お客さんの悩みや気持ちに寄り添う本を、ちょっと世話焼きな書店員たちが心をこめて選書いたします。どうか素敵な本との出会いがありますように。
みんなどんな毎日を生きてる?人の日常が覗き見できる本6選!美村里江&山口博之

今月のお客さまのご依頼は……
みんなどんな毎日を生きているんだろう? 人のリアルな日常や人生が〈のぞき見〉できる本、教えてください。
今回の選書担当

俳優・エッセイスト 美村里江さん
俳優としてドラマ、映画、舞台等で幅広く活躍。無類の読書家でもあり、新聞や雑誌でのエッセイ・書評の寄稿や連載も多数。

ブックディレクター・good and son代表 山口博之さん
旅の本屋「BOOK246」、選書集団「BACH」を経て独立。オフィスや病院等、書店にとどまらないさまざまな場所のブックディレクションを手がける。
紹介する本 一覧
俳優・エッセイスト 美村里江さん
ブックディレクター・good and son代表 山口博之さん
俳優・エッセイスト 美村里江さん
おすすめ3選
世界を見て、感じる著者の感性にしびれる

富士日記( 上・中・下) 新版/
著:武田百合子 中公文庫 1056~1100円
現代はInstagram やX が日記的役割を担っていることもありますが、本書を読むと、やはり日記はごくごく個人的かつ予想外なことも含むもので……。つまり人生を濃縮も希釈もせず、そのままに書かれていることこそが醍醐味だと痛感します。著者が富士山麓の別荘へ通うたびに記してきたこの日記は、作家である夫の武田泰たい淳じゆん氏との会話以上に、持参する食料についての思索や、四季折々の自然描写等が楽しく、すいすい読めます。私はとくに、繰り返し出てくる車や家のメンテナンス関係の部分が好きです。地元の業者さんが何人も出てくるのですが、そのやりとりの中で、著者の〈人を見る目〉〈感じ取る心〉の鋭敏さが炸裂。簡潔で的を射た表現にしびれますよ。
夫·武田泰淳と、富士山麓で13 年間にわたり過ごした日々をつづった日記文学。上巻は昭和39 年7 月~41 年9 月分の日記を収録。巻末には夫によるエッセイも。
まるで料理するように心に向き合う

日々ごはん 全12 巻/
著:高山なおみ アノニマ·スタジオ 各1430円
上記『富士日記』をリスペクトした本はいくつもありますが、こちらは別の領域まで発展して根を張り、独自ジャンルとなった人気作。ごく個人的で率直であることは重なりつつ、普通の人が「なんだか疲れた」で終わってしまうところを、自分の心を振り返ってもんでみたり、干してみたり、何日かねかせてみたり……。まるで著者が本職の料理研究をするように、そのときの心のありようをしげしげと観察していく。自分を知っていく。身近な食材、日常の献立からの「発見」の数々も、参考になります(ちなみに以前、出演ドラマの料理監修でもお世話になりました)。なんとなく起きたくないような日に、ふとんに寝ころがったまま、もそもそ読むのがおすすめです。
料理家·高山なおみの日記エッセイ。続編『帰ってきた日々ごはん』(全15 巻)もあり、20 年以上続く人気シリーズ。最新刊は、シリーズ最終巻となる『光る海を見ていたら ―日々ごはん2022.1 →12―』。
56年つづった家計簿に人生を見る

56 冊の家計簿じまい 娘が読みとく母の生き方 /
著:鈴木敦子 一藝社 2310円
毎年確定申告の準備中にレシートや領収書を見て「あ、あの日だ」と出来事がよみがえることがあります。そこにひと言メモが添えられたら、それはもう人生の一部です。本書はそんな家計簿を56年記しつづけた母を、「平凡だが偉大」だったと表現する娘が考察。一家族の半世紀以上が流れ込んできます。冠婚葬祭などのイベントをはじめ、ニュースを見てのひと言、豊作年の梅仕事の数々、花を植える時期を娘に連絡……。家計簿から浮かび上がる人物像。まめさは娘に遺伝したようで、情報量の多さから楽しい読書体験になるはずです。今回日記系3 冊を紹介しましたが、このかいわいは幅広いジャンルに枝を広げ、良書も多いので、今後もぜひアンテナを立ててみてください。
著者が実家を整理していた際に手にした、母の家計簿。56 冊に及ぶその家計簿兼、家族の歴史が詰まった「日記」を、母の没後に1 冊ずつひもといた記録。
ブックディレクター・good and son代表
山口博之さん
おすすめ3選
自炊を通して世界の人々の暮らしを知る

