズッキーニやキャベツ、ピーマンなどいろいろな野菜で作られるそう。
どちらもラーマさんのお母さまの手作りです。


こちらは、おもてなしや特別なときに食べる伝統料理「ケッベ」。ブルグル(ひき割り小麦)の生地に炒めたひき肉や玉ねぎなどを詰めて揚げたもので、こちらはくるみも入っているそう。
日本の家庭料理とはずいぶん違っていますが、どれも手がかかっていておいしそうです。

大学生になったラーマさん、大学やアルバイト先にはお弁当を持って行っています。

左のお弁当はラーマさん作。雑穀米に、牛肉と玉ねぎの炒め物、ゆで卵にゆで野菜、サラダなど。健康にも気をつかっているというラーマさんは、バランスのいいヘルシーなお弁当をこころがけています。
右のお弁当のご飯は、前日の夕飯を活用した「マクルーベ(ひっくり返された料理)」なすのゆで汁と肉汁で米を炊いているシリアの伝統料理で、日本では珍しい料理にアルバイト先で驚かれ盛り上がったそう。

「日本語を教えてくれたボランティアのかたなど、たくさんの人に支えられて今があります。日本料理もおいしいですが、機会があったらシリア料理も試してみてほしいです」
生まれ育ったシリアと、第二の人生を生きる日本。どちらもラーマさんにとっては大切な故郷なのですね。
 

<関連記事>
ウクライナ料理を習う親子イベント 本場のピロシキやボルシチの味に感激!
食も人も「いろいろ」なのがイイ! スリランカに住む日本人ファミリーを取材しました!
キーワードは〈自立心〉 メルボルン流の子育てとは??

監修/国連難民高等弁務官事務所(UNHCR) 取材協力/ラーマ・ジャマール・アルディン イラスト/ MASAMI 文/編集部・和田有可

SHARE

RELATEDこの記事に関する記事

ARCHIVESこのカテゴリの他の記事

TOPICSあなたにオススメの記事

PICK UPおすすめ