世界自炊紀行/
著:山口祐加 晶文社 2750円
自炊ほど日常が出るものはありません。作るものだけでなく、どこで食材を仕入れ、どんなキッチンで作り、だれと食べるのか。そのレシピはどこから教わったものであり、どの程度時間をかけるのか。外食と自炊の選択を分けるのは何か。自炊を研究し、自炊という行為と文化のおもしろさを伝える自炊料理家の山口さんは、全世界12カ国、38 家庭を訪れ、〈いつものごはん〉を取材します。日本の家庭はバリエーションが豊富なことを豊かな自炊と考えることが多いですが、世界の自炊は何種類かのメニューを繰り返すことも珍しくありません。だれと食べるか、どんな時間を過ごすか、ストレスのない食生活とは何か。自炊の裏には人の生き方があります。
献立作りやマンネリ化など、日々の料理につきまとう悩み。でもこれって日本だけ? 自炊料理家·山口祐加が世界の家庭の食卓を取材し、「自炊する意味」を探る。
フィクションだけどリアルな40代女性たちの日々

あした死ぬには、 全4 巻/
著:雁 須磨子 太田出版 各1320円
42 歳の3 人の女性は何に悩み、何に苦しみ、何に期待し、何を信じて暮らすのか。映画宣伝会社に勤務する独身の本奈 多子(ほんなさわこ) 。夫の単身赴任を機に、パートを始めた小宮。過去のトラウマから実家にひきこもる、無職の鳴神(なるかみ)。1巻では最初の2人が登場します。更年期障害、不倫を仕かけてくる同僚男性、「おばさん」という扱いと自覚。年齢だけ見れば安定した立派な大人だとしても、一人一人の頭も心も体も、ある側面では揺れ動き、ある側面では凝り固まります。80 年を寿命として約半分。これまでを振り返り、これからを思うとき、明日死ぬにはまだ早いと思えるか。明日も生きていくあなたは、何を喜びとするのか。本書を通じて想像してみてください。
更年期障害や取れない疲労、お金や人生への不安。40代で直面する壁に戸惑いながら、切実に生きる女性たちを描く。第23 回文化庁メディア芸術祭·マンガ部門優秀賞受賞。
一人で暮らすその選択の背景を知る

だから、ひとり暮らし/
著:蜂谷智子 東洋経済新報社 1870円
長い不況下で賃金は上がらないのに物価は上がりつづけ、結婚して子どもを持つという生き方が、普通でも当然でもなくなっています。だから一人で暮らすということは、もはやよくあることなのでしょう。しかしよくあることだったとしても、そこには一人一人違う状況、決断、ライフスタイルがあります。恋愛や趣味への向き合い方の結果として行き着いた一人の時間、一人のペースを守る人もいれば、パートナーと死別した人、働き方が次のフェーズに至った人もいます。ミニマルでも雑多でも、だれにも気がねしない自分だけの居心地を追求すること。選んだ結果でも、選ばざるをえなかった結果でも、自分の生き方を肯定するための、一人暮らしの「だから」。
年齢も性別も職業も多様な10 人の「ひとり暮らし」を取材したルポルタージュ·エッセイ。それぞれの部屋から見える暮らしや人生から、私たちのこれからの生き方を問う。
⃝商品の価格は、特に記載のない限り消費税込みの価格です。改定される場合もありますので、ご了承ください。
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イラスト/河原奈苗















